プレゼント ―宮田・後編―




宮田の家に着いた時刻は6時50分。

は、まあ、うまくいったほうだろうという評価を下した。

「ただいま、父さん。さん連れてきたよ。どうぞ、中入って。」

を促し、宮田は家に入っていった。

も「お邪魔します」と言いながら宮田に続く。

リビングに入ると、パンッとクラッカーが鳴り、

「一郎、21歳の誕生日おめでとう。」

と言う父の姿があった。

宮田は呆気にとられたが、気を取り直して「ありがとう、父さん」と礼を言った。

ふと、後ろを振り返るとの姿が見えない。視線を落とすとがしゃがんでいた。

さん、大丈夫?どうかした?」

宮田は膝を突き、心配そうに声を掛けた。

「いや、うん。大丈夫。宮田さん、私が驚きました。」

「ああ、すまないね。誕生日と言えばクラッカーが付き物だと思ったから。...大丈夫かい?」

「はい、大丈夫です。少し驚いただけですから。」

「それは悪かったね。さぁ、2人とも食事にしよう。」

促されて食卓についたは、食卓の上の並べられれている和食中心の料理を見て、感嘆の声をあげる。

「凄い、これ全部宮田さんが作られたんですか?」

「まあ、何年も主夫をやっていますからね。ところで、一郎。その袋は何だ?」

さんがOPBFのチャンピオンになったお祝いにくれたんだよ。」

「随分時間経っちゃいましたけどね。それと、これが『誕生日おめでとう』のプレゼント。」

は鞄から箱を取り出し、宮田に渡す。

実は今日が自分の誕生日ということを宮田は知っていた。

だから、今日とデートが出来ただけで十分な誕生日プレゼントだと思っていた。

それなのに、はプレゼントを用意して祝ってくれた。そんなに宮田は驚く。はっきり言ってさっきの父の行為よりもずっと驚きだ。

「ありがとう」とぎこちなく受け取る。

が「開けてみて」と促すので、丁寧に包みを剥がす。

箱を開けると、スポーツウォッチが入っていた。頑丈さが売りになっている有名ブランドのものだった。

「時計してるとこ見たことないから嫌いなのかなって思ったんだけど、着けなくても飾っておけるものだし、大丈夫かな、と思って。...どうかな?」

不安そうに言ってくるに宮田は笑顔で

「ありがとう、大切に使わせてもらうよ。」

と礼を言った。

は安心したように微笑んだ。


食事が済み、が洗い物を引き受ける。

さんゆっくりしてろよ。」

「んー、大丈夫。慣れてるから。宮田君こそゆっくりしてなって。」

に台所から追い出された息子を横目に、宮田父はクリームを泡立て始めた。


洗い物も済み、手持ち無沙汰になったはクリームを泡立て終わった宮田父に声を掛ける。

「宮田さん、私デコレーションしたいです。ダメですか?」

「いや、いいですよ。」

テレビを見ていた宮田が振り返るとエプロンを着けたが父の作ったスポンジにクリームを塗っている。

慣れた手つきに感心していると、父も同じことを思ったらしい。

さん、慣れているようだけど、よく家で作ったりしているのかい?」

「いや、うーん。そうですね。ウチは誕生日ケーキは手作りなんですよ。だから毎年4人分のデコレーションはやっていますよ。

でも、宮田さんってケーキまで焼けるんですね。」

「まあ、本を見たら大抵の物は作れるようになったよ。」

と父が後ろで和やかに話をしていて宮田は面白くない。

2人の元へ行こうとして立ち上がるとに止められた。

「宮田君はまだ来ちゃダメ。楽しみが減るでしょ?飾り終わってからね。

宮田さん、私一人でも大丈夫ですから宮田君と休んでください。宮田君一人で寂しいみたいですから。」

宮田は「そんなことない」と言いながら再びテレビに視線を戻す。

そんな息子の姿に苦笑しながら宮田父はその隣に腰を下ろした。


「出来た!宮田さん、ロウソクどうします?やっぱり21本立てますか?ブスブスと。」

「あー、そうですね。一郎、何本がいい?」

「知らないよ。さんのところだったらどうしてる?」

「ウチは、十の位と一の位を足した数。21だったら3本。」

「じゃあ、それで。さん、もうそっち行っていいだろ?」

さすが、年4回デコレーションをしている実績はダテじゃない。

ふとに目を遣ると、『邪魔するなオーラ』を放ちながら何かをしている。

気になったが、『触らぬ神に祟り無し』と思った宮田はそれを見守った。

が手を止め、顔を上げたので、

「何やってたんだ?」

と聞いてみると、は得意げに

「じゃーん。中々上手く書けたでしょ?」

と言ってさっきまで文字を書いていたビスケットを掲げる。

見ると、

『誕生日おめでとう、貴公子殿』

と書いてあった。

宮田は複雑な心境だったが、とりあえず「達筆だな。」とコメントしておいた。


「じゃあ、ロウソク立ててもいい?」

ロウソクに火を点け、電気を消す。

宮田が一息でロウソクの炎を消して、と父からそれぞれ「おめでとう」の言葉を聞く。

ケーキを切り分けて食べるが、3人で1ホールというのは少し無理がある。

宮田はあまりカロリーを摂りたくないし、もこれを平らげることは不可能だ。残りを父一人で食べるというのにも無理がある。

さんの家は、ケーキ大丈夫なんですよね。持って帰ってもらえますか?」

「はい。一人大喜びする人いますから大丈夫です。」

この問題は、家で解決してもらうこととなった。


片づけが終わった時には既に9時を回っていた。

夜も遅いし、ケーキという荷物も出来たので宮田父が車を出すことにした。宮田もそれに付いていく。

「そういえば、宮田君。今日の誕生日パーティ、驚いた?」

「まあ、色々とね。」

「宮田さん、宮田君色々と驚いたようですよ。良かったですね。」

が嬉しそうに言うと、宮田父は「ははは、そうですね」と返事をした。


を家まで送り届けた帰りに、

「どうだった、一郎。父さんからのプレゼント、『さんとのデート』は。」

と声を掛けてきた。

宮田は苦笑をして

「そんなところだろうと思ったよ。でも、まあ、楽しかったかな。一応お礼は言っておくよ、ありがとう。」

と答えた。


策士宮田父。
人をダシにして何息子の誕生日を祝っているんだろう...



桜風
05.6.25


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