初詣(前編)





冬休みに入って自動車の教習所に通うようにした。

年が明けたらまたすぐに学校が始まるが、それもほんのちょっとで3年は自由登校となる。

それなら、冬休みから通い始めても構わないだろうというコトで、のんびり通うようにした。

元々反射神経、運動神経共に秀でている蔵馬に苦はなく、寧ろ誕生日までまだ日がある事の方が苦だった。

昼間は自動車教習所。夕方からは、毎日補習がある
の夕飯を作りに通っていた。そんな蔵馬に「鍵を渡したのは失敗だったかなぁ」と困ったように は呟く。


そんな年の瀬が迫ったある日。夕食を食べていると
の携帯が着信を告げる。

蔵馬を見ると、電話を出るように促され、通話ボタンを押した。蛍子からだ。

「もしもし」

『もしもし、
さん?今大丈夫ですか?』

「うん、大丈夫。久しぶりね、元気だった?」

『ええ。ところで、
さん。初詣、何か考えてますか?』

「えーと、今のところ全然。何?」

『一緒に行きません?雪菜ちゃんと話しててそうなったんですけど。
さんもどうかなって?』

蔵馬が声を出さずに「何?」と聞いてくる。
も蔵馬に倣って声を出さずに「初詣」と答えた。

蔵馬は頷き、「行こうよ」とやはり口だけの返事。

それに頷いた
は「行きます」と答え、『じゃあ、また時間とか決まったらメールしますね。蔵馬さんにも声を掛けておいてください』と蛍子に言われて電話を切った。

「『蔵馬さんにも声を掛けておいてください』だって」

「わかった」と笑いながら蔵馬は頷く。


父の会社も年末年始の休業となり、家族全員で過ごす時間も増えてきた。自動車教習所ももちろん休みとなっているため、日中の蔵馬は結構暇な時間が増えた。

とは言え、その大半は大掃除に費やされ、いい加減毎日通おうものなら
に鍵を取り上げられそうな勢いだったので、家で過ごす時間が格段に増えた。

「そういえば」と夕食時に蔵馬が話を切り出す。

「俺、初詣は明日友達と行くから」と告げると母が、

さんも一緒でしょ? さんは初詣の後、何かご用事あるのかしら?」

と聞いてくる。

「さあ?聞いてないけど。え、どうしたの?」

さんって1人暮らしって言ってたでしょ?もし、良かったら家で御節食べないかしら?」

と、言うのだ。

確かに、玄海師範のところに行きそうもないし、もしかしたら独りで過ごすつもりなのかもしれない。

「じゃあ、聞いてみるよ」

そう言って「ごちそうさま」と手を合わせて食器を洗い自室に戻った。


『もしもし』

自室に戻った蔵馬は早速
に電話を掛けた。のんびりとしたマイペースな の声は、やはり落ち着く。

?明日、というか明後日のことだけど」

『何?』

「初詣が終わったあと、俺の家に来ないか?母さんが御節食べないかって言ってるんだ」

少し絶句した感じの


『え、いや。悪いよ』

「こっちが言い出したことだから、全く何処にも『悪い』ってのはないと思うんだけど...?」

『いや...』

「それとも、何か用事でもあった?」

『ないけど...』

「じゃあ、決まり。あんまり長居しなくて良いように俺もフォローするから。一度会ってみてよ、俺の家族に。皆
に興味あるみたいだからさ」

それは何故でしょう?と聞きたいけど、何だか怖くて聞けなかった
は黙り込み「じゃ、決まりね」と蔵馬にトドメを刺されて撃沈した。


待ち合わせ場所には、
と共に行こうと思っていたが断られた。

予想外の出来事に少しへこむ。そしてバイクも乗らないように、と言われたのだ。人が多いけど、バイクならその間を縫って移動できるから便利なのに、と思いつつも
に言われたとおり現地に電車で向かった。

待ち合わせ場所に着いたら男しか居ない。

「久しぶり」

幽助と桑原に声を掛ければ、2人はそれぞれ言葉を返す。

「蛍子ちゃんと雪菜ちゃんは?」

それぞれ一緒に居るであろう人物の事を聞けば、2人とも知らないと言う。蔵馬と同じく現地集合を言いつけられたのだ。

少し待っていると「幽助ぇーーー!!」と蛍子の声が聞こえた。

そちらを見ると着物の一団がやってくる。

「ゆ き な さ〜ん!」

奇声に近い歓声を上げて桑原が走っていった。

と目が合った蔵馬が微笑むと彼女は恥かしそうに俯いた。足早に に近づく。だから、現地集合でバイクも禁止だったのだ。

「綺麗だよ、


と恥かしげもなく言う蔵馬に対して


「着物がね!」

と返す。

「そうじゃないよ」と今の
がいかに綺麗で可愛いかを詳しく説明しようとした蔵馬は の様子を見てやめた。

恥かしくて仕方ない、というオーラを出している
にそれをしたら居た堪れなくなって帰って行きそうだ。

自分も結構
の扱いに慣れたものだ、と思いながらも と共に神社に向かった。

なるべく
を人の波にさらさないように庇いつつ歩いていたが、それでも、結構大変のようだ。

、大丈夫?」

「うん...」

あまり大丈夫そうな声ではない
を心配しつつ足を進めた。

ちなみに。既に他のメンバーとはわざとはぐれていた。



ちょっと遅れての初詣です。
桑原氏の『ゆ き な さ〜ん!』は、例えるなら
ワンピのサンジ氏がナミさんの名前を呼ぶような感じで。
そんなイメージです(笑)


桜風
07.1.10


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