Like a fairy tale 2





イザークは朝から機嫌が悪かった。

「あのさ、何でそんなに機嫌が悪いわけ?」

同室のディアッカ・エルスマンははっきり言ってはた迷惑というやつだ。不機嫌なイザークはいつも以上に好戦的になり、破壊活動を繰り返す。

今朝もその片付けをしての登校だった。

「やかましい!昨日言っただろう。くそっ!何だって俺が..!!」

そんな憤りっぱなしのイザークの様子にディアッカは肩を竦めてため息を吐いた。



教室についてから、イザークにクラスメイトが声を掛けてきた。

「あの、と婚約したって本当か?」

その一言でイザークは睨み殺さんばかりにそいつを無言で睨んだ。

逃げるように去っていくクラスメイトに秘かに『ご愁傷様』という言葉を送りながらもディアッカは溜息を吐く。

今日は溜息ばかりだ。

その日は遠巻きにイザークを見つめながらヒソヒソと話をする光景がやけに目に付く。

「これって、も大変じゃないの?」

ディアッカが呟くと「知るか!」とヒステリックなイザークの声が返ってくる。

色々と理不尽だと思う。



「あ、あの。イザーク様」

見たことが有るようなないような女子に声を掛けられてギロリと睨む。

しかし、その視線に負けずにその子は話を続ける。

と婚約されたと聞きました」

「だからなんだって言うんだ」

苛立たしげにイザークが言う。

「イザーク様はこの婚約に不満があるんですか?」

不機嫌で黙れといわんばかりのイザークのオーラに屈しない彼女にディアッカは少なからず感心した。

「当たり前だ!突然親に一方的に告げられて...」

ギリ、と奥歯を鳴らすイザークに

「まんざらでもないくせに」

とディアッカは冷やかしの言葉を呟いた。

「何か言ったか?」

「んや、何も」

彼女の方を見ると何やら嬉しそうな表情を浮かべている。

「ですよね!」

イザークは眉を顰めてディアッカを見た。訳せと言っているようだが、ディアッカにだって分からない。

「あのがイザーク様に釣り合うはずがないですよね」

彼女は満足そうにしっかりとそう呟いてイザークを見上げてにこりと微笑んだ。

「どういう意味だ?」

苛立たしげに聞き返すイザークに気付かないのか彼女は言葉を続ける。

「だって、イザーク様のお家。ジュール家にはもっとお淑やかで、そうですね、清楚で可憐な感じの方がお似合いです。
彼女は、確かに綺麗だし、成績も優秀ですけど。こう、教養や礼儀作法らしきものが備わっているとはあまり思えませんよ?確かに、兵士としては見習うべきところが沢山ありますけど」

「アンタさ。それって、自分のコト言ってんだろ?」

ディアッカが低い声で言う。

彼女はきょとんとディアッカを見上げた。

「あのさ、そうやって人のことを堂々と悪く言うやつに『教養』とか『礼儀作法』を語る資格、ないと思うな、オレは」

珍しく不快感を露にしたディアッカに彼女は怯えた表情を見せ、助けを求めるかのようにイザークを見上げる。

しかし、口にこそしないもののイザークも同じ考えだったようでその視線は非常に冷たい。




カリキュラムの都合上、少し長い休憩時間が出来たため、食堂へ向かうことにした。

「っつうか、何かもう。好きだよな皆」

溜息と苦笑交じりにディアッカが呟く。

イザークは不機嫌に鼻を鳴らした。

「何故、こうも噂が広まってるんだ?!」

「ま。例のイザークたちが婚約発表されたレストランにアカデミーに通う誰かが居たんだろうな。んで、そこから流れ始めた噂が此処まで広がったって感じじゃね?」

楽しそうにディアッカが言う。


食堂に着くとその一角から良く通る声が聞こえる。

ディアッカは楽しそうに口笛を吹き、イザークは眉を顰めた。

「何処に居ても目立つやつだ」

溜息混じりにそう呟いた。








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桜風
07.12.3


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