| 食事を終えて、テレビゲームで対戦する。 どのゲームでも は蔵馬に対抗できず全て負けた。 「じゃあ、負けた方は勝った方のいうコトを聞くってコトだったよね」 何もなしにゲームをしても楽しくないかもしれない。ということで、 が提案したのだが。 何となく予想が出来なくもなかっただろうその状況に陥る。 「お手柔らかに...」 「 って今度の彼岸、お墓参りに行く?」 「誰の?」 素でそんなことを聞き返してしまった。 「あ、お母さんたちの?」 「そう」 それ以外にあるのかと少しだけ焦った。 「うん。春休み中に行くよ」 「じゃあ、それ。俺も一緒に行きたいな」 蔵馬の申し出に、 はゆっくり首を傾げる。 「お墓参りしたいの?」 「うん、したい」 「いいけど、遠いよ?」 「そうなんだ?」 「うん。だからお彼岸とお盆。年に3回くらいしか行ってないの。お寺は幻海さんの紹介と言うか、知り合いらしいんだけど、そこに入れてもらったんだ。凄くお墓の手入れしてくださっててありがたいんだけど、遠いのが玉に瑕なんだよ電車で片道2時間かかるところにあるんだ」 幻海師範の紹介なら、徳の高い僧侶が居そうだな、と思った。 「じゃあ、車で行こう。折角だし、車の方が楽だよ、きっと。その寺の住所分かる?」 蔵馬に言われて、 は「地図地図〜」と言いながら部屋に帰っていく。 少しして戻ってきた は地図を広げて此処だよ、と指さし、住所の書いてあるメモを見せる。 住所と寺の名前を頭に入れて、蔵馬はそのメモを返し、地図を眺めた。 「うん、分かった。じゃあ、調べておくよ」 「ありがとう!うわ、楽しそう」 嬉しそうに は顔を綻ばせる。 そんな に微笑んで、蔵馬はまた地図に目を落とした。 その間に、と思い は台所へと向かい、コーヒーを沸かす準備をする。 冷蔵庫から先ほど購入したケーキを取り出し、ついでにチョコペンシルも取り出す。 ホワイトチョコのプレートに、『誕生日おめでとう、南野くん』とまで書いて手が止まる。 「ねえ、南野くん」 「何?」 顔を上げると が台所で何かしている。 「クラマってどういう字?」 「俺の名前?」 「そう。鞍馬寺と一緒?」 「違うよ。蔵に馬で蔵馬」 空に字を書いて説明する。 何故そんなことを聞くのだろう、と思って立ち上がろうとすれば、 「まだ立ち上がっちゃダメ!」 と怒られた。 まあ、後で分かるのかと思い深く追及しようとはしなかった。 一方 は先ほどの『誕生日おめでとう、南野くん』に続けて『蔵馬さん』と続けた。 これだけでは物足りない。 うーん、と悩んでプレートの裏を見る。 まあ、いいか。とその裏にもメッセージを添える。 こちら側はクリームがついて読めなくなるかもしれないけど、自己満足でいっか... プレートのメッセージを記入したところでケトルが鳴きはじめる。 火を止めてコーヒーを入れて、テーブルにケーキとロウソクと共に移動した。 「南野くん、いい?」 「うん」と言って立ち上がり、テーブルに乗っているケーキを見れば、何だかくすぐったい。 チョコのプレートの字は のそれで、ああ、だからさっき俺の名前を聞いたんだと納得する。 『南野秀一』が誕生日を祝われたことはあるけど、『蔵馬』にはそれはない。 その目の前で はケーキにロウソクを挿している。それに火をつけて、部屋の電気を消して「はっぴばーすで−とぅーゆー」と歌い始める。 歌い終わると蔵馬はその火の点いたロウソクを全て一息で吹き消した。 ぱちぱちと が嬉しそうに拍手をして電気を点ける。 「これ、2人で...?」 「い、いえす」 もう少し小さいのにすれば良かったと後悔しつつも は頷く。切り分けてそれぞれの皿に載せた。 もちろん、蔵馬のケーキにはメッセージ入りのチョコプレートを載せる。 テーブルの上にフォークがないのに気付いて「フォークフォーク」と言いながら が席を外した。 その隙に蔵馬はプレートをひっくり返す。何となく、先ほどちらりと何かが見えたのだ。 裏に書いてある文字を見て、思わず手を口元に運ぶ。放って置いたら口元が緩んでしまう。 『大好きだよ』 たったその一言で、心が温かくなる。嬉しくなる。 そっと元に戻したところで が誇らしげにフォークを2つ持ってきた。 「お待たせしました、フォークです」 戻ってきた に手渡されたフォークでひと口食べればチョコレートの香りが口に広がる。 はそんな蔵馬を見つめて微笑む。 「何?」 「南野くんは甘いものも平気だから嬉しいなーって。一緒に私が美味しいって思えるものを食べれるでしょ?」 幸せそうにチョコレートケーキを頬張る 。 その光景に幸せを感じる自分に思わず「丸くなったな...」とセルフツッコミを入れてしまう。 結局、2人は頑張ったけど夕飯の後だというコトもあって全部平らげることは出来なかった。 の提案により、蔵馬の家に持って帰ってもらい、家族に食べてもらおうというコトになった。 帰る前、蔵馬が聞く。 「ねえ、 。今日で俺がいくつになったか知ってる?」 南野秀一とは同じ年のはず。ならば、蔵馬のことだろうか? 「蔵馬さんのこと?」 確認すると、 「ううん、俺のこと。南野秀一のこと」 と言う。 何だ?もしかしてひとつ上とか?ああ、だからこんなにも落ち着いているのか...? そんなことを思いつつ、一応、さっきまでの認識のとおり 「18歳じゃないの?」 と答えた。 「そう、18歳。つまりね」 一度言葉を区切る。 そして、 に近づき、 「もう、 をお嫁さんにもらえるんだよ」 と耳元で囁く。 その色っぽい声に背筋がぞくっとして思わずその場にへたった。腰が立たない。 そんな をくすくすと笑い、蔵馬も膝をつく。 「じゃあ、また電話するね」 いつものようにキスをして帰っていく。 残された は真っ赤な顔で、暫くその場で放心していた。 |
蔵馬誕生日後編。
「お嫁さんに〜」を言ってもらいたくて、誕生日をお祝いしたようなものです。
蔵馬に耳元で囁かれたら腰が立たなくなっても仕方ないと思います。
桜風
07.3.7
ブラウザバックでお戻りください