クリスマス(前編)





カレンダーが今年最後の月に変わってから、蔵馬がカレンダーを見て目を瞑って何かを諦めているような様子を何度か目撃した。

何となく何を思っているのか見当がつく。

12月の半ば、学校から帰る途中に話してみることにした。

「ねえ、南野くん」

「何?」

「クリスマスってご家族で過ごすの?」

「え?」

ずっと自分が気にしていたことを聞いてくる。

「いや、別にこれと言って決まってないけど...」

「そう。じゃあ、24日か25日空いてる?」

「うん」

「お出かけしましょう」

がそういうと

「え、でも、勉強は?」

「いつもやってる。たまの息抜きくらいさせてよ」

そう言って笑う。

蔵馬としても、『恋人たちの日』などと言われているクリスマスを共に過ごしたいと思っていた。でも、
は大学に行ってやりたいことだってあるしそれを妨げる存在にはなりたくなかった。

「どっちにしようか?さすがに両方は、ちょっとね...」

「じゃあ、24日。大丈夫?」

「いいよ。ただ、補習授業が終わった後だから夜になっちゃうけど。ちょっと時間短いね」

「大丈夫だよ」

蔵馬がそう答えて微笑む。

こんな蔵馬の笑顔は学校では見られない。いや、
以外には見ることが出来ないものだ。

私って、得だよなー、と思いながら
は蔵馬に笑顔を返した。


の家には土曜日の午後に行くから時間があるのは午前中くらいしかない。

色々と考えてみたが、
へのプレゼントは時計にすることにした。

アクセサリーを考えたが、
の性格上学校に着けていかないだろうし、下手したら没収されるかもしれない。

それはイヤだ。

時計なら普通に着けていても学生に相応しくないとかで没収されることもないし、
がその気ならずっとつけてもらえる。

デザインも何となく頭に浮かんだものがある。華奢な
に合う、でも機能的で。

それを求めて蔵馬は店を巡った。


クリスマスを一緒に過ごすというコトで、
は蔵馬へのプレゼントに悩む。

男の人がどんなものを好きかなんて知らない。

父親以外の者にプレゼントなんてしたことがないし、興味がなかったから知識もない。

マフラーや手袋等を考えたが、寒いのが得意と言っていた蔵馬にはあまり必要ないものかもしれない。今でも、ステキなものを身に着けているのだから新しいのは要らないだろうとも考えてしまう。

「男の人が貰って嬉しいものって何さ!」

ブツブツと文句を言う。

が、思い出した。

時計だ。腕時計。蔵馬は以前時計をつけていたらしいが、壊れてしまってもう着けていないと言っていた。


昔時計をつける習慣があるなら、今でも時計を着けるのが苦にはならないだろう。

「そっかー。時計が良いんじゃん」

目的を見つけた
は、店に向かって足を進めた。


24日は、なるべくスカートは履かないようにと言われて
は服を考える。

まあ、そもそもスカートなんて殆ど持っていないから限られてくるのだが。蔵馬はスカートが苦手なのかと心のメモ帳に記しておいた。

今朝メールで『PM6:00にマンションの下にいて』と送られてきたので時間の少し前に下りておいた。

しかし、マンションの入り口にはバイクに乗った人しか居なかった。ロビーから出ずに回りの様子を伺う。

蔵馬は待ち合わせをすれば時間前に来る人だ。

家を出る前に何かあったのだろうか?

気になって電話をする。すると目の前に居たバイクの人も携帯電話が掛かってきたらしく取り出していた。

『もしもし?』

「あ、南野くん?
です」

『うん。どうしたの?』

「いや、あの。今何処?」

電話に夢中で気付かなかった。マンションの前でバイクにまたがっていた人がロビーに入ってくるのを。

「此処だよ」

すぐ傍で声が聞こえてビクリと肩を震わせる。

見上げるとさっきバイクにまたがっていた人が居た。今はヘルメットを取っている。

「南野くん!?」

「そういうこと。何で気づいてくれないかなー」

イタズラっぽくそういわれた。
としては居心地が悪い。

「冗談だよ。ビックリした?」

「うん。かなり...」

「本当は車が良かったんだけどね。俺、誕生日まだだから取れないんだ。免許取ったら車でどこか一緒に行こう?」

うん、と頷く


なるほど。だからスカートではない方が良かったのか...

バイクに戻り、
にもヘルメットを渡す。

「寒いかな?」

の格好を見て蔵馬は呟く。

「大丈夫だよ、たぶん」

がそう言うので、着替えさせることなくバイクにまたがった。

「しっかり掴まってて」

ヘルメット越しにくぐもった声が聞こえる。

「うん!」

頷きながら返事をして蔵馬の体に力いっぱい自分の腕を絡ませた。

蔵馬の背中のぬくもりに安心する。

両親が亡くなって以来、こんなに安心したことがあるだろうか...?

少しだけ昔を思い出しながら蔵馬の背中に身を委ねた。


ヒロインと蔵馬のラブラブな日常です。
季節外れですが、クリスマス。
後編があります。


桜風
07.1.3


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