| 翌日早々、癌陀羅を後にした。 すぐに帰ってもいいのだが、折角来たついでだと思って帰るのはもう少し後にする。 道行く妖怪に話を聞いて向かった先が移動要塞百足だった。 噂を頼って向かっても移動するため、見つかるか分からない。 実際、既に1箇所空振った。 まあ、無理に今日会わなくてもいいかなと思っているところに見慣れた人影、じゃなかった、見慣れた妖怪の姿を見つけた。 「久しぶりですね」 声を掛けるとその妖怪は振り返る。 「珍しいな、お前が魔界になど」 少し口角を上げて彼が言う。 確かに、まあ。久しぶりだし珍しいとも思う。 「寂しかったですか?」 イタズラっぽく笑いながら蔵馬がからかうと 「そんなわけ無いだろう」 半眼になってまともに応えられた。 冗談だったのに睨まれてしまった。 「忙しそうですね」 目の前には人が倒れていた。 時々魔界に迷い込む人間が居る。 飛影はそんな人間たちを人間界へ送り返す仕事をしている。魔界の記憶が残っていては少々面倒くさいことになる。だから、飛影の邪眼で記憶を消しているのだが、時々それが効か無い人間も居て、先日はテレビで宇宙人として飛影が紹介されていた。 はそれを見た途端ぽかーん、と口を開けて画面に見入っていた。一応、 と飛影は顔馴染みと言っても支障はないくらいの知り合いだ。 「ねえ、秀一のお友達って。宇宙人だったの?」 真顔で聞かれて噴出した事を思い出す。 「何を笑っている」 不機嫌な声が耳に届き、蔵馬が見下ろすといつもより少しだけ機嫌の悪そうな元相棒の顔があった。 「いえ。貴方は人間界では宇宙人になってしまったんですよ。それを思い出してしまったんです」 自分が思い出し笑いをしていた事に少し驚きつつもそう返すと飛影はふん、と鼻を鳴らす。 「パトロール中ですか?」 今更だが、今の彼の状況を聞いてみる。 「さっき終わった」 「そうですか。躯は元気ですか?」 「...」 何も言わずに飛影は蔵馬を見上げる。何処と無くやはり怒ったように。 「痴話喧嘩中ですか?」 「黙れ」 少し鋭くそう言われて蔵馬は肩を竦める。 からかうのはこれくらいにしておこう。 「で、お前は?」 「ああ。黄泉に脅迫状と言う名前の招待状を貰ったので。久しぶりに来てみたんです」 飛影は呆れたように溜息を吐く。 「相変わらず好かれているようだな」 「ええ、困った事に」 蔵馬は苦笑いを浮かべて頷いた。 「そういえば、」 と突然話題を変える。 「雪菜ちゃん、元気ですよ」 飛影は少し驚いたように蔵馬を見上げ、「そうか」と呟く。 「まあ、貴方の望みどおりにお兄さんは亡くなったと話してますからね。もう探してませんよ、きっと」 「別に、そんなこと気になどしていない。どの道、アイツの兄は居ないのだから」 飛影の言葉に「はいはい」と蔵馬は適当に心の中で相槌を打つ。 兄は居ないのに、兄みたいにもの凄く心配する人はいるんですね。そんな言葉を飲む。 「でも、まあ。飛影も元気そうで安心しました」 蔵馬が少し伸びをしながらいう。 「誰か、俺の元気がないと言ったのか?」 「いいえ。でも、久しぶりに友達に会うとそう思うものですよ」 そんな蔵馬の素直すぎる言葉に飛影は眉間に皺を寄せる。気味悪い。 「変わった..か?」 「俺ですか?まあ、結構そう言われてますよ。特にここ1年くらい」 にこりと笑い、「じゃあ、今日は帰ります」と蔵馬は飛影に背を向ける。 「ああ、またな」 飛影の言葉に蔵馬は驚いて振り返る。 「何だ?」 「貴方も十分変わりましたよ。また近いうちに来ます」 そう一言言って蔵馬は跳ねた。 人間界へ繋がる穴へ向かってそのまま駆ける。 ああ、お土産。何か持って帰ればよかったかな? そんなことを思いながら蔵馬は魔界の空を見上げた。 やはり美しいとかそんな感想は皆無だ。 「ホントに、何も無いんだけどな...」 顔を顰めてそう呟く。 こんな空を見上げて本当に喜んでもらえるのだろうか? そんな心配を抱えながら蔵馬は青い空の広がる人間界へと向かった。 |
飛影ってどんな子だったっけ?
結構丸くなったイメージはあるけど、刺々しさは必要ですよね。
桜風
07.8.22
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