薔薇姫の戸惑い6





携帯を買いにいく約束をした日の朝は何故か早く目が覚めた。

少し時間が早いが家を出ることにした蔵馬が部屋から出ると、丁度隣室の義弟も部屋から出てきた。

「あれ、義兄さん何処か行くの?デート??」

からかうように笑いながら言う義弟の言葉に少し考えたあと、「そうだよ」と言って階段を下りる。

羨ましがる義弟の声を聞きながら玄関へと向かった。

玄関を出ると庭先で母が庭を整えている。

「母さん、出かけてくるね」

声を掛けると

「あら?デート??」

義弟と同じことを言う。「そうだよ」と義弟に返したように返事をした。

「夕飯は?」

「まだ決めてないなー」

「じゃあ、いらなかったらすぐに電話してね」

「分かった。行ってきます」

そう言って駅に向かって足を進めた。


一方、
も今朝は目が早く覚めたのだが。

「えー、どれにしよう??」

箪笥を開けまくっていた。

正直、楽な格好をモットーにしている
の箪笥の中ににオシャレな感じの服はない。

仕方ない。無いものは無いのだ。

諦めてパーカーにジーンズを取り出して着替える。

いい加減時間が無い。


走って待ち合わせ場所に着くと既に蔵馬の姿があった。

が、少し様子がおかしい。数人の男の人に囲まれている。

これが世に言うカツアゲか!?と思いつつ、何とかしないと、と思って自分を奮い立たせて彼らに近づいた。

段々彼らの声が聞こえる。

「彼女可愛いね。俺たちとどっか行かない?」

はぁ...?

一瞬理解不能な言葉が蔵馬に向かって発せられている。

蔵馬は無表情だが、何だか怒っているようだ。

ちょっと怖いと思いつつも、
は蔵馬に声を掛けた。

「南野くん。遅くなってごめん...」

そう言うと、蔵馬は微笑んで

「気にしなくていいよ。じゃあ、行こうか」

と言ってその輪から抜ける。

「ちょっと待てよ」と言って蔵馬の手を取った男は、次の瞬間その腕を捻りあげられていた。

「勘違いしているようだから言っとくが、俺は男だ」

冷たく言い、その手も離す。

男たちは慌てて逃げていった。

「じゃあ、今度こそ行こうか」

そう言って笑顔を向けた蔵馬に、
は真顔で

「南野くんってモテモテだね」

とのたまう。

蔵馬は、目を瞑って息をひとつ吐いてまた目を開ける。

?」

いつもより心持ち声のトーンが低いし、目が笑ってない。

「ごめんなさーい」と笑いながら走り出す
を蔵馬は追いかけて捕まえる。

「ったく」と少し文句も言いたいが、まあいっかと思い、そのまま手を引いて歩き出す。

周りに居るカップルと何ら差のない普通のカップルのようだった。


携帯は
と色違いのお揃いを選んだ。

丁度その店ではキャンペーンを展開しており、その期間中に新規登録若しくは機種変更でくじが引けると言う。

くじの商品を見て
の目が輝く。

「南野くん!これがいい、これ」

商品の一覧の写真のひとつを指さす。

3等のお食事券だ。

この店の近くのレストランでのみ使用できるものだが、中々有名なところで蔵馬も一度だけ家族で行った事がある。

「これがいい」って言われても...とブツブツと呟きつつくじを引いた。

係りの人にそれを渡すとベルが鳴る。

「おめでとうございます!3等のお食事券です!!」

係りの人から商品を受け取る。

くじを引いた蔵馬自身の驚いており、呆然としながら
の元へ行くと

「南野くん、カッコイイ!さすがね、やっぱ頼りになるわ!!」

何故か大絶賛だ。

今までで一番
に褒められているし喜ばれている。お食事券の威力、侮りがたし。

その日の夕飯に使おうという話になって蔵馬は家に電話を入れた。


普通のカップルと言うよりも普通にバカップル。
お食事券は強いですよ!ヒロインを簡単に笑顔にさせれるんですから!!
って、このままだとヒロインがくいしんぼうキャラになってしまう...


桜風
06.12.11


ブラウザバックでお戻りください