お花屋さん ―後編―
| 翌日、を店まで送った後、木村はジムに向かう。 いつもよりメニューをきつめにして時間を短くする。 「木村さん、さんどうですか?」 の様子が気になる宮田が声をかけた。木村は練習の手を休めずに、 「ああ、よくやってくれているよ。仕事覚えるのが早いし、礼儀正しいから店に出てもらってても安心して見ていられるな。 まあ、初めは緊張してたみたいだけどな。」 「なに?!は木村のところでもバイトしているのか?」 (やばっ。) (イヤな奴に話を聞かれたな。) 「年末は忙しいから、その間だけ無理言ったんですよ。」 「よし、帰りにの激励に寄るぞ。青木、貴様も来い!」 たった今ロードから帰ってきた青木は、突然声を掛けられてもよく分からない。 しかし嫌そうな顔をしている木村を見て、面白そうなことだと考えて了解した。 木村の練習が終わり、宮田も巻き込まれて一行は木村園芸に向かう。 店先に出ていた木村の母親が「お帰り」と声を掛けている。 店の中にいるには姿は見えないが、時間から言って木村が帰ってきたのだろうと予想をした。 だがしかし、 (おいおいー。) は頭を抱えた。 現れたのは鷹村だった。 それに続いて青木、木村が姿を現し、何故か宮田まで居る。 木村はに向かって顔の前で手を合わせ、片目を瞑っている。宮田も片手を挙げて謝っている。 あの二人の会話でも聞かれたかと思っていると、鷹村と青木が何故か偉そうに店の中に入ってきた。 は二人に営業スマイルを向け、 「いらっしゃいませ、何をお探しですか?」 と声を掛けてその笑顔を崩すことなく、尚も 「せっかくここまで、態々、来たんですから何か買って、帰ってください。」 と続けた。 その間に木村は荷物を店の奥に置いてエプロンをつけて店に出てきた。 忙しい時間帯は過ぎたとはいえ、客足は絶えない。 結局、鷹村、青木、そして帰るタイミングを逃してしまった宮田も木村家で夕飯を食べている。 、木村、宮田の3名は、何でこんな事になったかを各々真剣に悩んでいた。 「宮田君、家に連絡入れなくて大丈夫なの?」 「さっき電話借りたから。」 「なあ、何でこんな事になったんだ?」 「「さあ、分かりません。」」 3人が額を寄せて話している向こうでは、素面で酔っているプロボクサー2人の姿があった。 さすがにを送らなければまずい時間になったので木村は車を出し、宮田もついでに送ってもらう。 「木村さん、帰ったら有ること無いこと吹き込まれた後でしょうね。」 「あー、帰りたくねぇ。」 「そういえば、今日は青木さん仕事無かったんですか?」 「あそこのラーメン屋、今日が定休日なんだよ。」 「不運が重なっちゃたんですね。」 「...。」 木村に返事をする気力は残っていなかった。 3日目は何事も無く平和に終わり、とうとう最終日となった。 最終日の大晦日は早めに店を閉める。 いつもより早い夕飯を食べた後、木村は店のほうへ行った。 木村の両親がにバイト代を渡しながら、 「さん、本当に助かりました。ありがとうございます。こんな短期間なのに、もう近所の噂になってるんですよ、さん。」 と言うので、は、はにかんだ笑顔で、 「え、そうなんですか?なんだか照れますね。えっと、こちらこそお世話になりました。 接客って初めてだったんですけど、お役に立てたみたいで安心しました。」 と答えた。 「ちゃん。」 後ろで木村の声がしたので振り返ると、目の前に花があった。 びっくりして体を引くと木村が花束をに差し出している。 「ちゃん、ありがとう。本当に助かったよ。これ、俺からの感謝の気持ち、受け取って。」 は花束を受け取り、心底嬉しそうな声で「ありがとうございます」と柔らかく微笑んだ。 木村にとってその表情は全くの予想外のもので、思わず口元を押さえる。 心拍数が上がり、顔が赤くなるのを必死に隠す。 (―――なんだよ、コレ。ちゃんは妹じゃなくて...?あー、クソッ!そういうコトかよ、俺。) 自覚すれば今までの自分の感情に納得がいく。 木村は、を送った後、 「ちゃん相手だと持久戦かな。...たぶん、宮田もだろうな。」 と車の中で独りごちた。 |
まずは、キム兄さん。
やっと自覚しました。
桜風
04.9.25
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