| 花屋の前を歩くと可愛らしいオレンジ色のかぼちゃが並んでいた。 ふと思い出す。 日本ではあまりこのイベントを見ないな、と思い出す。 そして、そのまま花屋の店内に足を運んだ。 パタパタと走りながら待ち合わせ場所にやって来る の姿を見て蔵馬は少しだけハラハラする。 「ごめんね、秀一くん。遅くなって」 息を整えながら言う に、秀一が心配そうな視線を向けながら 「時間通りだよ、 さん」 と返す。 いつもはどこに行こうかと話から始まるのだが、今日は が行きたい映画があるというので映画館に向かった。 今話題に上ることが多いその映画のタイトルは秀一でも一応耳にしたことがあるが、興味がなかったために内容までは知らなかったが、何となく意外なチョイスだと の新しい面を見つけた気がした。 「つまんなかった?」 秀一を見上げて が聞く。 「いや、面白かったよ」 「声がそう言ってないよ」 クスクス笑いながら が言う。別に気分を害したような雰囲気ではないため秀一は気にせずに言葉を返す代わりに肩を竦めた。 どこかカフェにでも、と秀一が誘ってみたが、何故か は公園が良いという。 「どうして?」 晩秋と呼ばれる今の時期の風は冷たく、体が冷えてしまう。 元は体が弱かった の体調が気になる秀一は出来れば室内に、と思ったのだが 「どうしても」 とにこりと微笑む にまたもや肩を竦めて頷いた。 近くのコーヒーショップでカフェオレをテイクアウトして公園へと向かう。 「寒くない、 さん」 「大丈夫。寒いの平気よ」 そう言ってベンチに腰掛ける の隣に秀一は座って、先ほど購入したカフェオレを手渡す。 それを受けとって一口飲む。 カフェオレの温かさがじわりと体に広がる。 はバッグの中をがさごそと確認して秀一を見上げた。 「秀一くん」 「なに?」 のその様子をずっと見ていた秀一は突然声を掛けられて驚きつつも返事をする。 「trick or treat!」 満面の笑みで が言う。 秀一は腕時計に表示されている今日の日付を見て「あ、」と呟く。 日本では意外と知られている割には普及していないように思われるそのイベントの決まり文句だ。 「えーと、ハロウィン?」 「そ。こっちじゃあんまり聞かないもんね」 満足そうに頷く に頬を緩めるが、何か期待をした瞳を向けられている秀一はどうしようなどと思いながらもそれは表情に出さない。 「ね、言って?」 「は?」 突然何かの続きの言葉を言われて秀一は思わず聞き返す。 「だから、秀一くんがさっきの言ってよ」 『さっきの』と言われて が言った言葉を思い出し、 「trick or treat...?」 首をかすかに傾げながら言うと得意満面の表情の がバッグの中からオレンジ色の小さなかぼちゃを取り出す。 秀一はきょとんと の動きを見守っていた。 「はい、どうぞ」 ぱかりとかぼちゃの頭を開けて秀一に向ける。 「どうしたの、これ?」 少しだけ、困惑の混じった表情をして秀一が に聞く。 「お花屋さんの前で見つけたの。どう?」 「どう?って...かわいいね」 素直な秀一の感想に は機嫌を良くして 「私が作ったんだよ」 とさらに言葉を重ねる。 「作ったの!?」 目を丸くして秀一が聞くと 「そう。このかぼちゃを刳りぬいてキャンディ入れにしてみたの。可愛いでしょ?という訳で、おひとつ如何かしら?」 もう一度キャンディを勧める。 「じゃあ、いただきます」 ひとつ摘まんで包みをはがして口の中に放る。 ああ、だから店内で休憩するのを遠慮したかったのかと納得しながらキャンディの甘さを味わった。 |
桜風
07.10.29
07.11.25(再掲)
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