| 翌日。 はを見送って出勤する。 休憩時間に千堂にメールを打っておいた。 帰りのロッカーでメールをチェックすると千堂からOKの返事がある。 「さて、行きますか」 何となく気合を入れて待ち合わせ場所へ向かった。 「すみません、ちょっと遅れました」 「ええって。会社員は忙しいんやろ?ほな、行こうか」 そう言って行き付けの居酒屋へ足を運ぶ。 「そういえば、軍神は帰ったんか?」 「はい、今朝の新幹線で」 「ホンマに旦那はアレで良かったんか?」 「本人はそれでいいって言ってます。というか、もう旦那の方が離さないでしょうね...彼女と一緒のときは彼、かなり壊れてますし。鳥肌立ちますよ...」 そんな他愛のない話をしていた。 食事も一通り済んで、 「千堂さん、あの、話があります。聞いてもらえますか?」 は話を切り出した。 「ええよ」 の雰囲気が真剣であったので千堂も構えて話を聞くことにした。 「あのですね。考えたんです。私は何を考えてるのか、どうしたいのか。まず、分かったこと。私は千堂さんが好きです」 「ホンマか?!それなら」 「ストップ!!最後まで聞く!!」 嬉しくて盛り上がっていたのにに止められてシュンとなる千堂。 「で、問題があります。私はもう一人好きな人がいます。こっちに居たときに好きになった子です」 「だ、誰や?」 「それがですね、残念ながら。知らないんです。私が覚えているのは彼が『タケちゃん』って呼ばれていたことと、ガキ大将で私よりも年上だったってコトです。 って言っても小学生の頃で、しかも、初恋で、今も言ったように結局その彼が誰なのかが分からないままだったんですけどね。今も何処に居るのか分かりません」 の話を聞いている千堂は頭を抱えていた。 しかし、それに構わずは続ける。 「私は、彼のことも未だに好きです。たぶん...つまり、私は千堂さん以外に好きな人が居るってコトです。昔のことだ、と言われたらそれだけだと思います。実際昔ですし。 でも、私の中でケジメがついてないって言うか、『思い出』になりきっていないんですよね。だから、引きずっているって言っても過言じゃないと思います。 正直、こんな気持ちで付き合うとかそういうのって不純な気がするんです」 「。あの、な?」 「まだ話の途中です。もう少し聞いてください」 「はい...」 「でも、昨日ちゃんに言われました。そういう気持ちを抱いていて誰かを好きになるってことが良いか悪いかは相手に決めてもらっても良いと思うって。というか、私が決めることじゃないのでは?と言われました。どの道、私はそのタケちゃんに会わないとけりがつけれないようですし。 それで、その。千堂さん。どうですか?」 緊張しすぎて喉が渇いた。 は目の前においていたコップの中身をグビッと飲み干して喉を潤し、千堂の答えを待つ。 自分は出来るだけのことはした、と思う。...たぶん。 「あの、な?ワイ、そのタケちゃん知っとる」 「本当ですか?!」 「小学校、何処やったん?」 が素直に答えると千堂が 「やっぱりそうか!!」 と言いながら笑い始めた。 「な、何ですか?!タケちゃんって何処に居るんですか?元気なんですか?」 「元気やで〜。ピンピンしとるわ」 千堂の言葉にが驚く。本当に知り合いらしい。世の中狭いものだ。 「ついでに、ボクサーでな?日本チャンピオンにもなったことあるで?しかも、イイ女に惚れてさらに、惚れられとるんや。幸せもんやで!」 千堂の話を聞きながらは眉間に皺を寄せる。 それは千堂武士、貴方のことでは?! と思いながら他の答えを探す。 「まだ分からんか?ワイが、その『タケちゃん』や。やっと思い出せた。とはずっと前、ジャリのときに何度も会うとる」 「はぁ?!」 「どうりで、どっかで会った事があると思うたんや。そうかー。ホンマにアナウンサーになったんやな。よう頑張ったな」 千堂の言葉には頭を抱える。 (な、何やこの展開は?!) 反応に非常に困った。 何せ、同じ人に二度告白したようなものではないか。しかも、それを認識せずに。 正直、穴があったら入りたい。 そして、自分の中でも納得した。 千堂を見たときから感じていた既視感は勘違いではなかった。 「あ、あの...」 どうコメントして良いかわからず千堂に声を掛けると、 「ほな、どないする?ワイと付き合いたい?それとも、『タケちゃん』と付き合いたい??」 イタズラっぽく笑って千堂が問いかける。 「知りません!!」 はバッグを引っつかんで店を出て猛ダッシュをした。 恥ずかしいことこの上ない。 しかし、追いかけてきた千堂にあっさり追いつかれる。 「、体力無いな...大丈夫か?ちょお、休んどけ」 さらに、体力の無さを心配される。 「千堂さん。あの...」 「ワイな、あの時のも好きやった。一生懸命頑張って。自分の夢の為に戦って。カッコええって思った。今のも好きや。夢を叶えて、凄く楽しそうに仕事しとる。一緒におっても楽しいし、安心する。は、どっちのワイが好きや?今のワイか?それとも、昔のガキ大将だった頃のワイか?」 「両方、です」 の答えに一瞬千堂は面くらい、そしてまた笑った。 「は中々贅沢者やな!両方か。おおきに。ワイも、そうなやな。両方や。でも、もうひとつ」 千堂の言葉にが首を傾げる。 千堂はを抱き締め、 「これから先も好きやで。ずっとが好きや」 と囁いた。 も千堂の体に腕を回し、 「私もです、千堂さん」 そう応えた。 その後、また東京に帰ったときとにこのコトを報告すると 「あらイヤだ。もしかして本気で気付いてなかったの?」 「何が?」 の言葉には説明を求める。 「が、私たちの中で一番純情だったってコト。ね、ちゃん」 同意を求められたは笑い、 「良かったね、。一石二鳥だったじゃない。これはもう、運命ね!」 とに声を掛けた。 そんな親友たちの祝福には珍しく照れながら 「ありがとう」 と頭を下げた。 |
桜風
07.7.28
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