| の家に着き、玄関を開ける。 「どうぞ」 雪菜を家の中に案内して玄関の鍵を掛けた。 以前は気にしていなかったが、蔵馬に言われて掛けるようにしたのだ。 服を着替えてお湯を沸かす。 「雪菜さん、何飲みます?」 「お茶がいいです」 「了解!」 雪菜のリクエストに沿って緑茶を淹れる。 「あの、蔵馬さんお元気ですか?」 何故皆自分に蔵馬の事を聞くのだ? 「さあ?」 声がいつもと違って冷たい。自分でも驚く。 そして、雪菜を見ると驚いた顔をしていた。 「あ、ごめんなさい。あの...」 完全に八つ当たりだ。 サイアク... 頭を抱えたくなる衝動を抑えて は雪菜の側に向かう。 「ホントごめんなさい、雪菜さん。ちょっとイライラしてて」 「いいえ。私の方こそ突然お邪魔して。どこかお体が悪いのですか?」 「いえ。そんなんじゃないんです、本当。八つ当たりをしてしまって...」 「八つ当たり、ですか?」 雪菜が聞いたところでケトルがけたたましく音を鳴らす。 は慌てて台所に戻って火を消す。 お茶を淹れながら昨日のことを話した。 雪菜には、何だか素直になれたのだ。 話し終わった頃にお茶も入った。 盆に載せて雪菜の座っているソファの前のテーブルにそれを持っていく。 「 さんは、蔵馬さんのことがお好きなのですね」 「...え?」 雪菜の発した言葉が理解できない。自分は、蔵馬のことを好き? 「そ、そんなんじゃないですよ。南野くんは、あ、蔵馬さんのことです。南野くんは仲のいい友達ですよ。 別に好きとかそういうんじゃないですよ」 「そう、ですか?」 「そうですよ!」 はははと笑って自身の淹れたお茶を口にする。 少し苦かった。 夕飯の時間があるから、と雪菜は遅くなる前に帰ってしまった。 ひとり残された部屋を見渡す。 いつからだろう。この家を広すぎると感じ始めたのは... ちょっと前まではこの空間が当たり前で、広いとも狭いとも思わない。 部屋を見渡しても蔵馬の存在が所々ある。 リビングのぬいぐるみ。 何故か蔵馬が持参したマイマグカップ。 それ以外にも蔵馬が自分の家で育てた植物の株を分けてもらったし。 いつの間にか、自分の中で蔵馬の占める割合が大きくなってきた気がする。 蔵馬が帰っていった後はいつも寂しいと思ってしまう。 『寂しい』なんてとっくの昔に捨てたはずの感情だった。 寂しい、すなわちそれは誰かと一緒にいたいと思う感情のことだ。 「仲直り、したいな...」 ぽつりと呟く。 独りしか居ないこの家の中では、その呟きすら大きく聞こえてしまう。 自室に戻って鞄から携帯を取り出した。 たった一言『昨日はごめんなさい』を打つのに随分時間が掛かった。そのあと、送信ボタンを押すだけに、同じくらい時間を掛けてしまう。 送信ボタンを押して はベッドにうつ伏せになる。 許してもらえなかったらどうしよう? そう思っていたら携帯がなった。 見ると、蔵馬からだ。 返信にしては早すぎる。 『昨日は、ごめん』 その一言だけのメールがとても嬉しい。 急いで電話を掛けたが、話し中だった。 早く声が聞きたい。 一度通話を切って、後で掛け直そうと思っていたら電話が鳴る。蔵馬からだ。 「もしもし?」 『もしもし、 ?今大丈夫?』 「うん、大丈夫。南野くんこそ、さっき電話してたでしょ?」 『いや、してない..って。ああ、そうか。もしかして も俺に電話掛けた?』 「うん。話し中だったよ」 『俺、さっき にかけたんだよ。そしたら話し中で。でも、もう1回だけ掛けてみようって思って掛けたら繋がったのがコレ』 「ってことは...」 『そう。俺たち同時に電話掛けたんだろうね』 そう言って電話の向こうで蔵馬が笑う。 も笑った。何だか嬉しい。 『メール、届いたよ。ごめんね、俺、何か無神経なことを言ったんだと思う』 「ううん、私の方こそごめんなさい。南野くん悪くないのに。完全な八つ当たりだよ」 1日声を聞かなかっただけで、何でこんなに寂しかったのだろう?声が聞けただけでなんでこんなに心が弾むのだろう? 答えはもう出ている。 自分の鈍さに は可笑しくなって笑った。 |
じれったい2人。
ヒロインは蔵馬への気持ちを自覚していたと思っておられた方も居たかと...
実は分かっていませんでした。
そして、敏そうな蔵馬も同じく。
ああ、じれったい(笑)
桜風
06.12.22
ブラウザバックでお戻りください