クリスマス ―中編―





とりあえず、皆は昼食を食べることにした。

注文を一通り済ませたとき、の携帯が鳴る。

「いいよ、出ておいで。」

に促されたは席を立ち、電話をしに行った。


が居なくなったのを確認して、

「木村さん、もう5年でしょ?私、ちゃんと話す度に楽しみにしていたのに。」

「えーと、何の話かな。」

「バレてないとお思いですか?木村さん。ちゃんのこと好きでしょ?あ、あと、たぶん、宮田君も。」

「え?!」

木村が慌て、宮田は無言で驚く。

ちゃんは全く気付いていませんけどね。その点は、安心してください。」

がフォローを入れる。

「やっぱ全然気付いてないか...。少しでも意識してくれればこっちとしても動きやすいのになぁ。」

溜息混じりに木村が言う。

そんな木村を見ては苦笑しながら、

「まあ、それは無理でしょうね。高校のときもちゃんの事好きだった子がいたんですけど、結構あからさまなアピールされていたにも拘らず、ちゃん全部スルーしていましたから。
わざとかなって思っていたんですけど、どうもそうじゃないみたいで。見ているこっちが気の毒なってきて思わず慰めちゃいましたからね、彼を。
あの子相手だと直球ストレートど真ん中でいかないとたぶん無理ですね。他人のことは結構敏いんですけど、自分が関係していると見えないみたいですよ。」

「二人とも頑張ってください。私たちはどちらでもいいですよ。」

「応援してくれないんだ?」

木村が言ってみると、

「まあ、宮田君が嫌な人だったら『木村さんを全面バックアップします!』とか言ってたと思いますけど、そうじゃないみたいですから。ちゃんを大切にしてくれる人ならいいです。ぶっちゃけ、2人でなくても。あの子無茶ばっかりしますからね。せめて周りが大切にしないと。」

「やっぱり、さんって学校でもそうだったんだ。」

「そう。『走るな』って言っても走るし、『重い物持つな』って言っても持つし。楽しそうに無茶してくれてたよ。どうせ、バイトでもそうだったでしょ?」

「まあね」と木村が苦笑しながら答える。

そんな話をしているとが戻ってきたのでこの話はおしまいとなった。


「しかし、親友っていいね。」

突然木村がそんなことを言う。

「木村さんにだっているじゃないですか。」

「...誰のことだよ。」

宮田に言われた木村は思い当たる人物がいるものの認めたくなくて聞いてみるが、

「青木さんでしょ?」

が言っている。

「あれは腐れ縁ってやつで...」

「でも青木さん色々木村さんのこと覚えているみたいですよ。」

が言うので木村はやや顔を顰めて

「何聞いたの?」

と聞いてみる。

はしまったと言う顔をして木村から目を逸らした。

ちゃん。」

とぼけるのに無理があると思ったは、

「えっと、幼稚園の時の先生だったんですね。」

と言う。

「あら、お約束。」

「よくある話じゃないですか。」

初恋の相手の話だと何となく分かったはそれぞれ感想を述べている。

宮田は何の話か分からずの顔を窺うが、口元に人差し指を当てているだけで教えてくれない。

木村を見ると肩を震わせて

「青木のヤロー...。今日のスパーでボコってやる。」

呟いていた。

そんな木村の様子を見て話題を変えようと

「そういえば、何でちゃんは暇してるのよ。彼氏放ったらかしでいいの?」

と、今日呼び出されてからすぐに思った事を口にした。

彼女たちは彼氏持ちだ。こんなイベントのある日に暇でいるのが不思議でならなかった。

「昨日会ったからね。」

からは、

「昨日別れたからね。」

という答えが。木村と宮田は何だか居心地が悪かったが、向かいに座っている女子大生3人組は気にすることなく話を続けている。

「相変わらず続かないね。」

「放っておいて。ちゃんのところは何か続いてるよね。大学入ってからずっとでしょ?ラブラブだよね。」

ちゃんにそんな話はないの?」

の問いに、木村と宮田は注目するが、

「全然。」

と、いつものあっさりした答えが返ってきた。

木村は机の下で小さくガッツポーズをし、宮田は密かにほっとした表情をした。

(...この2人からかったら面白いかも。)

