| 幽助から貰った情報の中に、違法賭博の情報があった。 会員制のサロンのようなものがあり、その会員のうち、さらに一部は違法賭博、つまりカジノに興じているとか。 どうもあの社長はそれを仕切っており、さらに営業担当は、その手伝いをしているらしい。 毎週水曜日、というのはサロンの日で、第三金曜日がカジノの日のようであるという情報を掴んだ。 秀一が少し難しい顔をして思案していると「欲しい情報じゃなかったみたいだな」と幽助が苦笑する。 「ええ、まあ。俺はこれで充分なんですけど。彼女の方が...」 「同盟者だからな」 「ええ。それに、今バイトであの会社に入ってますからね」 「いつまでだ?」 幽助の言葉に秀一は首を横に振る。 「知らねぇのか。情報収集してやろうか?有料で」 にやりと笑って幽助が言う。 「大丈夫です、そちらの方は。おそらく、大学の春休み中ということで、今月いっぱいだと思うんですけどね」 「んじゃ、あとちょっとだな。なら、次の第三金曜の時には会社にいないんじゃね?」 幽助の言葉に秀一は頷く。 「そう思います。一応確認して、今後の俺の動きを確認しておきます」 「おー、頑張って口説けや」 「幽助に言われたくないです」 幽助から情報をもらって、彼女の居酒屋のバイトがない日を確認してその日に会うことになった。 彼女は急いだ方がいいかと、バイトを休んでまで会おうと焦っていたが、秀一の勘では大丈夫ということで、そこまで無理することはないと説得したのだ。 結局会えたのが、土曜の昼間だった。夕方からバイトが入っているらしい。 「・・・と、いう内容でした」 報告書は持ってきていない。何があるかわからないから。 「さんの欲しい情報は、おそらく今の状況では出てこないと思います。アプローチを変えてみますか?」 秀一が問う。 「うーん...随分昔の話ではあるからね。うちの会社の、というのはもう出てこない可能性は私の中にもあったし、無理する必要はないかなー。あなたはどうするの?この情報」 「別の伝手に、警察の関係者と懇意の人がいるんです。相手の、警察の関係者がどの程度の方かはわからないのですが、情報をリークしてとっ捕まえてもらおうかと思っています。 相手企業の社長が違法賭博に手を出していたとなれば、取引の話はご破算に出来ますしね」 秀一がそう言って彼女を見ると、彼女は怪訝そうな表情を浮かべた。 「何でそんな怪しげなパイプを持ってる人と知り合いなの?」 彼女の問いに少し困ったな、と思いながら 「少し前に、社会奉仕活動をしていたんですよ。その時に、知り合った方たちです。この間の屋台の店主、幽助も」 「ふーん」とイマイチ納得していないような相槌を打った彼女が突然、「あ!屋台で思い出した」と声を上げた。 「何ですか?」 「何で“クラマ”なの?」 問われて秀一は少し視線をそらし、「あだ名です」といつもの苦しい言い訳をした。 「どこから来たあだ名なの?」 「まあ、えーと。昔にそう呼ばれていて...」 「ああ、小学生って意味の分からない単語をあだ名にするもんね」 彼女はどうやら納得してくれたらしい。 「それで、先ほど話した、別の伝手の方が仕事の関係上、月曜日にしかお休みがないらしくて、今度の月曜に行こうと思っています」 「私、バイト入ってるわ」 困ったように彼女が言う。 「わかりました。では、俺だけで行きますね。ところで、今の会社のバイトはいつまでですか?」 「今月末まで。いなくなってからいろいろ大ごとになるのね」 彼女の言葉に秀一は頷く。 「もしかしたら会社の関係者として事情聴取への協力を求められるかもしれません」 「わかった。覚悟しておく」 彼女は頷く。 「初め、胡散臭いやつだと思ってたけど。あ、いや。今でも胡散臭いけど。同盟結んで今のところ正解だったわ」 「“今のところ”ですか?」 「いつ裏切るかわからない」 肩を竦めていう彼女に秀一は「困ったな」という。 「言ったじゃないですか。鋭意努力中だって」 秀一の言葉に彼女は「はあ?!」と声を上げた。 「あれは、あの場を切り抜ける嘘でしょ?」 「嘘というのは、一部の真実を織り交ぜるとより信憑性が上がるんですよ」 そんな秀一の言葉を耳にしても彼女は信じられないものを見ている目で見ている。 「あの一連の話の中で映画に行ったりしたのは真実でしょ?それだけでしょ」 「“一目ぼれ”が嘘です。まあ、あの警戒心を何とか抑えていた瞳は気になりましたけど。あとは、俺と一緒に居ても警戒心を中々解かないところが気に入りました」 「悪趣味...」 呆れたように彼女が言う。 「そうですか?宝を見る目には自信がありますよ」 秀一の言葉に彼女はまたもや胡散臭げな視線を向けた。 「あなたの、その誰彼構わず親切そうな態度って、凄く怖いのよ」 「では、さんにだけ、優しくしましょうか?俺はこう見えて凄く冷たいんですよ」 「その片鱗は、残念ながら見えてるわよ」 半眼になって彼女が言うと 「そうでしたか」 と秀一が肩を竦めた。あまり残念そうではない。もしかしたら、自覚があるのかもしれない。 「そうね、保留中ってことで」 不意に言った彼女の言葉に秀一は眉を上げた。 「では、引き続き鋭意努力をしましょうか」 秀一の言葉に「どうぞご随意に」と彼女が答え、「では、遠慮なく」と秀一は言った。 |
桜風
14.11.6
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