Like a fairy tale 1





コロニーで有名なレストランで母親と共に待ち人を待っていると、それらしき人たちがやって来る。

それを目にしたとき、その少年は笑顔だった。少なくとも本人は、そのつもりだった。


今日は人と会う約束をしているから、と父親に言われて彼女は一緒にその待ち合わせ場所に向かった。

コロニーでは有名なそのレストランは正装しなければならず、面倒だと思いながらもドレスは嫌なのでスーツを着て父についてそこへと向かう。

店内に入り、父が待ち合わせしていた人物を見つけたらしくそちらへまっすぐ足を向ける。

ついていった娘は、その待ち人の片方を見て唖然とした。

慌てて笑顔を作ったが、それは引き攣っており、作り笑いだと一目で分かるそれだった。




悪夢だ...


何となくそれぞれの親の様子から何の話かを察した息子と娘は同時に溜息を吐く。

いや、でもしかし。思い違いかもしれない!

そんなことを思っていた。これも2人とも同じことを考えていた。

「さて、2人とも察しているようだが。一応、言っておこう」

父親が口を開いた。

「2人は婚約者だ。以降、そのように」

「仲良くなさい」

母親も念を押すように一言添える。

「「そ..ッ!」」

ガタリと椅子を蹴って彼女たちは立ち上がる。

「待ってください、お父様」「お待ちください、母上」

「「何でコイツと婚約なんてッ!!」」

お互い指をさして自身の親に訴える。

「あ、いえ。エザリア様をどうこう言っているのではなく..」

娘が自身の言葉にうろたえ、息子の方も慌てる。

「ああ、いえ。氏に対して何かを思っているわけではなく」

「「コイツが!!」」

「さっきから何よ、イザーク!」

「貴様こそ、何ださっきから。作法がなってないんじゃないのか、

子供たちが額を寄せ合って喧嘩を始めそうになったため

」「イザーク」

お互いの親が自身の子を窘める。

「座りなさい、

「お行儀が悪いですよ、イザーク」

とイザークは仕方無しに大人しく椅子に座った。実際、周囲から冷たい視線がこれでもかと向けられている。

イザークはジャケットの襟をただし、は一度肩を竦めて姿勢を正した。

「あの、お父様。婚約者って言うのは...」

と、イザーク君の遺伝子が対になっているということだ」

は軽く天を仰ぐ。

「だから、分かっているわよね。貴方たちは生まれたときからの婚約者ということなのよ、イザーク。さん」

2人は自身の親、そして相手の親の表情を見る。

親たちは笑顔を浮かべている。

しかし、自分たちに選択の余地も拒否権もないということを物語るその表情に諦めの境地というものを覚えた気がした。






「あっはっはっはーー!!」

「ラスティ、笑いすぎ」

アカデミーの食堂でイザークとの婚約の顛末を話すと、のクラスメイトで仲の良いラスティ・マッケンジーは大笑いを始める。

その様子を頬杖をついて半眼になったままは眺めていた。

「いや、だって。ぶはっ、ははは!!」

「何がそんなに可笑しいんですか?」

とラスティを見つけてニコル・アマルフィが寄って来た。

「ああ、ニコル。こっち空いてるわよ。別に、何かわかんないけど、ラスティが笑い茸を食べたみたいなの。拾い食いね」

ニコルに席を案内して、溜息を吐きながらは適当に答える。

ニコルは残念ながらとはクラスが違う。が、同じパイロットクラスであるため、演習が一緒になることが少なくない。

優しい気立てのニコルは結構と気が合った。因みに、周囲からしてみれば『何故か』という言葉がオプションに付くらしいが。

「そういえば、がイザークと婚約したって本当ですか?」

は絶望だといわんばかりに天を仰ぎ、折角笑いがおさまってきたラスティはまたしても大爆笑を始める。

「えーと..」

そんな2人の様子を少し困った表情でニコルは眺めていた。

「...本当よ。昨日のことなんだけど、何で?」

「いえ、あの。噂で」

ニコルの言葉になるほどなと納得しながらも、隣で笑い続けるラスティに少し憤りを覚えて彼の目の前にあるカフェオレを強奪して一気飲みをしてやった。

数秒、は動けなくなる。

アイスカフェオレは、一気飲みをするものじゃないと頭を軽く叩きながらは思った。


「オレのカフェオレぇー!!」

にカフェオレを強奪されたラスティはやっと笑うのをやめて、今度は嘆いていた。

「おま、酷いぞ!」

「うるさいなー、良いでしょ。というかアレはどう考えても笑いすぎだったんだからね。お詫びに差し出したと思えば安いものでしょ?」

そう言いながらも今度はラスティのサンドイッチにも手を伸ばす。

此処へは、ラスティがおなかが空いたと主張したためにやってきたのだ。

「サンドイッチまで?!」

「ラスティってば太っ腹!ステキよー」

「酷いよー。なあ、ニコル。って酷いよな」

「ラスティが笑いすぎだったんですよ」

突然話題を振られたにも拘らず笑顔での方を持つニコル。

「ニコル優しー!」

そう言いながらはニコルに抱きついた。


突然食堂の入り口が騒がしくなる。

は小さく舌打ちをした。







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桜風
07.12.3


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