裏切り者?! ―前編―




一歩がジムに通い始めて数日が過ぎた。

一歩は約3ヵ月後の宮田との再戦に向けて只管練習に励んでいた。

基礎のパンチを覚えた一歩はシャドーボクシングをするように指示された。

しかし、彼は全くの初心者。

本気で教えてもらえると思っていたのか、宮田に教えてもらおうとするが、ひと睨みされて聞けなくなった。

「こんにちは。」

部活のため、は6時前にジムへやって来た。

それを見つけて一歩は嬉しそうに近づく。

さん!」

(幕之内君ってワンコみたい。)

「遅かったんですね。あ、部活か。大変だなぁ。

あのですね、僕シャドーボクシングをするように言われたんですけど、よく分からないんです。

教えてもらえませんか?」

「はい?」

(ちょっと待って。分からないのは君の思考だよ、幕之内君。私は、アルバイト生であって、ここにはボクシングをしに来ている訳じゃないんだぞ!?

何でそんな人に聞くかなぁ。)

一歩の考えが理解できないでいると後方のドアが開く。

「お、ちゃん、部活終わったの?...どうしたの、固まって。」

「おい、一歩。ちゃんどうしたんだ?」

ロードから帰ってきた木村と青木が、困り果てて動けなくなっているに近づいた。

「...幕之内君。そういうことは先輩ボクサーに聞きなさい。って言うか、私に聞かないで。

木村さん、青木さん、幕之内君シャドーボクシング教えてもらいたいそうです。

という訳で宜しくお願いします。」

そう言っては奥へ向かって行く。

ドアの前にはロード用のシューズを履いた宮田が立っていた。

「こんにちは、宮田君。これからロード?」

「ああ。...あいつ、何考えてるんだ?」

宮田は視線を一歩に向けて口を開いた。も振り返り、一歩たちを見る。

木村と青木がそれぞれ自分のシャドーを見せていた。

お互い茶々を入れたらしく、胸倉を掴み合っている。そんな2人を一歩は慌てて止める。

「まあ、彼なりに一生懸命頑張っているんだろうけどね。でも、さすがにちょっとびっくりした。

うわ、急がないと時間になっちゃう。じゃあね、宮田君。私着替えないと。行ってらっしゃい。」

「ああ」と短く返事をした宮田は、にドアを開けてやり、自分はジムの出口に向かった。


2・3日経ったある日、は学校で幕之内に声を掛けられた。

どうしても宮田の動きが掴めないと言うのだ。

(まぁだ私に聞くか、この人は。)

「あー、本当に私はアルバイトに行っているのであって、ボクシング知識無いに等しいんだけど。

...そうだな、宮田君って、手も足も速いから全部を観察しようとしてもよく分からないんじゃないかな。

宮田君はアウトボクサーだから足を使うタイプなんだって。だから、まず足の動きを観察したら?

それで大まかな動きを掴んだら細かい部分を見ていくってのはどう?

一度に欲張らずに段階を経てやったほうが逆に効率いいんじゃないの?」


その日から一歩は宮田の動きを部分部分に分けて観察をするようになり、遂にシャドーボクシングが出来るようになった。

「おう、一歩。なかなかサマになってきたじゃねぇか、シャドー。」

「あ、鷹村さん。そうですか?嬉しいなぁ。さんのお陰なんです。

僕、初めは宮田君が見えなかったけど、さんのアドバイス通りやったらだんだん見えてきたんです。

まだまだですけど。」

「何?!のアドバイス?」

「こんにちは。」

一歩と鷹村が話しているところへがジムへやってきた。

、お前は宮田の『ユバ』だ!」

ビシッと人差し指でを指して、鷹村は偉そうに言う。

「何ですか、『ユバ』って。私は、『ユバ』って聞いてすぐに思ったのって京都の名産品なんですけど違いますよね。」

鷹村が大騒ぎをしているのを見て、木村と青木の両名も集まってきた。

「どうしたんスか、鷹村さん。よう、ちゃん。」

「またロクでも無い事言ってんだろアンタ。」

「こんにちは、木村さん、青木さん。お2人は『ユバ』って何かご存知ですか?」

「『ユバ』ってあの京都の有名な食べ物の?」

「ああ、あの薄っぺらいのな。それが何だって?」

「貴様ら、小物の上に無知だな。『ユバ』っていうのはキリストを裏切った奴のことだ。」

「「「それは『ユダ』だ(です)!」」」

青木と木村、そしては同時にツッコミを入れた。

「何で私が宮田君の裏切り者になるんですか?何かやったっけ?」

「こいつにシャドーのコツを教えたそうじゃないか。立派な裏切りだ。」

3人に同時にツッコミを入れられた鷹村は、少し拗ね気味に答えた。

「へえ、ちゃんシャドー出来るんだ?」

「隠れた才能だな。」

「いえ、全然出来ませんって。シャドーのコツですか?私何か言ったっけ、幕之内君?」

「うん、あまり欲張らずに段階を経てやったほうが効率がいいかもよって。

言われたとおりに観察していたらだいぶ見えてきたんだ、ありがとう、さん。」

一歩のその言葉を聞いてプロ3人組は「ほう」と感心した声を出す。

「あー、言った気もするねえ。シャドー出来るようになったんだ、良かったね。

ところで鷹村さん、もう時間無いから私行きますよ?」

そう言っては奥へ向かって行った。




原作では、一歩が頑張って出す答え、
ヒロインに言わせちゃいました。
...(逃げろぉ!)



桜風
04.10.30


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