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夕飯までには時間が早いため、少し歩いていると
が「あ!」と声を上げる。
「何?」
「アレ、取れる?」
言われた先を見るとそこはゲームセンターで、UFOキャッチャーがある。義弟が取ってきたぬいぐるみよりも
小さいサイズの同じものがあった。
「やってみようか。時間もあるし」
蔵馬はそう言ってゲームセンターに入って行き、
もそれに続いた。
「黒もあったんだ...」
ボックスの中には白と黒の狐がある。
「
はどっちがいい?」
「んー...白!」
「りょーかい」
そう言いながらコインを投入した。
何度かの失敗の後、
の希望通り白い狐を取ることが出来た。
「ほら」
ボックスから取り出して渡すと、
は嬉しそうにそれを受け取った。
ゲームセンターで意外と時間が潰せた2人はお食事券を持ってレストランへと向かった。
コース料理での注文であるそれを終えて、蔵馬は水を一口飲んだ。そして、先ほど
にあげたぬいぐるみを見る。
白い狐。妖狐の自分を思い出す。
「
」
「んー、何?」
店の雰囲気を眺めて楽しんでいる
に声を掛けると生返事が返って来る。
「この間、言ってただろう。俺の昔の話を聞きたいって」
構わず続けて声を掛けると、
は蔵馬の話を聞く姿勢をとり、言葉を逃さないように構える。
「俺は、妖狐なんだ。九尾の狐ってやつ」
「狐だったの?『きゅうび』って何?」
「化け猫とか化け狐とかは尻尾の数が多いほどその力が強いんだ。俺の場合、九つ。まあ、一応強かったよ」
それから順を追って自分の過去を話し始める。
自分が魔界で大盗賊と恐れられていたときのこと。そのときの自分がどれだけ残酷で冷酷だったか。
霊界の特殊部隊によって傷つけられて瀕死の状態となり、人間の胎児に憑依したこと。
そして、人間として生活してきたこと。
飛影と再会して霊界の秘宝を奪って、それがきっかけで幽助と出会い、桑原とも仲間になったこと。
暗黒武術会、能力者。そして、魔界統一トーナメント。
注文していた料理が来るたびに中断したが、全て話すことが出来た。
蔵馬の話を聞き終わった後、
に言葉はなく、冷めた料理を口にしていた。
「送っていくよ、夜も遅いし」
食事を済ませた後、店の外で蔵馬が申し出た。
蔵馬の話を聞いてから、
の様子がおかしい。ずっと、何かを考えているようだ。
のマンションにつくまで2人の間に会話がなかった。
最後に、
のマンションの前まで来てやっと、
「南野くん」
が口を開いた。
「何?」
「その、南野くん、というか、蔵馬さん?ってどんな狐だったの?」
「白い狐だよ。そのぬいぐるみのようなね」
そう言って蔵馬は
のぬいぐるみを見た。
は自分の手にしているぬいぐるみをじっと眺める。
「じゃあ、また」
そう言って蔵馬は
のマンションを後にした。
休みが明けて学校へと向かう。
先日の
の様子だと自分は受け入れてもらえなさそうだ。
仕方が無い。
彼女に全てを黙って付き合いたくなかったし、それをするのは卑怯だと思った。
自分で選んで、自分で決めたことだ。寂しくないかと聞かれたら、勿論寂しい。でも、悔いは無い。
そう思いながら学校への道を歩いていると背中をポン、と叩かれた。
「おはよ、南野くん!」
だった。
「あ、ああ。おはよう」
呆然として答えた蔵馬はあるものが目に留まって、軽く眉を上げる。
の鞄には先日蔵馬が取ってあげた白い狐のぬいぐるみがあった。そして、それだけではない。尻尾が細工されてふさふさになっていた。
「九つにしたら何だか変になりそうだったから...ふさふさして可愛いでしょ?」
そう言ってピン、とぬいぐるみを弾く。
呆然とする蔵馬に笑顔を向けた
は走り出した。
少し先にいるクラスメイトに「おはよ」と声を掛けて歩調を合わせる。
戸惑いばかり覚えていた薔薇姫は、いつの間にか他人との付き合い方に慣れたようだった。
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