薔薇姫の戸惑い1





霊力が抑えられて多少気を抜くことが出来るようになった はこの日、買い物に出ていた。

先日、幻海が下山したときに同窓会のノリで『浦飯チーム』が揃った。

その集まりにきていた蛍子と静流と雪菜という友達が出来た。

一緒に遊ぼうという話になったが、携帯を持っていないと話すと購入することを勧められた。

勿論彼女たちは強く言わなかったが、連絡が取りやすいというのは持っていない
でも知っている。

しかし、携帯をもったことの無い人間が一人でそれを買いに行くというのは正直腰が引けるし不安でもある。

そのことを話すと蛍子が付き合ってくれることになった。


昨夜、珍しく
が蔵馬に電話を掛けた。内容は翌日の蛍子たちとの買い物についてだ。

「ど、どうやったらいいのかな?」

珍しい電話の内容がそれであることに内心苦笑をしながら

「普通で良いよ」

と答える。

「普通って何!?」

切羽詰った
の声に蔵馬は笑いそうになる自分を抑える。

「だから、この間のような格好で財布と鞄を持っていけば問題ないよ」

「ホントに?」

「本当に。大丈夫だから楽しんでおいでよ」

「南野くんってさ。言葉に説得力があるっていうか...なんか不思議」

「そう?」

「うん。なんだろう。南野くんが大丈夫って言ったら大丈夫って気がするわ」

少し明るい声の
にクスリと笑う。

きっとさっきから
は電話の前で百面相をしているはずだ。

。蛍子ちゃんは面倒見がいいし、本当に気を遣うことはないと思うから楽しんで来なよ」

「ありがとう。ごめんね、変な電話につき合わせて」

「いや、いいよ。あ、携帯だけど。買ったらちゃんと連絡くれよ。登録するから」

ついでに、自分が使っている携帯会社を教えて蔵馬は電話を終わらせた。


翌日、
が待ち合わせ場所に向かうと既に蛍子が居た。

「ごめんなさい、雪村さん」

「ああ、気にしないでください。まだ来ていない人も居ますから」

そんなことをいう。

あのときの話では、蛍子と2人でという話だったが、まだ増えるとな!?

「え、と。誰?」

「ほら、この間居たでしょ?雪菜さん。静流さんも一緒に来るって言ってたけど...
あ、来た。静流さーん!雪菜さーん!!」

人ごみに向かって手を大きく振る。

すると長身の女性が手を軽く挙げ、隣にいる子は少し駆け出す。

「すみません、遅れました」

「家を出るときにウチの馬鹿が騒ぎ始めたから足止め食っちゃって」

雪菜の言葉に静流が言い添える。今日の雪菜は和装ではなく洋服だ。

「雪菜さん、人間界の勉強をしているでしょ?社会見学っていうか。それで、ついでに携帯も持っちゃったら?って話になって」

頭に『?』が浮かんでいる
に蛍子がそう説明する。

「ああ、なるほど」

合点がいった
は頷いた。

さて、これからどうするんだろう?


まずは目的のもの、携帯電話を購入することとなった。

「蔵馬君は何処の会社なの?」

昨日聞いた会社を言うと、「ふぅん、もうアピール済みなんだ...」小さく笑いを含んだ声で静流が呟き、蛍子もそれに頷く。

「はい?」

聞き取れなかった
が聞き返すと

「いーや。なんてもないよ。そうね、じゃあ。そこのにしようか。あたしがそこのだから使い方多少は分かると思うし。
雪菜ちゃんも、それで良い?」

雪菜も「はい」と頷く。

和真は違う会社のだけど、どうでもいいしね、と心の中で付け加え、販売店を目指した。


店に入ると、たくさんの機種がありどれがいいのか分からず思わず携帯を睨みつける
の姿があった。

「蔵馬君の使ってる携帯って、どれかわかる?」

静流に聞かれて思い出す。

店内を見渡して、目に入ったそれに近づいた。

「たぶん、コレです」

「じゃあ、コレと同じメーカーにしよう。使い方がわかんなかったら蔵馬君に聞けば良いし。雪菜ちゃんはあたしとお揃いにしない?」

弟の悔しがる表情を浮かべて心の中でにやりと笑った静流の提案に「はい」と雪菜は頷き、
も同じく頷いた。


静流が仕切ってくれたお陰で携帯電話を購入するのは簡単に終わった。

まだ人ごみに慣れていない雪菜に合わせて少し休憩する。

ついでというコトもあって、静流と蛍子も機種変更をしていた。

カフェで4人が携帯の取説をパラパラと捲る。

中でも、
と雪菜はさっぱり分からない様子だ。

「そういえば、早速蔵馬君にメール打ったら?アドレスと、電話番号を書いてさ」

ケーキを食べようとフォークを指したところで静流にそういわれた
は「あ、はい」と言いながら慌てて携帯を取り出す。

「蔵馬さんのアドレスわかるんですか?」

隣に座る蛍子に聞かれて鞄を開く。

丁寧にたたまれたメモを取り出して広げた。

「持って来ましたから」

「用意が良いじゃないのー」とからかうように静流がいう。

たどたどしい手つきでメールを打つ
の姿がほほえましい。

思わず、「絵文字入れちゃいなさいよ」とか「顔文字使ってみましょうよ」と口を出したくなる。

メールを送信し終わった
は一仕事を終えた爽快感を感じながら今度こそゆっくりとケーキを頬張ることが出来た。


薔薇姫シリーズ第2弾。
今度は薔薇姫に戸惑ってもらいます。
取り敢えず、現代の必需品になっている携帯電話。
こちらを購入していただきました。


桜風
06.12.1


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