| ふと、思い立ったイザークはその日はまっすぐに帰らず、残ってみることにした。 先日、ラスティから聞いたこともあって、自分ももう少し訓練しても良いのではないかと思い始めたのだ。 勿論、手を抜いているつもりはないが、まだできるはず。何より、アスランがと並んでトップというのは面白くない。 一応、自主トレーニングはアカデミーの施設を使用するため、教官に申請をする必要がある。 教官室に行き、申請手続きを行う。 申請手続きは簡易なもので、名簿のような紙に日付とクラスと名前、そして開始時間と退出時間を記入するものになっている。 ふと、その名簿の前のページを捲ってみてイザークは少し驚く。 殆ど・の名前が書いてある。 「ああ、か」 イザークの様子に気付いた教官が納得したように呟く。 「ええ。凄いですね」 素直にその言葉が出た。 「まあ、アイツはトップでいなくてはならないだろうからな。父親の影が気になるんじゃないのか?」 の父はザフトのエースパイロットだった。 追撃を受けていた仲間を助けたとき、運悪く負傷してしまい引退を余儀なくされたと聞いたことがある。 若くして引退したが、それでもザフトの歴史に名を残す英雄だ。 「彼女はいつもこんなに?」 開始時間と退出時間を見れば大抵5時間近く残っている事になる。 「ああ、そうだな。大抵こんなものだと聞くぞ」 その後、少し教官と話をしてイザークは射撃練習場へと向かった。 「よ!」 練習場へ入ると軽く声を掛けられる。 「ラスティ?!お前も練習か?」 「まあなー。イザークが居残りって珍しくない?」 カチャカチャと銃を弄りながらラスティが続ける。 「まあ、たまには...」 何故か少し居心地を悪く感じながらも返すと 「はあの端っこに居るから。オレはもう上がり」 ラスティの指した先を見ると淡々と銃を構えて引き金を引いているの姿があった。 「んじゃ、お先」 ポン、とイザークの肩を叩いてラスティが練習場から出て行った。 イザークはの後方からその射撃の様子を眺める。 次々に出てくる人型の指定された箇所に銃弾を当てている。それは的の中心に当たり、一分の隙もない。 暫く眺めていたが、が手を止める様子もなく、ただ見ているだけだと何のために居残りをしているのか分からないというコトに気付いたイザークはのひとつ空けて隣のスペースで練習を始めた。 少し休憩にしようと後方のベンチに下がっての得点表を見る。 汗を拭う手が止まった。 この得点数だと、は休憩を挟んでいない。 彼女があの名簿に書いた時間から考えても既に3時間は経過している。 そして、さらに驚くべきは、一度も的を外していないというコトだ。そうでなければこんな高得点を出せるはずがない。 休憩するように促そうと思ったが、自分はのペースを掴んでいるわけではない。彼女にとっては普通のことなのかもしれない。 溜息を吐き少し水分補給をしてイザークは再び練習を始めた。 「休憩したら?」 不意に耳に声が届いて手を止める。 ヘッドホンを外して振り返れば後方の椅子にが座っていた。 右手に持っているドリンクを軽く掲げる。 ヘッドホンを首に掛けてイザークも休憩することにした。 「どうぞ」 そう言って先ほど掲げたドリンクをイザークに渡す。 「ああ、すまない」 一口飲む。まだかなり冷えているため、購入してきて時間はあまり経っていないのだろう。 「どういう風の吹き回し?」 楽しそうにが問う。 「何がだ?」 「態々残って射撃の練習。しかもこんな時間まで」 の言葉でイザークは時計を見る。思ったよりも時間は進んでいる。 「気がついたら、こんな時間だったってのが現在の状況だな。こそ、いつもこんなにやってるのか」 「実家に居たときとあんまり変わんないから」 の答えにイザークは納得する。 確か、自宅の地下には射撃練習場があって、勿論その他の訓練施設を備えてあるとか。 「そうか。そういえば、何でさっき声を掛けてきたんだ?」 自分は遠慮したと言うのに... 「命中率が落ちてたから」 イザークは首を傾げる。 「30分くらい前から観察させてもらってたの。イザークって銃を撃つとき、クセがあるんだね」 そう言って首に掛けていた自身のヘッドホンをつけてイザークが使っていたスペースに立ち、的を出す。 そのまま引き金を引くが、少しだけズレた。的は外さなかったが、先ほどまでのの射撃とは違った。 は振り返って「ね?」という。 先ほど見ていたと違うのは何となく分かったがどこが、というのが具体的に分からない。 にそのことを言ってみると 「じゃあ、また一緒に練習しよう」 と提案してきた。 「だが、の練習時間が減るんじゃないか?」 イザークが遠慮すると 「人に教えるのも勉強。まあ、イザークは教わるのが苦手だろうけど」 は笑いながらそう言う。 逡巡の後、イザークは 「がそれで構わないというなら...」 と了承した。 |
桜風
07.12.3
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