| 12月24日 某貴公子の部屋。 彼は目の前の綺麗にラッピングされてある小さな箱を見て時計に目を遣り、溜息を吐く。 時刻は既に11時を回っている。人の家を訪ねるには非常識な時間だ。 (何やってんだか、俺。) 自分でもよく分からないが、俗に言うクリスマスプレゼントなるものを用意していた。 しかし、渡したい相手とは約束を一切していない。 何度か誘ってみようと思ったが、断られるのが怖くて結局誘えなかった。 再び溜息を吐き、先ほどと同じことを思う。 (何やってんだか、俺。まあ、明日の練習が終わってから渡しに行こう。) そう思って今日はこの事を考えるのをやめた。 場所は変わって、某花屋の2階。 彼は溜息を吐いていた。 街がクリスマスムードに染まり始めた頃、彼女が『ポインセチアは赤が一番綺麗ですよね。』 と言っていたから自分の家で入荷したそれの、元気そうなのを厳選して自室にキープしていた。 しかし、肝心のクリスマスイヴの今日。 彼女はバイトが入っていない。 練習のあと、帰ってから直接彼女の家に届けに行こうとも思っていたが、親に捉まり店の手伝いをさせられてなんだかんだで結局この時間。 他人の幸せのために自分の幸せが潰れた。 こんな時花屋が実家というのが少し嫌になる。 (仕方ねぇよな。明日はバイト入ってるから会うし、明日渡すか。) 日付が変わって、12月25日。 は大学で出された課題に取り組んでいると携帯が鳴る。 着信音で高校のときに部活も一緒だった親友からだと分かった。 少し嫌な予感がしたが、出てみると、 『ちゃん、11時にいつもの場所で。』 この一言で切られる。 「私には拒否権なし、ね。」 と呟き、時計を見ると今は9時半。 嫌な予感が当たったなと思いながら重い腰を上げ、出掛ける準備を始めた。 約束の時間ぎりぎりにの親友、とが走ってきた。 は勿論時間前に着いている。 「わー、えらい。ちゃんと来てた!」 「...来なくてもよかったの?」 「ううん、来ないとダメ。じゃあ、行こう。」 「で、今日は何?」 「うん、ちゃんに合うミニスカ買いに。さあ、行くよ!!」 の両脇をがっちりガードした友人たちに半ば引きずられていく形で買い物デートが始まった。 の頭の中に『ドナドナ』が流れたことは、誰も知らない。 上機嫌にを引きずっていたが足を止める。 「どうしたの?」 反対にいる要が声を掛けると、視線は固定したままではニヤリ、と笑う。 それを辿ったも「ははーん」と言って笑う。 二人の様子にもその視線を辿ると、の良く知っている一人の男性に行き当たる。 二人はから手を離し、彼に近づいていった。 「ちょっと、止めなって。誰か...彼女とかと待ち合わせかもしれないでしょ?」 の制止を無視してそのまま近づいてが彼に目隠しをして、が、 「だーれだ。」 と声を掛けた。 (『だーれだ』?本当、誰だよ。聞いたことがあるような、ないような声だけど...。俺はどうしたらいいんだろう。人違いとかないのか?) 目隠しされたまま悩んでいるとその目隠しが外される。 振り返ると、見たことある2人が後ろに立っていた。 「あ、ちゃんの友達の...。確か、さんと、さん。」 「こんにちは、木村さん。お久し振りですね。」 「分かりませんでしたか?はあ、愛がないな。」 「愛がないんじゃなくて、数年前に2回話しただけの人の声を覚えている人の方が少ないよ。こんにちは、木村さん。」 「ちゃん。」 「木村さん、これからデートですか?」 「いや、家にいたら両親が煩いから逃げてきたんだよ。3人は...」 「デートです。」 がきっぱりと言う。 「木村さん、暇なら一緒にどうです?」 の誘いに木村は 「じゃあ、仲間に入れてもらおうかな。」 と返事をした。 平静を装っているが、心の中では、 (サンタさん、ありがとう!!) と全く信じていない存在に礼を言っていた。 家を出る前、木村は、 「達也、今日はさんとデートじゃないのか?」 といきなり父に言われて驚いた。 「何で?ちゃんとはそんなんじゃないって。何だよ、いきなり。」 と言うと今度は母が、 「そうなのかい?あんないい子放っておくなんて...。じゃあ、達也はその年で恋人がいないのかい?」 (うるせぇ。俺だって好きでこんなんじゃないんだ。...このままだとずっとこの話が続きそうだな。出掛けとこ。) という経緯で出掛けたのだが、何とも結果オーライな展開だ。 親友二人はのガードを解きそのまま並んで話しながら歩いていると、再びが足を止める。、そして木村がその視線を辿ると、そこにはやはりの良く知っている一人の男性がいた。 (...逃げて。) の願いも空しく、と、なぜか木村が彼に近づいた。 