薔薇姫の恋1





棘の抜けた薔薇姫は、中々素直で付き合いやすい。

今まで彼女を敬遠していたクラスメイトたちから声を掛けてくることが多くなった。

蔵馬と一緒に居るときが増えたのもその要因だろうが、やはり一番の要因は
の笑顔だろう。


さん」

休憩時間小説を読んでいると声を掛けられた。栞を挟んで顔を上げるとクラスメイトと違うクラスの女子が自分を覗き込んでいる。

「何?」

「文化祭、何か予定ある?」

と聞かれる。

予定...

「ううん、何も。というか、予定って?」

「ほら、あたしたち3年って受験とか就職があるからってクラスで何かするってのが無いでしょう?」

「うん...?」

そうだったのか、知らなかった...

「で、やりたい人はサークルみたいなの。それで参加できるの。最低人数は決まってるけど」

「そうなんだ?えーと、それで?」

「一緒にやらない?」

「へ?」

「お願い!あと1人で人数が揃うの。それに、
さんがいたら先生がバックについてくれそうだし」

「ちなみに、何をするか決めてるの?」

「いや。それもまだ...」

「うーん...ごめん、ちょっと考えさせて」

そう言うとチャイムが鳴り、教師が教室に入ってきた。

違うクラスの子は走りながら自分のクラスに帰って行った。


「文化祭?」

夜、
から掛かってきた電話は昼間のことについてだった。

『そう。一緒にやらないかって』

「何をやるって?」

『まだ決めてないんだって。ねえ、去年までの文化祭ってどんなだったの?』

、見てないのか?」

『私は体育祭と文化祭には必ず体調を崩す人だったので』

おどけたように
が言う。

恐らく、人がたくさん集まる学校行事はなるべく避けていたのだろう。何か起こって大勢を巻き込みたくないと考えていたに違いない。

「何、って特別変なのはなかったよ。飲食店系が多かったんじゃないかな?喫茶店とか、やきそば、たこ焼き。
そんな感じのものだったと思う」

『接客系ってことかー』

そう言って少し黙って何か考えているようだ。

「何か問題でもあるの?」

『問題というか...こう見えても人見知りが激しいもので』

「ふうん」と蔵馬が気の無い返事をすると電話の向こうでは『あ、信じてないなー!』という抗議の声が発せられている。

「そんなことないよ」と取り敢えず宥めておいて

「でも、今まで文化祭に出たことが無いんだったら思い出作りと思ってやってみたら?あ、でも受験勉強に差支えがあるかな?」

と自分の意見を言う。

折角高校卒業前になって、誰かと何かを一緒にする機会が出来そうなのだ。

それこそいい思い出になるはずだ、たぶん...

『勉強の方は、何とかするけど。そうだよね、もうこんな機会無いかもしれないもんね。やってみようかな?』

「それがいいよ、きっと」

蔵馬が同意を示すと
は『ありがとう』と言って電話を切った。

でも、何だろう。

何だか嫌な予感がする。

そんな深刻ではないが、自分にとっては面白くないことのような...

「意外と、俺の勘は当たるんだよな...」

ぱちん、と携帯を閉じて独りごちた。


新シリーズ(?)今度は薔薇姫の恋です。
『恋』って単語は何だか照れくさいです。
『恋愛』ってのだったらそうでもないのに...


桜風
06.12.18


ブラウザバックでお戻りください