優しいキミ 6





『はーい、了解しました。伝えておきますね?』

そう言ってちゃんが通話を切った。


ちゃんを家に連れてきたあの日から2ヶ月以上経った。その間、彼女は何度か店に花を買いに来たし、CDを貸したりもしてお互いの趣味の話なんかもした。

ちゃんはちゃんと同じでしかっりしているし、芯が通ってて強い。あの時あんなにボロボロだったのに今はしっかりと顔を上げて前に進んでいる、そんな感じがする。

ちゃんと話しているうちに彼女に惹かれている自分に気付いた。

でも、どう接していいか分からない。

今まで何人かの女性と付き合ったことはある。でも、それは全て年上か同じ年。年下の接し方が分からない。

俺の人生の中で年下の女の子はちゃんだけだった。勿論、店に来てくれる客の中には年下の子もいるけど、そのときは店員として対応しているからカウントしない。俺は、ちゃんとは店員と客という関係ではなく、木村達也ととの付き合いを望んでいる。


しかし、ちゃんの例もある。下手したら、またイイヒト、『いいお兄ちゃん』になりかねない。それはさすがにキツイし、避けたい。

それならいっそのこと自分の想いを告げるのが良いとも思うけど、彼女は約2ヶ月前に男と別れたばかりだ。2ヶ月と言えば、長いのか短いのか微妙だと思う。それに表面上立ち直ったように見えるけど、心の傷は癒えていないかもしれない。そんなときに告白するなんて何だか弱っているところに付け込むようで卑怯な気がする。

...まったく、俺も臆病になったもんだ。


突然携帯が鳴る。

見ると知らない携帯番号が表示してある。

もうちゃんが連絡を取ってくれたのかとも思ったけど時計を見るとまだ4時前だ。普通病院とは5時までのはずだから薬剤師をしている彼女から電話が来るはずがない。

そういえば、それなら何でちゃんは何で電話に出ることが出来たんだろう?

今更そんなことを思ったけど、とりあえず出てみることにした。

「はい。」

ですけど、木村さんですか?』

電話を掛けてきたのはちゃんだった。知らない番号からの電話だったから俺の声は少し不機嫌だったはずだ。

ちゃん?!今日は仕事なかったの?まあ、ちゃんもだけど。」

俺は少し焦る。

『あー、良かった。ちょっと声が違う気がしたから間違っちゃたかと思いましたよ。今日は夜勤なんです。私は病院勤めの薬剤師ですから。ちゃんは今日は病院に行く日だったからお休み取ったって言ってました。それで、えっと...』

「そうそう、新しいCD買ったからどうかなって思って。あと、ちゃんは次の休みっていつ?昨日ちゃんの誕生日だったんだろ?どこか出かけない?」

考えるより先に口に出ていた。一度口にしたことは無かったことに出来ない。これはもう賭けだ。2ヶ月前までは会えば話すだけの普通の友達。でも、今は少しくらいは近くなったと思う。これで断られたら諦める。承諾されたら...玉砕覚悟で告白。

『え?いいんですか?私見たい映画があるんですよ。ちゃんはあまり映画館行かないし、も仕事が忙しくて都合が付かないって言ってますし、職場の人も皆行った後だって言うんです。私ずっと行けずにいたし、そろそろ上映期間も終わっちゃうから行っておこうと思ってたんです。...あ、でも木村さんはもう見たかもしれませんよね?』

「いや、大丈夫だよ。ここ3ヶ月くらい見に行ってないから。」

次の土曜日、俺が彼女の家に車で迎えに行くということで話が終わった。



約束の日。

今日の約束は彼女の誕生日祝いと言うこともあるから花束を作って家に向かった。

玄関のチャイムを押すと彼女が出てきた。

「はい、遅くなったけど誕生日おめでとう。」

「わぁ、ありがとうございます。ちょ、ちょっと待ってくださいね、置いてきます。」

パタパタと家の中に入って行き、すぐに戻ってきた。

その後、彼女が見たいと言う映画を見て買い物をし、ちょっと有名なレストランで食事をして夜景を見に行くというお決まりのデートコースってやつだったけど、結局告白なんて出来ずに彼女を家に送り届けた。

帰りの車の中では自嘲が漏れる。本当、情けないよな、俺。




キム兄さんもあっさり自覚。
まあ、キム兄さんはオトナですから☆
とはいえ、ヘタレは治ってません!!(笑)


桜風
06.2.25


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