プレゼント ―宮田・前編―




は、今凄く困惑していた。

(私は何故、宮田さんと電話でお話をしているのだろう。)



まだバイトも再開していないし大学も休みで自室で寛いでいると、姉が電話を持って来た。

ちゃん、宮田さんって人知ってる?」

「宮田君?知ってるよ。宮田君から?」

不思議に思いつつも姉から受話器を受け取る。

宮田なら自分の携帯の番号を知っているから携帯の方に掛けてくるのに、と思いながら、

「お電話代わりました。です。」

と出てみた。

『突然すみませんね、さん。宮田です。実はお願いがあるのですが、今月の27日何か予定入っていますか?』

(宮田さん?!確かに姉ちゃんは『宮田さん』って言ったけど、間違ってないけど、何で?)

ということで冒頭の2行に戻る。


今月の27日、つまり8月27日。宮田一郎の誕生日。

「いえ、今のところ予定は入っていませんけど...」

『その日、一郎の誕生日なんですがね、サプライズパーティーなるものがしたくなりまして。さんに協力してもらいたいんですよ。』

「えっと、具体的に何をすればいいのでしょう?」

『一応はその日を休養日にしているんですがね、休みの日は一郎ずっと家にいるんですよ。

だから連れ出してもらいたいんです。7時ごろ帰ってくるように私から言います。どうですか?』

「分かりました、いいですよ。何時ごろから出掛けたら良いですか?」

その他の細かいことを決めて電話を切る。

今、宮田父から電話があったということは宮田は当分家に帰ってこないバイトか何かで出ているのだろう、と判断したは翌日宮田に電話をすることにした。



翌日、携帯にかけてみたが宮田が出てこない。

また後で掛ければいいかと、携帯を部屋に置いたままとりあえず席を外した。

少しして、部屋に戻ると携帯が鳴っている。着信音で宮田と分かり、手に取ったところで切れた。

着信履歴を見てみると、『宮田一郎』から5分置きに4回掛かってきていた。

がリダイヤルをすると、宮田はすぐに出てきた。

さん、電話くれたみたいだけど、どうしたんだ?』

「ごめんね、何度も掛けてくれたのに。えっとね、宮田君27日空いてる?」

『27日?ああ、休養日だからフリーだな。ロードはするけど、どうかした?』

「じゃあさ、見に行きたい映画があるんだけど、付き合ってくれない?映画館に行って見たいんだけど、一人じゃ味気ないでしょ?奢りますよ〜?」

『奢りじゃなくていいよ、むしろ俺が奢るよ。さんは、学生。俺は、稼いでる。それで、何時にする?』

「2時20分上映に合わせたいから、1時半ってどうかな。遅い?でも、初出しから1月半たってるし、大丈夫だと思うんだけどな。」

『そういえば、何て映画?』

が口にしたタイトルを聞いて宮田は、納得する。

『あー、あれな。結構CMとかやってたな。2時間以上の長編アニメだろ?人気あるらしいけど、大丈夫じゃないか。じゃあ、1時半に映画館前でどう?』

「人多くない?もう少し離れた方が見つけやすいと思うけど?」

『大丈夫、俺が絶対見つけるから。それに、2人とも携帯持ってるんだから、何かあったら連絡できるし。』

「了解。じゃあ、27日1時半に映画館前で、ということで。」

『ああ。じゃあ、27日にな。おやすみ。』

「はぁい。おやすみ。」

は電話を切って溜息を吐く。

宮田は、当日が自分の誕生日ということを果たして知っているのだろうか。

「さて、私からのプレゼントは何にしましょう...」



8月27日。

は映画館の前で宮田を待っていた。夏休みということもあって人が多い。

(髪切ったって言うの忘れてたけど、宮田君分かるかな。)

そんなことを考えていたが、宮田はあっさりと宣言どおりを見つけた。

さん、やっぱり髪切ったんだ、勿体無い。じゃあ、行こうか。思ったほど並んでないな。」

宮田はの手を引いて人の列に加わる。

宮田は改めてを見た。

襟元で光っているネックレスが目に入り、目を細める。

それは以前自分が贈った四葉のクローバーのネックレスだった。

ふと出かけに言われた父の言葉を思い出し、に声を掛ける。

「あ、さん。今日の夕飯、ウチで食べてもらえって父さんが言ってたけど、どうかな?」

「ん。大丈夫。ちょっと電話してくるね。」

そう言っては少し離れたところへ移動していった。

再び戻って来たは「大丈夫でしたー」と言った。


「あー楽しかった。リピーターが多いのって納得いくね、これは何度でも見れる。...けど、体が強張った。」

伸びをするの横で、宮田も体を解しながら歩く。

時計を見ると、まだ4時半。帰る時間を差し引いてもあと2時間帰れない。

は自分の使命を果たすべく宮田を引っ張りまわそうとしたが、ふと、別のことを思いついた。

「宮田君。私、宮田君のOPBFチャンピオンのお祝い何もしてないよね。と言うわけで、何か欲しい物ある?あるでしょ。」

宮田父がサプライズパーティーを企画しているのだから『誕生日』と言う単語は禁句と思い、宮田の誕生日プレゼントは用意していた。

しかし、どうせなら宮田の欲しい物を贈りたい。

だからはプレゼントを贈るときは、相手にリクエストを聞く。

宮田は悪いと思って断ろうとしたが、が期待の眼差しで自分を見ているので諦めた。

「そうだな...そろそろ新しいジャージが欲しいと思ってたんだ。それでいい?」

ということで、2人は大手スポーツ用品店へと向かった。


「どっちがいいと思う?」

「黒...かな。よく着てるジャージのイメージ強いから。宮田君ってウチの弟と同じサイズだ。」

「弟って、確か晃一郎君?そうなんだ。」

「うん。でも宮田君と背の高さ同じくらいだし、そんなもんか。見た目の体格全然違うけど、ジャージのサイズは一緒だよ。」

「細いもんな、さんのとこ。お姉さんもでしょ?」

「私の上をいくね、あの人。皆ウチの姉ちゃんを見た時の第一声が、『細ッ!』だから。まあ、宮田君もそう思うと思うよ、姉ちゃん見たら。

で、結局どっちにする?」

「黒。さんが選んでくれたことだし。」

は宮田からジャージを受け取り、レジへ行く。

宮田はその後ろ姿を眺めながら、

自分はまた苦しくなったらあのジャージに頼ったりするのだろうか

と考えて苦笑する。

レジで包んでもらっている時はチラッと時計を見た。あと1時間ちょっと。

さて、どうやって時間を潰そうか。


しかし、意外と時間が潰れた。

の体調を気遣った宮田の提案で喫茶店に入る。

紅茶だけを頼んだに宮田がケーキを頼まないかと聞いたが、折角の宮田父の手料理が食べられなくなると断った。

話が尽きず、1時間なんてあっという間だった。

宮田が父に7時ごろ帰って来いと言われているので喫茶店を出ることにした。

今日は宮田の誕生日だし、奢ってもらうのは恐縮してしまうのでは自分が支払おうと思っていた。

しかし、が伝票に手を伸ばすと、宮田が素早くそれを取ってレジへ行き支払いを済ます。

『男として』とか、『社会人(?)として』などのプライドとかあるのかな、と思ったはおとなしく奢られた。



この連載、イベント事やってないなと思って。
第一弾が宮田の誕生日ネタ。しかも前後編(笑)
お付き合いください。

『長編アニメ』ってジブリ作品とかをイメージしています。



桜風
05.6.11


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