| 雨音がする。 まどろみの中に居たは慌てて部屋から出た。洗濯物を干したままになっているのだ。 一方、宮田は洗濯物を取り込んで畳んでいると自分の部屋からバタバタと走ってくる音に驚く。 「あれ?」 勢い良く居間に入ると、宮田が大人しく正座をして洗濯物を畳んでいる最中だった。 「...おはよう、さん。たぶん夕立だろ。」 「宮田君、ベッドにいたんじゃないの?私どれくらい寝てた?」 「よく分からないけど、俺が起きて20分ってところかな。看病してくれたから疲れたんだろ。」 「そうかなぁ?今は、4時か。少し遅いけどおやつにする?ゼリー作ったんだよ。あ!パソコンの電源入れっぱなしだった!!」 再びは走って宮田の部屋に向かった。 (寝起きなのに元気だな。...さん、走っても大丈夫なのか?) 「そういえば、宮田君って喉痛かったんだよね。これグレープフルーツゼリーだけど、大丈夫かな。」 「平気だろ。さんって、よくこういうの作るのか?」 適当に見繕った器を出しながら口を開く。 「時々、ね。気が向いて、時間と材料が揃っていたら。今日は家に大量のグレープフルーツとゼラチンがあったし、こっち来ても時間があると思ったから持って来てたんだよ。」 ゼリーを食べた後、が 「宮田君。アルバム見せてって言ったら嫌?」 「...別にいいけど。たいした物なんてないぜ?」 そう言って宮田とは宮田の部屋に移動した。 「ほら、これ。」 渡されたアルバムを楽しそうに捲っていたは、ある写真を目にして手を止める。 「か〜わ〜い〜い〜。宮田君、これは反則!」 それは4歳くらいの宮田がボクシンググローブを抱きしめて満面の笑みをカメラに向けていた。 その写真で「可愛いぃ!」と手をぶんぶん振りながら騒いでいたは落ち着いたのか、他の写真を見るためにアルバムを捲った。 そんなの様子を宮田は体を引いて見ていた。 (びっくりした。...もう大丈夫か?しかし、複雑だな。) 自分の好きな子に好意的な言葉を言われるのは嬉しいが、それが昔の写真で、しかも『可愛い』となると素直に喜べない。 (でも、まあ。さんも楽しそうだから、良いか。) それから何枚かさっきと同じ反応をしたがふと時計を見た。 「宮田君って夕飯は何時に食べたい?」 「別に何時でもいいけど。さんの家は何時に食べるか決まってるのか?」 「ウチは7時だけど。それだと早いでしょ?」 「いや、あまり遅いとさんの帰る時間が遅くなるから7時でいいよ。」 「じゃあ、そろそろ作り始めようか。アルバム、ありがとう。」 そう言っては宮田の部屋を出て行った。 「さんって料理も慣れてるんだ。」 「そうだね、お菓子よりは作ってるよ。バイトが無い日の夕飯は私が作ってるし。」 「そうなんだ。...何か手伝えることある?」 「...。」 その言葉に驚いた様子のに宮田は 「何?」 と聞いてみた。 「ウチのいち..晃一郎は絶対そんな気を遣わないのよ。いつも『姉ちゃんメシまだ?』って言うだけで、まだだったらそのまま居なくなるの。だからどこでもそうなんだと思ってたの、失礼しました。えっと、じゃあ、これお願い。」 「家のこととか手伝ってそうなのにな。」 「あの子も外面が良いから。」 「『も』って?」 「私も外面が良いらしいよ。というか、かなり猫被ってる...らしい。ただ、人見知り期間が長いだけなのにね?」 何と返事をして良いか分からない宮田は曖昧に「そう...」と返しておいた。 そのまま2人で和やかに料理をしていき、最後ににとって最大の難関。 さっきまでの和やかな空気はどこへ行った。 は具を卵で包むという作業を、それこそ殺気を込めているのではないかという気迫でやっている。 いつもにこにこしているのこれには宮田も怯んだ。 (これは口出しとかしたら、かなり怖いだろうな...) 宮田が見守る中、は何とかその難関をクリアした。 中々上手くいったらしく、 「見て、見て、宮田君。ほら、今日は上手に出来た!」 と嬉しそうに言ってきた。 多少形が崩れていると言えなくもないが、それなりに整っている。 夕飯を食べているとき、が思い出した。 「そうそう。私ね、就職決まったんだよ。」 「おめでとう、良かったな。じゃあ、お祝いしないとな。」 「いや、いいって。気にしないで。」 「でも、俺のチャンピオンのお祝いをくれたんだから。俺だけ貰うっていうのも気が引けるものなんだけど?」 あの時、半ば強引に話を進めた記憶があったはこの宮田の申し出を断れなくなった。 が返事をしあぐねているとそのまま宮田が 「じゃあ、さん。いつが暇?」 と話を進めてきた。 「...大学が10月からだけど、今は少し提出物で忙しいからなぁ。やっぱ10月以降になるかな?皆の試合は見に行くからそれ以外の火・木は4時半ごろから、土・日はまあ、大抵空いてるかな?」 も観念して話を進める。 「じゃあ、平日にしよう。休みの日だとさん、人ごみに流されかねないからな。そう言えば、何が欲しい?」 「私も宮田君と同じで物欲ないからなぁ。それよりも、君。今さり気なく失礼なこと言ったね...。」 が半眼になって抗議をするが宮田はそれを黙殺してそのまま話を続けた。 「まあ、当日出掛けたときに決めてもいいけど、一応考えといて。」 約束の日と時間を決めてその話は終わった。 は少し作りすぎたかと心配していたが、宮田は病み上がりにも拘らずそれらをきれいに平らげた。 洗い物を済ませてお茶を飲みながら時間を過ごしていたが、ふと宮田が時計を見るとそろそろ9時になる。残念だが彼女も帰ったほうがいい時間だろう。今日は既に半日以上この家に居てもらっている。 「さん、そろそろ9時になるけど、時間は大丈夫か?」 「え?あぁ、もうそんな時間か。それじゃあ、お暇しますか。」 が宮田の部屋に置いていた自分の荷物をまとめてくる。 「それじゃあ。...えっと、明日はどうする?」 「もう大丈夫だから。明日はジムとバイトも行こうと思ってるよ。」 「そう。じゃあ、私の役目もここまでだね。鍵、返すね。あと、冷蔵庫の中に少しサラダが入っているし、ゼリーも食べちゃって? じゃあね、お大事に。」 「ああ。本当にありがとう。...送っていこうか?」 「大丈夫だよ、バイトの日はこれより少し遅いんだし。じゃあ、おやすみ。」 そう言っては玄関のドアを開けて出て行った。 がひとり居なくなっていつもの空間に戻っただけのはずなのに、宮田は寂しく感じてしまった。 寂しいと思ってしまった自分が恥ずかしくなり、頭をがりがりと掻きながら宮田は部屋に戻って行った。 |
『ドキドキ☆数日限りの半同棲生活vvv』もこれにて終了。
でも前半は一郎さん、とても苦しそうでしたけどね!(笑)
ああ、相変わらず無駄に長かった...
桜風
05.10.8
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