彼女の事情 ―前編―
| 木村のチャンピオンカーニバルの出場が決まった。 相手は間柴了。1階級上げてJライト級でチャンピオンになった。 木村は間柴のフリッカーを攻略するべく、宮田に練習のパートナーを依頼する。 木村が宮田の所属している川原ジムで練習するようになって数日が過ぎたある日、は川原ジムへ行ってみた。 ジムの中央のリングの上で、木村と宮田がスパーリングをしている。 ナチュラルウェイトの宮田は、木村以上の力を持っていた。 木村は宮田に打たれてダウンをしては、起き上がっている。 が窓からその様子を覗いていると、宮田父がそれに気付いて外へ出てきた。 「さん、寒いでしょう、どうぞ入ってください。」 「わぁ!!」 2人の試合に見入っていたは、宮田父に声をかけられて驚いた。 「...ごめんなさい。えっと、これ。差し入れを持ってきただけですから。渡していただけませんか?」 と言って手に持っていた2つのビニール袋を宮田父に渡す。 中身は温かかったはずのペットボトルのお茶と湿布や絆創膏などの医療品だった。それを見た宮田父は苦笑をして了解した。 何度もダウンをしては起き上がるを繰り返していた木村も、とうとう気絶してしまった。 宮田は練習生に手伝ってもらい、木村をベンチに寝かせる。 ふと父が居ないことに気付いた宮田はジムの中を見渡し、窓の外でと話をしている父の姿を目にする。 (さん?!) が帰ろうとしていたので宮田は慌ててジャージの上を掴んで外に出た。 「さん!」 が驚いて振り返る。 「さんが差し入れ持って来てくれたぞ。木村はどうした?」 「そこで寝てるよ。...久し振り、さん。」 宮田父は自分と話す気の無い息子の様子を見て、黙ってジムの中に入っていった。 「宮田君は何飲む?」 ジムから少し歩いたところにある公園の自動販売機ではミルクティーのボタンを押し、宮田に声を掛ける。 「いや、俺はいいよ。」 宮田が断ったのでは近くのベンチに腰を下ろす。宮田もその隣に座った。 ジムの前で話をしていても良かったのだが、中から好奇の目を向けられて落ち着かなかったので近くの公園まで来たのである。 カチカチと音がするので隣に目をやると、手がかじかんでいるが缶を開けられないようだ。 「貸して。」 のそれを受け取り開けてやると、は「ありがとう」と微笑んだ。 「俺、来春OPBFのタイトルマッチがあるんだ。見に来てほしいんだけど、どう?」 「春か...。ちょっと微妙だなぁ。もちろん都合が付けば行くけど、約束は出来ないや。」 「何か用事でもあるのか?」 「うん。木村さんのチャンピオンカーニバルの日からね。ちょっと姿を晦ませます。探さないでね。 それがいつまでになるかがちょっと分からないんだ。バイトもとりあえず1月で辞めるし。」 「...姿を晦ませるって、どこに?留学?」 「んー、秘密。大丈夫、頑張るから。タイトルマッチならテレビ中継あるよね?応援に行けなくても、応援はするから。これは絶対に約束できる。」 どうも話が噛み合わない。 のどこか決心している表情が気になったが、これ以上何を聞いても的を得た答えは返ってこないだろうと判断した宮田は、立ち上がって伸びをする。 「まあ、よく分からないけど、さんも頑張って。俺、そろそろ戻るよ。木村さんも目を覚まして待ってるだろうし。」 そう言ってジムへ帰ろうとした宮田に、 「私がバイト辞めるの、まだ木村さんに言わないでね。私の口から皆に言う予定だから。」 とが声を掛けた。 「OK.」と軽く右手を上げて宮田は走っていった。 宮田の姿が見えなくなるまで見送ったは、少し思いつめた顔をして深く息を吐いた。 |
少しシリアス(?)な展開になってみたり。
ヒロインのことがメインになります。
ところで、タイトルマッチとかチャンピオンカーニバルってそんなにテレビ中継ありますか?
桜風
05.4.9
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