お久し振りです




受験生になったは、4月から鴨川ジムのバイトを辞めている。

いや、受験が終わって大学生になったら戻ってくるという約束をしているので、休んでいると言っても良いかも知れない。


ともかく、そんなある日、は鴨川ジムへ向かった。

先日、日本Jミドル級チャンピオンになった鷹村にお祝いを言うためだ。

ジムに着くと入り口で宮田に会った。

「おぉ、久し振り。次は準決勝だね。」

「ああ。さん、どうしてここに?バイトは辞めてるって聞いたけど。」

「鷹村さんにおめでとうを言いに。宮田君は?」

「同じだよ」と言いながら宮田がジムのドアを開ける。


ジム中が少しざわつく。

木村が入り口に目を向けると、と宮田が話をしながら揃って来ている。

(宮田と、ちゃん?!)

「やあ、ちゃん、(ついでに)宮田。どうしたんだよ2人揃って。」

「(俺はついで扱いだな。)近くまで来たんで、鷹村さんにお祝いを言おうと思って来てみたら、そこでばったり会ったんですよ。」

「木村さん、お久し振りです。...鷹村さんは?」

「今ロードに、って、帰って来たみたいだよ。」

窓の向こうにロードから帰ってきた鷹村の姿が見えた。ガラリとドアが開き、鷹村が入って来て、宮田との姿を見つける。

「おう、お前らどうしたんだ、2人揃って。」

「鷹村さん、タイトルおめでとうございます。」

と宮田が言い、が、

「おめでとうございますを言いに来ました。」

と言う。

「そうか。まあ、オレ様にしてみれば、これは通過点の1つよ。お、そうだ。、速水のビデオ見て行け。オレ様は一度シャワーを浴びてくるからよ。」

鷹村は、ガハハと笑ってロッカールームへ向かって行った。

「―――、速水って誰ですか?」

「一歩の準決勝の相手。いけ好かない奴だよ。」

木村が答えてやる。

が見てみるというので、木村、宮田、さらに青木が部屋を移動する。


速水の登場シーンにビデオを合わせ、再生を押す。

それを見た途端、は驚き、何かに感動したかのように口元を手で覆う。少なくとも、3人にはそう見えた。

さん、こんなのがタイプなのか?)

ちゃん!?ちょっと...)

(まあ、ちゃんも他の女共と一緒ってことか。)

宮田、木村、青木がそんなことを思っていると、は突然吹き出し、笑い出した。

「何ですか、この人。私ダメなんですよ。キザ臭いって言うか、自分の外見とかに酔っている人って、失礼だけどどうしても笑っちゃうんですよ。」

そう言いながら笑い続ける。

宮田と木村は胸を撫で下ろし、青木はの反応に満足する。


ビデオも見終わり、ジムで鷹村から先日の青木の試合の話を聞いていると、「ただいまです」と一歩が帰ってきた。

「え?何で、どうして?宮田君!」

驚きながら宮田に近づくが、落ちていた雑巾に足をとられ、こけて宮田の腰に抱きつく形となった。

「ロードで近くまで来たから鷹村さんにお祝いを言いに来たんだよ。」 

呆れながらも宮田が答える。

「しかし、ホモ臭いと思っていたが、いきなり抱きつくとはな!」

鷹村が一歩をからかう。

「そんな。イヤだな鷹村さんそんな冗談を。ねえ、宮田君。」

宮田は見事なバックステップで一歩と距離を取る。

「いや〜ん。幕之内君ってば、大胆ー!さんドッキドキ。」

の頬に手を当てながらからかうが、一歩はを見つけて驚く。

「あれ?さん、いつからそこに居たんですか?どうしたんですか、こんなところで。」

皆は、ピシッと言う音が聞こえた気がした。

「ふっふっふ」と低い声でが笑っている。

ちゃっかりの隣をキープしていた木村が離れ、鷹村も距離を置く。

「あーら、幕之内君。約2時間振りー?相変わらず宮田君が居ると視野狭窄に陥るんだねぇ。」

は声のトーンを上げて笑顔で話す。しかし、目が少しも笑っていない。

一拍置いて、底冷えする声を出す。

「―――学校でも幕之内一歩ホモ説流してやる。女の子の噂の速さを思い知るがいい。尾鰭背鰭も付く事をお忘れなく。」

の声を聞いた人たちは鳥肌が立った。一歩も冷や汗が流れる。

「...う、うおー、皆逃げろ。こいつはホモだぁ、はははー。」

その空気を払拭するがごとく、鷹村が叫んだ。それに反応した練習生は皆散る。一歩は「待ってください」と言いながら皆を追いかけている。

はすっきりしたらしく、清清しい笑顔を浮かべた。その隣で宮田は、溜息をついた。

「まあ、そんながっかりするな。あいつも一生懸命やってんだ。何だかんだ言ってあと1つだからな。」

鷹村が宮田に声を掛けながら練習に戻っていく。


「あ、そうだ。私、準決勝から見に行けるんだよ。」

宮田を見上げてが言う。

「そうなんだ。でも、それこそ受験が大変な時期じゃないか?」

「まあね。でも本当は緒戦から見に行きたかったんだよ?でも親が『受験のほうが大事だろ』って。

『行きたい』『ダメだ』の攻防を繰り返していたら親がやっと根負けしてね。6月から顔合わせるたびに言ってたからもっと早く良いって言うと思ったんだけどな。

というわけで、準決勝2試合と、決勝を見に行ける事になったんだ。」

「良かったね、ちゃん。」

練習生と共に一歩をからかっていた木村がいつの間にか戻ってきていて、の頭に手を乗せる。

ふと、はジムの時計が目に入る。慌てて自分の時計も確認する。

「うわぁ、ごめんなさい。私、もう塾に行かないと遅れる。」

ちゃん塾なんて言ってるの?一歩から聞いたけど、学校では成績上位なんだろ?」

「学校のテストと大学受験は違いますから。一応、人並みに灰色受験生していますよ。それじゃあ、失礼します。宮田君も頑張ってね。」

は慌しく出て行った。


余談だが、一歩の準決勝では試合開始のゴングが鳴るまで笑い続けていた。



これはアニメ版ですね。
何が書きたかったって、ヒロインの『いやーん。〜』と言うセリフです。
アニメ見ながら何となくこのようにからかったら楽しいかな、と。
そう、それだけ。



桜風
04.12.25


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