帰還




3月の終わり、大学も春休みなのでは家で家事をしていた。

庭で洗濯物を干していると、

 ピンポーン



インターホンが鳴る。

ちゃん、出て。」

お菓子を作っている、同じく大学生の姉は手が離せないらしく家の中から声を掛けてきた。

は一旦手を止めて門に向かい、訪問者の姿を見て足が止まった。

さん、久し振り。」

それは宮田だった。

が呆然としていると、宮田は苦笑して自ら門を外から開ける。

悪いかなとは思ったが、が復活するのに時間が掛かりそうだ。

宮田はそのまま敷地内に足を踏み入れ、の前に立った。

「久し、ぶり。宮田君。」

まだ驚いた様子のは何とか言葉を口にした。


さん、手紙ありがとう。正直、返事が来ると思っていなかったよ。」

「こちらこそ、写真立てまで貰っちゃって。ありがとう、使わせてもらってるよ。

でも、宮田君は私が約束を破ると思っていたんだ?返事を書くっていうのは私から言い出したことなんだから、ちゃんと返事するに決まってるじゃん。」

「あ、いや、そういう意味で言ったんじゃなくて...」

宮田が言い淀むと、悪戯っぽく笑ったが、

「うん、分かってるよ。」

と言って、上から下まで自分を眺めるので宮田は少し怯む。

「宮田君、やっぱり大きくなったね。」

「いや...」

背は日本を発つときとあまり変わっていないはずと思っていたら、

「背とかじゃなくて、器?ボクサーとして、っていうのは今この状態じゃ分からないし偉そうに言える程分かってるつもり無いけど、人としてというか。

『精神的なもの』って表現が一番近いのかも。...強くなったんだね。そういえば、修行の成果は?」

「11戦10勝1分8KO。OPBF3位にランクされたよ。とりあえず差が埋まったと思ったから帰って来た。」

「11戦って、ハイペースだねぇ。でも、うん。凄いじゃん。あ...今更だけど、上がってく?」

「いや、ロードの途中だし、何となく精神的に良くなさそうだから。」

此処まで姉の作っている焼き菓子の良い匂いが漂ってくる。

「もしかして、試合近いの?」

「まあ、ね。5月に試合が予定されているから。チケット出来たら持って来るよ。」

「本当?!ありがとう。宮田君の試合見るのって約1年6ヶ月ぶりだね。」

「そう言えばそうだな...。さんは変わってないよな。」

「...ということは、私は成長していないと言いたいのかなぁ?宮田君。」

が少し睨んでみるが、そんなことを意に介す様子も無く、

「違うよ。帰ってきた場所に変わらない人が居るって言うのは落ち着くって言ってるんだよ。さんを見ていると帰ってきたって実感できたって事。」

と余裕の笑みを浮かべた

悪い意味ではないようなのでは宮田を睨むのを止めて、「そう?」と一言返事した。


「じゃあ、俺、ロードに戻るから。」

そう言って宮田がに背を向た。

敷地から出た宮田は「あ。」と言って振り返る。

見送るために一緒に出て来ていたに向かって、

「そういえば、まだ言ってなかったよな。『ただいま、さん。』」

突然そんなことを言われたは、きょとんとしたあと苦笑して、

「おかえり、宮田君。」

と返事をした。

それを聞いて宮田は笑みを零し、「じゃあな。」と言ってロードワークに戻って行った。



早々に帰国させちゃいました。
キム兄さん、ごめんなさい...



桜風
05.4.2


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