| 蔵馬が部屋を出て行ってから
は落ち着かなかった。 蔵馬の制服の上着のポケットにナイショで赤いリボンを入れておいた。 面と向かって渡す勇気がなかった。 蔵馬にとって、自分はただの友達でそれ以上の者ではないかもしれない。いや、その確率の方が高い。 「ちょっと早まったかも...」 自身の行為に少しだけ後悔する。 「あ!でも、私だって気付かないかも。いや、でも...」 ずっとぶつぶつと何か呟いている を、一緒のシフトに入っていたメンバーは気味悪がった。 薔薇姫、ご乱心。 模擬店の方は盛況だったため、早くものが無くなり予定よりも1時間早く閉店を迎えた。 お陰で後夜祭までに片づけが全部済んでしまった。 片づけがすまなかった場合は明日、学校が休みでも出てこなければならなくなる。 買出し組が模擬店から色々購入してきて早めの打ち上げをする。 初めての文化祭は、とても楽しいものとなった。 後夜祭ではグラウンドでキャンプファイヤーが行われている。 は辺りを見渡した。 が、探している人物は見つからない。 後夜祭は強制ではないため、帰ったのかもしれない。 そもそも の赤いリボンだって気付いていないかもしれないし、名前なんて書いていないのだから誰のものか分からない。 そう思うと何だか気が楽になった。 「なーんだ」 一言呟く。 ちょっとだけ残念な気もしたが、これで良かった。はず... そんなことを考えているとポケットに入れていた携帯が震える。学校なのでバイブに設定していた。 開けると蔵馬からのそれで、『旧校舎の屋上』と一言書いてあった。 そこに来い、ということなのだろう。 旧校舎に入って屋上を目指す。 残っていたのに後夜祭に出ないなんて珍しいな、と思いながら階段を上って屋上まで辿りついた。 ドアを開けるとグラウンドが見える。 近くで見るとそれなりに迫力のあるキャンプファイヤーも小さくて可愛く見える。 は屋上を見渡したが、人影が無い。 携帯を開けて先ほどのメールを確認する。やはり『旧校舎』と書いてある。 「おっかしいなー」 「 、こっち」 上の方から声がした。暗くて見えないが、蔵馬の声だ。 「南野くん?」 「そう。こっちに上がってこれる?」 梯子に足を掛けて登っていく。スカートがちょっと邪魔だ。 蔵馬の手に捕まって同じ高さまで登った。 「空が近い!」 見上げて が声を上げる。つられて蔵馬も星空を見上げた。 「凄いねぇ」と感心しながら は空を見上げたままだった。それは、不自然なほどに。 それに気付いた蔵馬は内心苦笑する。 「 」 「んー?」 「こっちを向いて」 空を見上げたまま返事をする の顔を自分に向ける。 向かい合う形になって の視線は彷徨い始めた。 「 だろ、これ」 そう言って蔵馬は左手の薬指に結びつけた赤いリボンを見せる。 「え、いや。あのー...」 「ちゃんと、自分で渡してくれないと。他の子だったらどうしようかと思ったじゃないか」 「えー...ごめん」と本当に申し訳なさそうに は俯く。 しかし、 はこんな至近距離で蔵馬が何処にそのリボンをつけているか分かっていないのだろうか? 「 、こっちを見て」 蔵馬に言われて顔を上げる。そして、目に留まったのは、蔵馬の左手の薬指。 一応、それが左手かどうかちょっと考えてみた。左手だ。 「男子のルール。応えるつもりが初めからない場合はリボンを受けとることすらしない」 知らなかったとは言え、 は蔵馬の制服のポケットに潜ませてしまった。見事にルール違反だ。 「ごめん、知らなくて」 「いいから。最後まで聞いて」 頭を下げる に優しく声を掛ける。 「そして、それに応えるときは左手の薬指にそのリボンを結んで返事をする」 そう言って蔵馬は自分のリボンを解いた。 ということは、つまり。 は自分が振られたんだと思った。 何せ、自分があげたと分かったリボンを解かれたのだ。 消えてなくなってしまいたい、と思っていると蔵馬に右手を取られた。 驚いて見上げると 「そして、そのリボンを告白してくれた子の左手の薬指に結ぶ。これが、男子のルール」 そう言って蔵馬は の右手の薬指にリボンを結んだ。 「あの、こっち右なんだけど...」 言いにくそうに が言う。 「分かってるよ。でも、そっちにはいつかちゃんとしたのを嵌めてもらいたいからね」 蔵馬がそんなことを言う。 「俺も、 のこと好きだったんだよ」 蔵馬の言葉を聞いた は勢いよく蔵馬に抱き付いた。 「嬉しい」 篭った声が聞こえる。 それに応えるように蔵馬は を抱き締める。 「俺も、凄く嬉しかったよ、 」 そう言って体を離して の瞳に溜まった雫を優しく拭いてやる。 そして、唇に触れるだけの優しいキスをした。 薔薇姫の恋は、瞬く星空の元で花を咲かせた。 |
蔵馬、さり気なく凄いことを言い切ってます。
ああ、大胆(笑)
でも、こういう余裕綽々なところがあってこその蔵馬かと...
薔薇姫の恋は花開きました。
ありがとうございました!
桜風
06.12.28
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