いつもは気配に敏感な彼も、近づいたのが木村だったからか、気を緩めていたからかは分からないがあっさり背後を取られて目隠しをされる。 今回の目隠し役は木村だ。 「だーれだ。」 先ほど木村に声を掛けたが同じように声を掛ける。 (『だーれだ』?何で女の人の声で手が男みたいなんだよ。っていうか、本当に誰だよ。知らない人間だったらどうするつもりなんだ、こいつ。) 目隠しが外され、振り返ると、 「木村さん...。何やってるんですか。そちらは?」 「どうも、『宮田君』さんでしょ?の『心の友』と書いて『シンユウ』のです。」 宮田はノリについていけず、「はあ」と曖昧に返事をした。 そして、彼女の後ろから人が近づいてくるのを見る。 「さん。」 「ごめんね、私は無力だったよ。」 「ああ、『宮田君』さんか。幕之内君が40分近く熱く語ってた人だ。こんにちは、です。ちゃんとは高校のときからの付き合いです。」 宮田は「どうも」と会釈する。 「そういえば、何で宮田の事知ってるの?」 疑問に思った木村が2人に聞いてみる。 「ああ、3年のときちゃ―――」 話し始めたの口をが手で塞ぐ。 「何でもないよ〜。そう何でもないの。宮田君が有名人なだけだよ、うん。」 「高3のときにね、ちゃんが見ていた雑誌に...」 口を塞がれていないが代わりに話し始める。 2人の口を塞ぐのは無理と判断したは走ってどこかへ行った。 「ちゃん。」 「了解。その間に説明しておいて。」 そう言って佳菜はを追いかけた。 「で、高3のときに幕之内君から借りた雑誌に『宮田君』さんが載ってたのよ。それのインタビュー記事を読んだちゃんが爆笑始めたから、それでインパクトに残ってたのよ。美人さんだったし。」 「...俺、何て言ってました?あ、あと、『さん』は要りませんから。」 「分かった。そっちも敬語無しで。同じ年だしね。木村さんも、名前で呼んでいいですよ。 宮田君のインタビューはね、好きな女性のタイプかなんか聞かれてて、その答えが『カウンターが恋人です』だったかな。妙にその当時のちゃんのツボだったらしくて、『じゃあ、初恋はボクシングって答えるんだよ、きっと。宮田君面白い〜。』とかって言ってたよ。突然爆笑をされた私たちは彼女がとうとう受験ノイローゼになったかと思ったからね。何か、殆ど遊ばなかったし、あんまり笑わなくなってたときだから。」 「何か、複雑だな、宮田。」 「そうですね。」 「ところで、宮田君もこれから暇?暇なら一緒しない?たぶん宮田君でダメ押しになるから。」 「ダメ押しって?」 「ちゃんが逃げないように。木村さんは全くの初対面って訳じゃないけど、宮田君は私たちと全くの初対面だし、ちゃんが居たから君を知ったでしょ?まあ、木村さんもそうですけど。と、なると、宮田君が私たちに巻き込まれたらちゃん先に帰ることなんて出来なくなるのよ。人に気を遣う子だから、自分が原因で巻き込まれた人を見捨てて帰るなんて出来ないし。どう?」 そんなの説明に疑問が浮かぶ。 「何でさんは逃げようとするんだ?」 「ミニスカ買いに来たから。」 「...。」 「よし、宮田。お前も一緒に行こう!」 木村は宮田の肩を強く握り、力いっぱい誘った。 話が終わった頃、を保護したが戻ってきた。 「終わった〜?」 「うん丁度。ちゃん、大丈夫?」 走って疲れ果てているは片手を上げて答えた。 「そういえば、お前も暇にしてたんだな、宮田。」 「まあ、家にいると父さんが煩かったので。」 「どこも同じだな。」 今朝のロードが済んで朝食を食べているとき、突然父が、 「ところで、一郎。今日は何時に出るんだ?」 と聞いてきた。 「別にこれといって予定はないけど。今日はジムに行くだけだし?」 「...さんは?」 「何でここでさんの名前が出て来るんだよ。」 「もしかしてお前、あれだけ悩んでて誘えなかったのか?」 (何でそんなことまで父さんが知ってるんだよ!) 「お前な、そうやってうかうかしてると誰かに持っていかれるぞ。全く、チャンピオンが情けないな。」 (チャンピオン、関係ないだろ?!...家にいてもこのまま父さんの小言を聞かされるんだろうな。ジムに行く時間まで避難しておくか。) ということで出掛けてきたのだが、こんな所で偶然にに会うとは思っていなかった。 なんとも自分は運が良い。 |
またしてもアホなことを...
最近ギャグに飢えてるのか、それともただ単に一郎さんたちが壊れてるのが好きなのか。
多分、後者です(苦笑)
桜風
05.7.23
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