| 正門へ向かう途中、
が手を合わせてきた。 「ごめんね、手伝わせちゃって」 「別に。 がホールに居なかったら雪菜ちゃんたちだって行っても面白くないだろう?」 そう言いながら に寄ってきそうな男たちを視線でけん制する。 校舎の外に出ると意外と風も冷たい。 「うわ、この時期にこれって...」 寒そうに首をすくめた を見て、蔵馬は「ちょっと持ってて」と自分の持っているチラシを渡した。 「ほら、コレ着てなよ」 自分の上着を脱いで渡した。正直自分も少し寒いが、 の体には大きい自分の上着は彼女の肌を隠すのに丁度いい。 「え、南野くんだって寒いでしょ?」 「大丈夫。寒いの平気だから」 「でも...」と受けとらなさそうな に 「魔界にはもっと寒いところがあったし、そこに何度も足を運んでたから慣れてるんだ」 と の知らない世界の話をする。そうすれば納得すると思った。実際、そういうと余り強く拒否せずに結局 が折れた。 正門で持たされたチラシ全てを配ったあと、 と蔵馬は寄り道をして帰ることにした。 「凄い、楽しいね。高校の文化祭って」 「勿体なかったね、 。まあ、最後でも楽しめてるから良かったな」 蔵馬の言葉に は「ホントだよ」と言って笑う。 屋台のやきそばを買って食べて、喉の渇きを覚えた蔵馬は「ちょっと飲み物買ってくる」と言ってベンチに を残して自動販売機に向かった。 「南野先輩」 知らない子に声を掛けられる。 「あの、これ。受けとっていただけますか?」 それは赤いリボン。 そういえば、去年もたくさん声を掛けられた。けど、 「ごめん、受けとれないんだ」 そう言って断った。 自分の好きな子や彼女以外の、とにかく付き合うつもりの無い子からのリボンは受けとってはいけない。 つまり、応えるつもりが無い場合は受けとってはいけない。それは彼女を期待させる行為だ。男子のルールはそれ。 だから、蔵馬は去年も誰からのも受けとらずに断っていた。 それが女子の間で噂にならないのが不思議だった。 だから、男子だけのルールの扱いになっている。 ベンチのある場所へ戻ると手持ち無沙汰に は周りを眺めていた。 「お待たせ」 そう言ってあったかいコーヒーの缶を渡す。 「ありがとう」 受けとった は頬にそれを当てて「あったかー...」と言いながら目を瞑る。 「南野くんってさ」 目を瞑ったまま は声を出す。 「南野くんってさ、赤いリボン貰った?」 どきりとした。先程のを見られたのかと思う。別に後ろめたいことなんてひとつもないのに、不思議だ。 「ううん、貰ったことないよ」 蔵馬が正直に答えると は目を開けて蔵馬を見上げた。 「あら、不思議。たくさん貰ってそうなのにね」 と言いながら缶を開ける。 「そう?」 とぼけるように応えて蔵馬は の隣に腰掛けた。 ホール担当の時刻が近づき、戻ることにした。 蔵馬も について たちの模擬店へと向かう。さっき手伝って貰ったお礼に が奢るという話になったのだ。 校舎の中に入ると寒さを感じない。 が上着を蔵馬に返すために脱ごうとしたら制止された。 「ここだと人が多いから、後でいいよ」と言うのだ。確かに、こんな所で服を脱ぐと周りにあたって迷惑になりかねない。 人が少ない自分たちの模擬店の辺りまで借りることにした。 模擬店の前で蔵馬に上着を返してメンバーのもとへ向かった。 「おーい、蔵馬!」 またしても『蔵馬』と呼ぶ桑原の声。 「だから、何度言えば聞いてくれるんですか?」 目が笑っていない笑顔で蔵馬が桑原に迫る。 「う..すまん」 「 さんは?」 「戻っていますよ」 そう言って部屋の中に目を遣る。 裏のスタッフではなくホール。本当に で客を集めるつもりなのだろう。 部屋に入ると交代したばかりの が席まで案内してくれた。 「好きなものを頼んで。今日は私が奢るから」 そう言う。そんなの悪い、と雪菜と蛍子は遠慮していたが、幽助と桑原はありがたいとすんなり奢られる道を選んだ。 結局、雪菜も蛍子も奢られることに了承してメニューを見始めた。 「 さん、どれがオススメですか?」 「そうね、香りがいいのは茉莉花茶で」と一通り勉強した茶の説明を始める。 女の子3人が楽しそうに会話をしている中、蔵馬は幽助に 「今日は仕事ないんですか?」 と聞いていた。 幽助は「仕事はあるにはあるけど、蛍子に連れてこられたし、約束していたし」と返事をしていた。 そうこうしているうちに、注文を終えて が下がっていく。 たちの店は文化祭の模擬店だと言うのに中々しっかりしていて物も揃っていた。 雪菜たちも満足して帰っていった。 蔵馬もさすがにずっと の側に居るなんてことは出来ず、ひとりで文化祭を回っていた。 回っているというか、人が少ないところを探して校内を歩いていた。その間も何人からか赤いリボンを差し出された。 それを全て断ってやっとたどり着いたのが屋上である。 寒い屋上には人が居ない。 一応、人が来る可能性もあるので給水タンクのあるところまで登っておいた。 「ふぅ」と溜息を吐いて給水ポンプに凭れて座る。 上着のポケットに手を突っ込むと何か心当たりの無いものがあたる。 取り出すと赤いリボン。 一瞬眉間に皺を寄せる。一体誰が? 一応、自分だって男子ルールに則って行動をしているのに... そんなことを思ったが、自分が制服を着ているときにはポケットにそんなものを入れられる人間なんて居るはずがない。 それに、自分を名乗らないと返事のしようが無いし... そう考えていてはたと気付く。 自分に気取られず、しかもそのリボンをポケットに入れたと名乗る必要も無い女子が1人だけ居た。 だ。 蔵馬は反射的に口を手で覆う。何だか、もの凄く嬉しい。反面、先手を取られた気分だ。 早速左手の薬指にリボンを結んだ。 後夜祭になるまで此処で時間を潰そう。蔵馬は目を閉じ、文化祭の喧騒を遠くに聞いていた。 |
ヒロイン、一応蔵馬に想いを届けました。
だまし討ちっぽいですけど(苦笑)
蔵馬もソッコー自分の薬指にリボンを巻きましたよ。
と言うわけで、『薔薇姫の恋』は次回でお終いです。
桜風
06.12.27
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