Affection for 1





目の前に数冊のパンフレットを並べては唸っていた。

「さっぱわかんない...」

「ママ、どこがいいかなー」

うきうきしながら娘のノルンがパンフレットをめくっている。

「うん、わかんないね」

「地球も行ってみたいなー」

アスランから送られたパンフレットを見ながら呟く。

彼女は幼年学校をどこにするかで悩んでいるのだ。

プラントのでも良いが、オーブという選択肢がここ最近できた。

周囲から言わせてみたらはその立役者の一人なのだが、彼女は他人事のように思っている。

「ノルンが選んで」

「ママも一緒に考えてよー」

拗ねたようにノルンが言う。

「だって、どこも施設似たようなもんだし。教育方針もカリキュラムもあるけど、結局卒業するころには同じになりそうだし」

「もう!ねえ、ヴィンセントはどう思う?」

弟に声をかけた。

彼は先日から初等教育の前の段階の施設に通っている。

無理に通う必要のない施設だが、彼のたっての希望で、今、ノルンと同じくそこに通っているのだ。

「え?ごめんなさい。なんですか?」

「もう!私、どこに行こうか悩んでるの」

「あねうえとはなれるのは、さみしいです」

「んー、そっか。どうしようかな。私もママとパパとヴィンセントと、今度産まれる赤ちゃんと離れるのは寂しいなぁ...」

そう言ってを見た。

まだおなかは目立っていないが、弟か妹が増えると聞いてノルンは随分と喜んだ。

ヴィンセントが生まれたときのことはあまり覚えていないというのだ。

だから、今度はちゃんと覚えておくと張り切っている。

「ヴィンセント、どこか調子悪いの?」

が心配する。

どうもここ最近のヴィンセントに覇気がない。

病気はなくても、体調は崩す。

ちゃんと早寝早起きしている、結構健康的な生活をしている彼が体調不良となると余計に心配だ。

「いいえ!ぼく、元気です!!」

ヴィンセントが慌ててそう言った。

「そう?調子悪いなら早めに行ってね。学校、休んでも良いからね」

「いやです!」

ヴィンセントたちが通っている施設は便宜上「学校」と称している。

「ん?うん。わかった...」

(学校が好きなのかー...)

良いことだ。

はうんうんと頷いた。


しかし、はやっぱり心配が続いた。

「ヴィンセントが変?」

帰宅したイザークに言うと彼は眉間にしわを寄せた。

基本、眉間にしわが寄っている。

は「えいえい」と言いながらイザークの眉間のしわを伸ばしてみた。

煩わしそうにその手から逃れたイザークは「どんな風にだ?」と問う。

「んー、物思いに耽っている感じ?」

「ヴィンセントがか?」

イザークはにわかに驚いた。

あんな小さい子なのに、物思いに耽るとは...

「イザーク、ヴィンセントもちゃんと人間よ」

「あ、ああ...」

イザークの思考を察したが指摘するとイザークはばつが悪そうに返事をした。

「ね、イザークから聞いてみて。言いたくなかったら無理矢理聞き出す必要はないし」

が言うと

「俺がか?」

とイザークが訝しがる。

「うん、イザークが」

「どうして。の方がずっと懐かれている」

「男同士の方が話しやすいことあるんじゃないの?」

確かに、とイザークは思った。

自分の父親は幼い頃に亡くなった。

父親がいたらな、と思ったこともある。エザリアには言えなかったが...

「わかった、ちょっと様子を見て聞いてみよう。深刻なことだろうか...」

「それも含めてわかんない。深刻度の判断はイザークに任せるわ」

の言葉にイザークは頷いた。

「しかし、知らないうちに大きくなってるな」

イザークは呟く。

「ん?」

「いっちょ前に悩みを抱えるようになったんだな、と思って」

イザークの言葉には苦笑した。

「そうねー。ノルンは結構そういうの相談してくれているから安心なんだけど。ヴィンセントは抱え込むタイプのようね」

「いや、さっきの言ったとおり、母親だから相談できないのかもしれないな」

それを聞いては寂しそうに笑った。

「本当に成長してるねー」

「寂しがるな、俺がいるだろう」

そう言ってイザークはにキスをした。

否、できなかった。

部屋をノックされて「はーい」と応じながらはイザークをやんわりと押し返す。

(またか!)

「そろそろ寝るから」

おやすみの挨拶をしに来た子供たちだ。

「はい、おやすみなさい。少し寒くなってきてるからちゃんと暖かくして寝るのよ」

「はーい」

ノルンが返事をしてにおやすみのキスをし、同じくイザークにもキスをする。

「ヴィンセントもね」

がいうと「はい」と頷いておやすみのキスをして、そして、イザークに向かっては何かもの言いたげな視線を向けている。

「今度の休み、少し出かけるか」

「ホント、やった!」

反応をしたのはノルンだった。

「男同士で」

「えー!パパずるい!!」

ノルンが非難の声を上げた。

イザークはを見る。彼女は決死の覚悟を決めた。

「じゃあ、ノルンは私とお出かけする?」

「ホント!?する!!」

(頑張れ、。無理はするな...)

(骨は拾ってね)

視線でそんな会話を交わす両親に気づくことなく2人は部屋を後にした。









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桜風
12.11.5


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