| 魔界への第一歩を踏み出した
の目の前には、宙に浮いている男の子が居た。 頭に角が生えて耳がとがっている、八重歯がチャームポイントの赤い髪をした少年。 「こ、こんにちは」 思わず挨拶をする に少年は 「礼儀正しい子だべ」 と言ってにこりと微笑み、 「よく来たな。オレは陣だ。おめぇは蔵馬の女だろ?」 そう言われて は蔵馬を見上げる。 「陣...」 窘めるように陣の名前を呼ぶ蔵馬に知り合いだと安心した は改めて陣と名乗った少年を見る。 「えーと、初めまして。 です。蔵馬さんのお友達ですか?」 の言葉に陣はきょとんとしてそして破顔する。 「そりゃ、もう。蔵馬とは..ムガッ」 何か言葉を続けようとした陣だが、突然口を塞がれて言葉を口に出来ない。 陣の口を手で覆った蔵馬は陣の耳元で「 に余計なことを言ったら、どうなるかくらい分かるな?」と爽やかに脅しに入った。 陣は取り敢えずコクコクと頷き、それを見て蔵馬に開放された。 「秀一?」 「ああ、何でもないから」 突然の蔵馬の行動に が声を掛けると爽やかな笑顔を浮かべてそう言う。 黄泉から聞いていたが、本当に変わったなと陣は小さく笑う。 「んじゃ、案内するな」 陣の言葉に蔵馬と は顔を見合わせる。 「どういうことだ?」 蔵馬が聞くと 「ああ、黄泉から頼まれたんだ。蔵馬が女連れて魔界に来るから癌陀羅に連れて来いって。泊まるなら黄泉の屋敷の部屋が空いてるからって」 蔵馬は思わず天を仰ぐ。 そう来たか... そんな蔵馬の様子に気付いていながらも楽しそうだから、という理由で陣は風を使って と蔵馬を浮かす。 「え、何?」 驚いた は蔵馬の腕を反射的に掴む。 「大丈夫だから」 そう言って蔵馬は の髪を撫で <絶対に落とすなよ> と人間には聞こえない音域で陣に声を掛ける。蔵馬の声が届いた陣は小さく肩を震わせながら笑いを堪えてそのまままっすぐ癌陀羅に向かった。 陣の風に乗って仕方なく向かった癌陀羅へはあっという間に着いた。 最初こそビックリしていた だが、すぐに慣れたもので、下の方を見下ろして『風に乗る』という珍しい行為を楽しんでいた。 「ここだ」 そう言ってふわりと地上に降りる。 蔵馬が釘を刺したこともあってか、少しばかり丁寧な風の動きだった。 「ありがとうございます。とても楽しかったです」 が深々と頭を下げると陣は少し照れたように人差し指で頬を掻いて、 「別にどうって事ないべ」 という。 「また、風に乗りたいって思ったら声掛けてくれよな」 そう言って陣はまた空に向かって行った。 「凄いね」 陣の飛んでいった方の空を見上げて は呟く。 「そうだね」 相槌を打ちながらも蔵馬は何とかこの場を早々に去りたいと、往生際の悪いことを考えていた。 が、そんな蔵馬に嫌がらせをしたくて此処に招いた黄泉がそれを許すはずもなく 「蔵馬」 と態々屋敷から迎えに出てきていた。 思わず蔵馬は小さく舌打ちをする。 またしても知らない人が現れ、 は蔵馬を見上げた。 今度は誰だろう? 「...黄泉」 諦めて蔵馬は黄泉の相手をすることにした。たぶん、 には適当に誤魔化しきれない。 「こちらが、蔵馬の大切な人、 さんか?」 分かっているくせに態々聞いてくる黄泉に少しだけ眉を顰めて 「ああ、紹介しよう。 さんだ。 、こっちはこの間手紙を寄越した妖怪。黄泉だ」 <ふざけた事をするなよ> に黄泉を紹介しながらも蔵馬は黄泉に釘を刺す。 「初めまして、黄泉といいます。こちらに滞在されるのでしたら、この屋敷をお使いください」 黄泉は に挨拶をしながらも <本当に変わったな、お前は> と蔵馬と会話をする。 「あ、あのお手紙の。蔵馬さんのお友達!初めまして、 といいます。...蔵馬さんとは仲がよろしいのですか?」 の素朴な疑問に黄泉は噴出しそうになるのを堪えながらにこりと微笑み 「ええ、親友です」 といけしゃあしゃあと答えた。 蔵馬のこめかみがピクリと動く。それを感じ取った黄泉は楽しくて仕方がない。 「とにかく、屋敷の中へどうぞ。お茶でも飲んでいってください」 そう言って黄泉が勧めるものだから、 は蔵馬を見上げてみた。 <毒を入れる予定は無いぞ> 黄泉の声が聞こえ、蔵馬は溜息を吐く。 断ったらきっとこれ以上の嫌がらせが待っている。 「ご馳走になろう」 諦め顔の蔵馬に首を傾げながら は頷き、 「じゃあ、お邪魔します」 と答えた。 |
陣は早速凍矢たちに蔵馬の彼女について喜々として語ります。
ノリがいいのは酎と鈴駒。鈴木は意外に大人な反応を示してくれそう。
桜風
07.10.28
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