写真




宮田の復帰戦の記事を目にした数日後、の元に一通のはがきが届いた。

『元気?』と一言だけ書かれたそれは、タイにいる宮田からだった。


宮田は地元贔屓と思われる判定で、復帰戦がドローと言う形で終わり、やりきれない気持ちで毎日を過ごしていた。

そんなある日、タイの英雄ジミー・シスファからの試合の申し出があった。自分の人気を確立させるための噛ませ犬として選ばれたのだ。

それを察した父と木田はその試合を断ったが宮田が抗議をして、試合が決まる。

ジミーとの試合は決まったが、宮田は『パンチが軽い』とトレーナーである父に指摘されカウンターを越えるカウンターを目指す。

慣れないタイの気候と減量で宮田はフラフラだったが、パヤオとのスパーの中で新しいカウンターが見えてきていた。


試合当日、宮田は圧倒的に不利と思われていた。

しかし、何とか不安を克服して宮田はリングに立つ。

試合は何度目かのジョルトがヒットして第4ラウンド、結果的にTKO勝ちとなった。


試合で負傷した宮田は病院へ移動している最中に父から手紙を渡される。

さんからだ。父さん宛に来てた封筒に入っていたんだ。

随分前に来ていたんだが、試合の日程とかよく分からないからいつ渡すかはトレーナーの父さんに任せるとあったからな。

まあ、少し休養しなくてはならないから丁度いいだろ。...どうした、開けないのか?」

「...後でね。」


宮田は、父から渡された手紙を凝視していた。

自分が日本に手紙を出したのは随分前で何日か返事を待ったが来なかった。

残念だったが仕方がない。彼女には彼女の生活があるし、社交辞令だったのだろうと何とか納得していた。

それなのに、今自分の手の中に、彼女からの手紙がある。

彼女は約束を守ってくれていた。

封筒は、表に『宮田一郎様』と書かれ、裏には『貴方のファンより(笑)』と、いつかの手紙と同じ言葉が書かれていた。


病院で独りになる時間が出来たので、宮田は丁寧にその封を切り、中身を取り出す。



 
  宮田君へ


 お元気ですか。私は元気に鴨川ジムでバイトな日々を送っていたります。

葉書ありがとう。でもさ、もうちょっと何か書こうよ。

せめてあの後に『俺は元気だよ』とかさ。

まあ、宮田君らしいと言えば宮田君らしいんだけどね。


今、宮田君はどこでこの手紙を読んでいるんだろうね。

こっちは宮田君の試合の状況とか分からないから宮田さんに一度預かっても
らいました。

 だから、約束どおり3日以内に出したけど、宮田君の手元に届くのに1ヶ月
以上掛かっているかもしれません。

もしかしたら、帰りの飛行機の中とか?!(さすがにそれは無いか?)

先日、『月刊ボクシングファン』に宮田君の試合の結果が載っていました。

知らない土地でやっていくのは色々と大変だと思います。気候とか、食べ物とか、
言葉とか。

 でもきっと宮田君なら大丈夫だと思っています。宮田君は強いからね。


宮田君が武者修行を終えて帰ってきたときは、きっと人として、ボクサーと して、
とても成長しているんだろうなと思っています。

頑張ってください。


それでは、これで失礼します。どうかお体に気をつけて下さい。


                                 


P.S.そういえば、大学に合格しました。

    同封の写真は卒業式の日に撮ったものです。

    邪魔になるかなとも思ったのですが、嵩張らないから
    いいだろうと勝手に思って同封しました。



読み終わった宮田は同封されている写真を取り出した。

1枚は面倒くさそうな顔をして学ランを着ている自分の写真。

そして、もう1枚はと並んでファイティングポーズをとっている写真だ。

自分が矯正しただけあってのポーズも中々サマになっている。思わず、笑みが零れた。

(何か、また背中押してもらったみたいだよな。)



宮田はタイでの修行を終え、パヤオ、チャナに空港まで送ってもらった。

空港内の郵便局で、手紙を同封した小包を日本に向けて送った。



さんへ


元気?俺は何とか元気だよ。

大学合格おめでとう。そして、手紙と写真ありがとう。

とりあえず、タイでの修行は終わったから次の国へ行くけど、
たぶん手紙書く時間なんて無いと思う。


確かに大変なこともあるけど、大丈夫。頑張るよ。

さんも体に気をつけて。それじゃあ。


                         一郎

P.S.小包の中の写真立て、よかったら使ってよ。


再び手紙を書いてみたり。
自分手紙好きだなと思いつつ、果たして宮田は手紙を書くのだろうかと考えました。
正に『手紙書く時間なんてあったのか?!』状態です。



桜風
05.03.12


ブラウザバックでお戻りください