木村、宮田の反応を目にしたがそんなことを思った。


食事も済んで今度はメイン(?)のミニスカを見に行く。


店に入って、そして何故か木村があれこれ言いながら選んでいる。

(木村さーん。浮いてますよ。帰りましょうよー。)

は呆れながら心の中で訴えていた。

さすがにあの仲間に入らなかった宮田はそんな元ジムメイトの姿に溜息を吐いている。

「ごめんね、宮田君。何か、巻き込んじゃって。」

「いや、暇だったし。...あの2人と仲良いんだな。」

「まあ、ね。私ね、結構周りが見えなくてガーって突っ走っちゃうことが良くあるのよ。」

(ああ、知ってる。)

「で、時々それを振り返ってみて、『間違ってたかな』って思うときがあるのね。色々と自分の嫌なところとか見えてきて自信失くすことって結構あるの、こう見えても。でもね、あの子達がそばに居てくれるから、案外間違ってなかったんじゃないかって思うんだ。絶対に間違ったこと許さないから、あの2人。あの子たちが居るから、私は胸を張って『これが私だ』って言える。私は、彼女たちに逢えて凄く幸運だと思ってる。なんか照れくさいからあの2人には言ってないけど。まあ、時々今日みたいに有無を言わせず悪ノリに付き合わされるけどね。これはこれで一つの友情の形なのかもしれないけど...帰りたい。」

そう言っては項垂れた。

ふと、自分の靴が目に入る。

途端に明るい表情になり、

。私、スニーカーだ。」

と嬉しそうに言った。

ミニスカにスニーカーは合わないと思ったらしい。

そんなは、

「じゃあ、ブーツから買いに行かないとね。」

と言っての手を引いて行った。

「...仔牛が売られていきますね。」

「ああ。悲しそうな瞳で見ているな。」

引きずられていくを見送りながら、宮田と木村はある歌の歌詞が思い浮かんでいた。

勿論、の頭の中でも再びその歌が流れたのは言うまでもない。


ちゃんは、ちゃんたちに付いて行かないの?」

が見えなくなってまだ傍に居るに声を掛ける。

「...木村さん、私いなくなったらここに残った木村さん、凄く変な目で見られますよ?」

言われてみればそうだ。

女性に服をプレゼントすると言うのはあまりおかしなことではないが、でも珍しい。

店の中は居心地が悪いらしく、宮田は既に店を出ていた。


少ししてたちが戻ってきた。

は既に諦めの境地に立っているらしく、大人しい。

「さあ、今度こそ、ミニスカ!」

「なあ、さんは何であんなにミニスカにこだわってるんだ?」

傍にいたに宮田が聞くと、

「『ちゃんはミニスカきっと似合うと思うんだ。』この言葉が発端でこういうことになったの。面白そうだから私は止めなかったんだけど、結局は思いつき?」

「そう...」

どう返して良いか分からない宮田はそう言うしかなかった。

(女の友情ってよくわかんねぇな。)


本人そっちのけで選んだミニスカをに渡し、更衣室へ押しやった。

「宮田、サンタって本当にいたんだな。」

「木村さん、テンプルにパンチをもらいすぎじゃないんですか?」

木村の壊れた発言に宮田はとりあえず冷たく返しておいた。


更衣室が開き、が出てくる。

親友2人は歓声を上げ、ボクサー2人は絶句する。

ちゃん反則だよ。)

(かわいい...)

それぞれが心の中で感想を述べるが、声が出ない。

「ちょっと、何か言ってあげてくださいよ。」

隣に立っていたが木村をつつく。

「え?ああ。ちゃん、良く似合ってるよ。」

「いつものカジュアルなのもいいけど、そういうのも似合うな。」

いつもの宮田を知っている者が聞いたら驚きそうなことをさらっと言う。

勿論と木村は驚いた。

(あの宮田君はきっとニセモノだ...)

(お前ちょっとキャラ違うだろ?)


「じゃ、ちゃん、今日はそのままで。」

反抗しても無駄だと諦めの境地にいるは自棄気味にの提案に従った。




なんか、シリアスを書いた反動ですよね、これって...
すみません、ホント何と言っていいやら...(遠い目)


桜風
05.7.30


ブラウザバックでお戻りください