Affection for 7





「ははうえ」

学校から帰ってきたヴィンセントが声をかけてきた。

ノルンは学年が上なので、まだ帰ってきていない。

「なに?」

「ぼく、ははうえにおねがいがあります」

何だろう、とは首を傾げた。

「ニコルおにいちゃんと、ラスティおにいちゃんとお話したいです」

「電話?いいよ」

そう言ってが連絡を取ろうとすると、

「いいえ。あって、おはなしをききたいんです」

と彼は首を横に振った。

「会うの?」

「はい」

ヴィンセントが頷いた。

おそらく一度に済ませたほうがいいのだろう。

「じゃあ、時間をとってもらって、ヴィンセントのお祖父様の家に来てもらおうか」

の言葉にヴィンセントは頷いた。


『ヴィンセントが?じゃなくて??』

「フレイに言うわよ」

電話の向こうでラスティが苦笑した。

『それ、勘弁』

「いい加減、そのスタンスやめたら?」

呆れたようにが言うと、

『んー、クセみたいなもんだよ』

と困った様子でラスティが言う。

『まあ、ヴィンセントの件は了解。オレがニコルと連絡とって調整するよ』

「助かる」

『オレに聞きたい話って何かな?』

「...もしかしたら、ラスティやニコルはあまり話したくない話かも」

が申し訳なさそうに言った。

『どういうこと?』

「この間、ヴィンセントがイザークと終戦記念博物館に行ったの」

『これまた渋いチョイス。イザークが選んだの?』

「ヴィンセント。ちょっと最近様子がおかしいなーって思ってたんだけどね」

『初恋じゃないの?』

ラスティがしれっと言った。

「何で?」

『んで、オレ今色々察しちゃった。了解。いいよ。確かに楽しく話せる内容じゃないけど。伝えなきゃ』

「...ありがとう」

『8年くらい前だったら、オレに惚れちゃいなよ、って言えたのにー』

愉快そうに笑ってラスティはそういい、『また連絡するね』と言って通話を切った。


約束の日、ラスティがヴィンセントを迎えに来た。

が連れて行くと言っていたが、ラスティが送迎すると言ってくれたのだ。

は、お土産を持たせてヴィンセントを見送った。

テラスに出て庭を眺めながら、ラスティに連絡をしたその日の内に聞いたイザークの言葉を思い出していた。

ヴィンセントの初恋の彼女の親は、戦争で身内を全てなくしたと言う。

元はオーブの出身で、戦場となった際に家族全てを失った。

そのため、自身の子に憎しみを継がせようとしているそうだ。

悲しい話だ。

子供は親の憎しみを自分のそれだと思い込むだろう。

憎しみの連鎖は何も産まない。それは、自分がこの目で見てきた。

彼女の親が憎んでいるのは軍、一際憎いのは地球軍だが、どうもプラントのことはさほど詳しいわけではないらしい。

だから、“ジュール”を良く知らないようだし、ましてや“”も知らないようだ。

だからこそ、ヴィンセントと仲良くできるのだろう。

そして、ヴィンセントは彼女の憎しみを目の当たりにして困惑しているのだ。

何か違うと思って、でも何が違うのか分からず、だからこそイザークと共に終戦記念博物館へ足を運び、そこで包み隠すことの無い戦争の話をイザークから聞いた。

今度は、ラスティとニコルに聞くのだろう。

彼らは戦争を経験し、そして、今はその傷を癒す活動をしている。

イザークやディアッカとはまた違う道を選んだ。

それが償いになるとは思っていない。ただ、自分のできることを知っていた。

だから、それを選んで少しでも傷を癒してもらいたいと思って世界を、宇宙を駆けている。









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桜風
12.12.17


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