新たな戦い




宮田と一歩のスパーリングの再戦の日が来た。

アルバイトの日だったのでもジムへ来ていた。八木が観戦を勧めてくれた事もあって、地下のリングに向かう。

対戦する2人はアップの最中だった。練習生も2人の対戦が気になるらしく、大勢が降りてきている。

は木村と青木の両名を見つけたので声を掛ける。

「こんにちは。...鷹村さんは?」

「あー、あの人今日レフェリーするってはりきっててさ。いい試合になりそうだからって自分も着替えに行ったよ。」

「着替えって、あのレフェリーの服にですか?水色のシャツに蝶ネクタイの?

何でそんな物このジムにあるんだろう。しかも鷹村さんに合うサイズが。」

「―――そういや、何であるんだろうな。」

3人がそんな話をしていると、鷹村、八木、藤井達が降りてきた。

「おう、も見学か?」

さん。久し振りだな、まだ続いていたんだな、バイト。」

「こんにちは、藤井さん。それって私がいい加減だと思われてたってコトですか?心外だなあ。」

「いやあ、そういうわけじゃないよ。ここのバイト皆続かなかったから。もう1年だろ?」

「ああ、そう言えばそうですね。早いなー。」

「おし、時間だ。おい、お前ら、始めるぞ。」

いつの間にかリングに上がっていた鷹村が宮田と一歩に声を掛ける。

リング中央でルールの確認をした後、各コーナーに帰り、ゴングが鳴るのを待つ。


ゴングが鳴り、試合が始まった。

一進一退の攻防を繰り返す中、第3ラウンド。

一歩のアッパーに宮田がカウンターを合わせる。

宮田は、キャンバスに沈んだ一歩を見下ろし、

「どうだ!」

とガッツポーズをとる。

(宮田君のガッツポーズなんて初めて見た気がする。)

がぼんやりとそんな事を思っていると、一歩が辛うじて立ち上がる。

宮田は、一気に勝負を決めようと一歩に向かっていくが、ゴングが鳴った。


そして、とうとう最終ラウンド。

ゴングが鳴ってから、宮田が押していた。

一歩がショートアッパーを出すがそれをぎりぎりでよけた宮田の勝ちだと誰もが思った。

しかし、ダウンをしたのは宮田だった。

無情にもカウントは進み、試合終了のゴングが鳴る。勝利したのは、一歩だった。

皆が一歩に声を掛ける。

体が動くようになった宮田は静かにリングを降りた。

それから少しして、は一歩に「おめでとう」と言って仕事に戻った。


が屋上で洗濯物を干し終えて事務室に帰ろうと屋上のドアを開けると、宮田が立っていた。

は驚いた顔をした後、笑顔を浮かべた。

宮田もまさかが出てくるとは思わなかったために驚き、そして悔しそうな顔をした。

「びっくりした。お疲れ様、もう体は大丈夫なんだ?」

「ああ。...さん、俺、このジム辞める事にしたんだ。さんには、色々と世話になったよな。」

「いえいえ、お世話になったのは私の方だよ。色々ありがとう。

...そっか、そうだよね。同じジムの人同士は試合組めないもんね。」

そう言っては目を伏せた。そして再び顔を上げて微笑む。

その笑みはいつもの柔らかいものではなく、

どこか強い意志のようなものが込められている、宮田はそういう印象を受けた。

そして、のその笑みは何度か見たことがあった。

「じゃあ、頑張って。」

は宮田の肩を、ポン、と叩き、再びいつもの柔らかい笑顔を浮かべて階段を下りていった。

宮田はに叩かれた肩を暫く眺め、ふっと笑い、「ああ」と短く返事をする。

あのの笑みは、試合前の皆を激励するときのそれだった。


自分に向けられたのあの笑顔は、これから新しく始まる戦いへの激励だった。



『「どうだ!」ガッツポーズ』は、私がアニメで見たとき悶絶してしまった代物。
どうしても話の中に入れたかったんです。
宮田、鴨川ジムを去る、のお話でした。



桜風
04.12.11


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