Like a fairy tale 10





何とも後味の悪いパーティとなったが、周囲は意外と気にしておらず、寧ろ今度はイザークが色々と迷惑を被っている。

あの評議会議員のエザリア・ジュールの子息とのコネがあれば何かと便利だと思ったのだろう。

そんな見え見えの魂胆に吐きたい溜息をグッと堪えて笑顔で会話を続けていた。

中にはとの婚約は破棄して自分の娘と婚約しないかとまで言う者も居た。怒りを通り越して呆れる。



「イザーク」

不意に声を掛けられて振り返ればの祖父が居た。

イザークは一礼をした。

「お前ら、魂胆が見え見えだ。せめてもっとそういうのは隠しておけ。すまないな、益々一族の恥を晒しておるわ」

心底呆れたようにの祖父は言う。

イザークはなんと返したものか悩みながらも「いえ」と小さく首を振った。

は、何処に行ったか分かるか?」

「少し、外の風に当たってきたいと言って外へ...」

イザークが答えると

「全く。婚約者を放ったらかしにして何をしておるのか。すまんが呼んできてはくれんか?夜の風は体を冷やす」

祖父がそういい、イザークは了承してホールを後にした。



元当主がそう言えば、誰もイザークにちょっかいをかけられなくなる。つまりは、逃がしてくれたのだ。「助かった」と小さく呟きながら外へ出て周囲を見渡す。

「おや、イザーク君」

声を掛けてきたのはの父だった。

「あの、を見ませんでしたか?探してくるように言われたのですが...」

「ああ。父に言われたか。しかし、申し訳ないな。私の一族のせいで君に不快な思いをさせてしまった」

そう言って頭を下げるの父に

「わざと、でしょう?」

イザークは苦笑をしながら声を掛ける。

いつも威厳のある表情を浮かべているの父が珍しく茶目っ気のある表情をした。「バレてたか」といった感じだ。

だからイザークもまた笑って、

「でも、ご招待していただけて良かったです。俺の知らないところでも、にはあんな顔してほしくないですから」

と言う。

その言葉にの父は内心大喜びだ。ただ、表情に出す事がないためそれはイザークにはあまり伝わっていない。

「今日はうちに泊まっていってくれるね。ああ、あの子は多分屋上、というか屋根の上だ」

そう言っての父は会場のホールへと戻っていった。




屋根の上...?

悩みながらも屋根が見えるところに行くと座っている人影が見えた。

「ああ、そうか。高いところを好むんだったか」

前に自分が彼女に言った言葉を思い出してイザークは小さく笑い、その屋根まで上る経路を考えた。

暫く考えて何とか辿り着いた。

「本当に高いところが好きなんだな」

イザークの声には驚いた表情で振り返り、

「煙だから」

と笑いながら一言返した。

「そんな儚いものではないだろう」

ふん、と鼻を鳴らしてイザークは返す。

は肩を竦めてまた顔を前方に向けた。

イザークもの隣に腰を下ろす。

「汚れるよ」

「人のこと、言えないだろう。お前のは黒だぞ」

イザークの言葉に「そうでした」と肩を竦める。

「何を見てるんだ?」

「特にこれと言って何も。空と、月と、向こうの森」

つまりは此処から見える風景だ。

イザークは伸びをしてそのまま背中を屋根につける。

「ちょっと、本当に汚れるよ」

「言うほど汚くないから大丈夫だ」

そう言って空を見上げる。

さっきまで周囲にあまり気持ちのいい感情を向けられていなかったから、こうしてのんびりと空を眺めているだけの今の状態はかなり極楽だ。

「ありがとね」

ポツリとかすかに耳に届いた言葉があった。

返事をするべきか悩んだが、まあいいかとイザークは返事をせずにそのまま月に照らされている雲を眺めて過ごした。









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桜風
08.1.1


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