裏切り者?! ―後編―
| 次の月曜日、が買出しから帰る途中、ジムに向かっている宮田の姿を見つけた。 はなるべく音を立てずに宮田に近づく。 しかし、宮田は気配に気付いたのか振り返ってきた。 「あーあ、気付かれた。ビックリさせようと思ったのにな。今日は遅いね。バイトが先だったんだ?」 「まあね。さん、気付かれたくなかったらもっと気配殺さないと。それで無くとも、俺はボクシングをやってて気配に敏感なんだから。 ...重そうにしているけど、持とうか?」 はバランスを取るために荷物を持っていない方に体を傾けている。 「ありがとう。でもこれは私の仕事だからいいよ。そういえば、昨日幕之内君と土手でお茶したんだって?」 の歩調にあわせて並んで歩いていた宮田が眉をしかめて、 「何で知ってるんだよ。」 と聞いてきたので、はうんざりした顔をしながら口を開く。 「今日の日本史の授業、自習だったのね。 それで私が一人で出されたプリントやってたら、突然幕之内君が前の空いてる席に来て、昨日のことを語りだしたのよ。 そう、まるで乙女が想い人を語るが如く『宮田君って本当は凄く優しいんですよ』とか、『かっこいいな、僕憧れちゃうな』とか同じ内容の事を ちょっとずつ言葉を変えながら延々40分ずーっと熱く語ってくれたよ。 私が止めなかったらプリントそっちのけで語り続けたかのかも知れないね。 私、同じ年の男の子であんなに乙女回路持ってる人って初めて見たかも。 どうする?いつかファンクラブとか作ったりしたら。」 「やめてくれ、気持ち悪い。」 悪戯っぽい笑顔を浮かべて恐ろしいことを言うに、眉間の皺を一層深く刻んだ宮田が答えた。 「まあ、宮田君は何だかんだ言っても結構面倒見いいもんね。さり気なく優しいし?」 「そうか?」 思い当たる節が無い宮田はの言葉を嬉しく思いつつも、そっけなく答えた。 「―――そう言えば、この前鷹村さんに『お前、に裏切られたぞ。』って楽しそうに言われたんだけど、あれ、何?」 先日の『ユバ事件』のとき、宮田は既に帰った後で詳しくは知らなかった。 翌日になって鷹村に言われたが、あの一言では分からない。 気になったことは確かだが、どうせ鷹村の言うことだ。 大した事ではないだろうと踏んでいたため、態々を探してまで聞こうとは思わなかった。 しかし教えてもらえる物なら知りたいと思い、宮田は聞いてみた。 「あー、あれね。幕之内君がやっぱり学校でしシャドーについて聞いてきたのよ。 だから思ったことを言ったら、何か彼の役に立ったみたいで。 それを聞いた鷹村さんが『お前は宮田のユダだ』って言ってたの。 まだ引っ張ってたんだ、あのネタ。」 「何て言ったんだ?」 「はい?ああ。『大まかな動きを掴んで、細かい部分を見ていけば?』ってな感じだったかな?」 「ふうん。さすが、バイトでとはいえ10ヶ月ジムに通ってただけあるな。それは役に立つアドバイスだったよ、さん。」 「そういうもん?」 その後も2人は話をしながらジムへ向かった。 2人が揃ってジムへ入ると、それに気が付いた鷹村が大袈裟に驚いた振りをして、 「宮田!貴様、何で裏切り者と一緒にジムに来てんだ?!この前教えてやっただろ、はお前の『ウバ』だって。」 と指差しながら言うが、 「いや、鷹村さん。私同じ年の子を育てた覚えないですから。」 とが苦笑をし、 「鷹村さん、『ウバ』じゃなくて『ユダ』でしょ。」 と溜息交じりに宮田が訂正をする。 宮田の言葉に、ぐっと詰まった鷹村はその姿勢のまま固まる。 「話、引っ張るんならちゃんと覚えとけよな。」 と、隣でサンドバッグを叩いていた青木が手を止めてそう言う。 それを受けて鷹村は青木に八つ当たりを始めた。 その姿をと宮田があきれながら見守っていると後方のドアが開き、木村と一歩がロードから帰ってきた。 「お、と。ドアの前に立ってると危ないぞ2人とも。」 「あ、宮田君。今日は遅いんですね、昨日はありがとうございました。話が出来て嬉しかったです。...あれ?さんもいたんですか?」 (へぇー。ほぼ毎日学校で会ってる人間にそういうこと言うんだ、幕之内君って。) (あー、煩い。) (すぐ目の前にいるのに、目に入らなかったのか?) いちいち反応を返すと疲れると判断したと宮田の2人はさっさと奥へ向かっていった。 「どうしよう、宮田君。さっき、幕之内君が宮田君の名前呼んだとき、語尾にハートマークが見えた気がする。 あと、犬の尻尾みたいな物も見えたかも。」 「ホント、もう勘弁してくれ。」 宮田は辟易しながらそう答えた。 |
一歩なら宮田のこと40分語るのなんて軽いと思います。
自習プリントそっちのけにするかどうかは、ともかくとして。
ヒロインは『ウバ』を『乳母』と変換して答えました。
紅茶の葉っぱとどっちにしようか迷ったのですが、ポピュラー(?)な方で。
桜風
04.11.6
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