Affection for 8





ヴィンセントに頼まれて彼らは戦争の話をした。

志願した動機、自分たちの行ったこと、見たこと。

ただし、彼らは揃って言った。

は、奪った命よりも守った命の方が多い」

と。

「ちちうえも言ってました」

ヴィンセントが頷く。

「だが、命を奪ったことに変わりない」

そういったのはカインだった。

「カインさん!」

ラスティが責めるように名を呼ぶ。

「事実だ。それはも自覚している」

そして、カインも話をした。憎しみに駆られて自分が行ったことを。

さすがに、その話はヴィンセントも驚いたようで目を丸くしている。

「すまないな、立派ではないお祖父様で」

自嘲するようにカインが言う。

「ぼくは、だれかをりっぱだとか、りっぱじゃないとか言えるほどすごい人じゃありません」

「...お前、いくつだ?」

あまりにしっかりしすぎて思わずカインが問う。

「3さいです」

「ですよね...」

ニコルも頷いた。

「僕は、人が争うことは良いとは思っていません。ですが、あの戦争がなければ今のように地球とプラントの往来は難しかったのも事実です」

ニコルが言う。

「ただ、そのためだけという話なら、流す血が多すぎましたね」

睫を伏せて言う。

「引き金を引く覚悟、という言葉を良く聞くが。その覚悟とは何だと思う?」

カインがラスティに問う。

「人の命を奪う覚悟、ですよね?」

「たぶん、奪った後の覚悟じゃないですか?」

ニコルが言う。

「私も、ニコルに同意だな」

カインが言う。

「戦争の後、何が大変だった?戦災孤児と呼ばれる子供たち。彼らには家族がいてその命を奪ったのは戦争だ。戦争に加担していれば、彼らの家族の命を奪ったも同然だろう。実際に引き金を引いていなくとも、その命令を下していれば同じだ」

ヴィンセントは彼なりに今聞いた話を整理しようとしているらしい。

噛み締めるように何度か頷いている。


「おじいさま」

「何だ?」

「おじいさまの“あい”ってなんですか?」

「...は?」

きょとんとした。

カインがきょとんとしたことなんて今まで見たことがない。

写真を撮ってしまいたいが、それが出来ないくらいラスティもニコルも唖然とした。

「あ、えーと。どうした?」

カインが問う。

「ぼく、きいたことがあります。“あいはせかいをすくう”って。ぼく、すきなひとができました」

そう言って一生懸命説明する。

彼女の親が、戦争で身内全てを亡くしたことにより抱いた憎しみを子供に、ヴィンセントの初恋の相手に継がせようとしていると。

でも、それはおかしいと思ったヴィンセントはこうして戦争のことを聞いているのだ。

「憎しみだけは賞味期限が無いからな...」

カインが呟く。

「そうでしょうか」

ニコル問うと

「私が良い例だ」

と苦笑して返された。

「ヴィンセント、おそらくイザークも同じように答えるだろうが。私の“愛”はノルン..お前のお祖母様だよ。イザークの場合は、だろうがな。ただ、私はノルンの愛を裏切った」

カインは自嘲気味に笑った。

「どういうことですか?」

首を傾げるヴィンセントに、「少し待ってなさい」と言ってカインが席を外す。

「ニコルおにいちゃんは?」

「僕ですか...誰かを愛しむ心でしょうね。その人を大事にしたいという気持ちだと思いますよ」

「ラスティおにいちゃんは?」

「んー、困ったな。俺の愛って軽そうって色んな人に言われてるんだけど...」

「そうですね」

ニコルが同意した。

「酷いなー...」

ラスティは苦笑する。

「けど、ニコルと同じかな?誰かを大事にしたい気持ちだよ。だから、カインさんはノルンさんで、イザークはなんだよ、きっと」

「待たせたな」

丁度良いタイミングでカインが戻ってきた。

「これを見てごらん」

そう言って映像を流す。

「これ!ははうえとちちうえですか?」

少し弾んだ声でヴィンセントが問う。

「そうだ。私がザフトに所属していたとき、戦争で家に帰ることが殆ど無いからと、ずっと記録を取ってくれていたのが、お前のお祖母様のノルンだ。これは初めてイザーク君とが会ったときの映像らしい。彼女は、戦争の先にある優しい未来を描いていたんだ。この2年位後に、亡くなったがね。そんな彼女の描いた優しい未来への道を、私は壊そうとした。裏切ってしまった。だが、それを止めてくれたのがだ。
人は憎しみを糧に生きていくことがある。憎しみがなければ生きていけないと言う人もいる。だが、これだけは言える。憎しみの連鎖で生まれるものは何も無い」

「...ぼくは、どうしたらいいのでしょうか」

「今は何もできんだろう。こうして、歴史を知ろうとしただけでもお前は凄いが、それ以上は..難しい。大人の我々でも出来ないことだ」

カインが静かにいう。

「一緒にいてあげなさいよ」

不意に声が増えた。

「フレイ?!」

ラスティが驚きのあまり、椅子から立ち上がる。

「私、パパをザフトに殺されたのよ」

フレイの言葉にヴィンセントは驚きのあまり声が出ない。

元ザフトの3人は気まずそうにしている。

「で、でも...」

ヴィンセントは何とか声を発した。彼女はプラントにいる。

「うん、憎かった。ザフトと言うか、コーディネーター全部が憎くて、キラを利用した。けど、憎しみだけで生きていくのは空しかった。自分の中が空っぽだったから。
ザフトに連れてこられたとき、がずっと私の傍にいてくれたの。捕虜って扱いじゃないけど、ずっと隊長に随行して。怖かったけど、がずっと様子を見てくれていたから。イザークに怒られながら、気に掛けてくれていたの。味方がいるって凄いことなのよ。私のパパを殺したのはコーディネーター。でも、私を助けてくれたのも、コーディネーター。結局組織とか、そういうの関係ないの。何処にいても、いい人はいい人だし、悪い人は悪い人なのよ。
色々あって、私はここにいる。それが、私の出した答えで、私の受けた愛の答え」

フレイがにこりと微笑んだ。

その笑顔には、確かに憎しみが見られない。

「ありがとうございます」

ヴィンセントは話をしてくれた彼らに深く頭を下げた。









Next


桜風
12.12.24


ブラウザバックでお戻りください