| 暫く屋根の上で夜風に当たっていたが、いい加減戻らないといけないだろうと2人は会場に戻った。 既に皆は帰る空気を放っている。 父に促されてたちも帰ることにして祖父に挨拶をすると少し待っているように言われた。 何だろう、と待っていると家人が何かを持ってきて祖父に渡す。 「これを、イザークに」 そう言って渡されたのは拳銃だった。 「少し重いが、どうだ。使ってくれんか」 どうしたものかと悩んでいると 「今、父が言ったとおり少し重いからな。には不向きなんだ。本当は、に譲りたかったようだけど。よければ受けとってもらえないか。には私のものを譲るつもりだし」 との父がイザークに言う。 「でも、私が頂いても...」 「わしは自分が認めた者にしか譲るつもりはない。さっき、カインが言ったようにに譲ろうとも考えていたのだが、使える者に譲ったほうが良いだろう。だから、イザークは黙って受けとっておればいいんだ」 少し語気を強めて言うの祖父にイザークはそれを受けとり、敬礼を贈る。 の祖父も敬礼を返す。 「、当分はもう来れんだろうが、また遊びに来なさい。そのときには、アレももっとマシにしておくから」 祖父に声を掛けられては苦笑しながら頷く。『アレ』とはきっと伯父の事だ。 も祖父に敬礼をして屋敷を後にした。 帰りのエレカの中でイザークが泊まることを初めて知らされたは驚いた。 「え、何で?!」 「もう遅いだろう」 父に言われては時間を見た。 「や、うん。確かに。ああ、そうか、そうだよね...」 全く以ってそんなことを考えていなかったは驚いたが、今の時間からイザークの住むコロニーに帰るともの凄く夜遅くなる。 「そっか...」という言葉を何度か繰り返しながらは納得をしていた。 家に着くとは浴室へ直行した。 風呂の準備を始める。 「すまないね。何せ我が家は家族以外の者が家のことをするのを嫌う妻が居たから、その名残で誰かを雇うことはしていないのだよ」 それを聞いてイザークは少しだけ驚いた。 の母親がなくなったのは4歳くらいだったと聞いた。 だとしたら、それからはずっと父子で家のことをやってきていたのだ。 しかも、の父が現役を退くまではが独りで。勿論、の父の退役は早い方だが、それにしても感心する。 「イザーク、お風呂焚く?」 「いや、シャワーだけで良いんだが...」 「じゃあ、もう準備できてるよ。どうしよう、着替えはお父様ので大丈夫かな?」 「それは私が用意しよう。少し大きいとは思うが、我慢してくれ」 の父がそう言い、イザークはそのままバスルームに案内された。 シャワーを浴びてすっきりし、の父に声を掛ける。 は着替えて平易な服装になっていた。 「何か飲む?コーヒーとか、紅茶とか」 「コーヒー、もらえるか」 イザークの言葉に「了解」と返してはキッチンに立った。 イザークはタオルで髪を乾かしながらリビングのソファに腰掛ける。 「狭いでしょ」 不意に声を掛けられる。 「え?」 イザークが聞き返すと、 「ウチ、狭いでしょ?」 と改めてが言う。 首を傾げて少し考えたが、「そうでもない」と返した。 「だって、イザークの家って今日の伯父さまの家くらいあるでしょ?」 そう聞かれて、もう少し大きい、と思いながらも「まあな」と返す。 コーヒーが入ったマグカップを持ってがやってきた。 「どうぞ」と言いながら手渡され、イザークはそれを口に運ぶ。 何だか凄くリラックスした気分だ。 「なんと言うか。家族が家の中に居る気配が分かるだろう、この家は」 は頷きながらイザークの隣に腰掛ける。 「それくらいが丁度良いんじゃないか。ウチは、家人が居るから家の中に人の気配があるだけで、居なかったら母が家に居るのかどうかも分からないからな」 「なるほどね」と言ってもコーヒーを飲んだ。 「先ほど、カイン殿から伺ったんだが。ずっと2人で過ごしていたらしいな」 が首を傾げる。 「父と子で家のことを全部していたと聞いたぞ。だが、カイン殿が軍に居たときは、どうしてたんだ?」 「幼稚舎にも寮があったし、休みのときは、まあ、私がしてたわね。家を掃除して、洗濯して、ご飯作ってとかでしょ?」 の言葉に「凄いな」とイザークは感心して呟く。 が首を傾げると 「つまり、そんな幼い頃から色々と出来ていたということだろう?」 「ま、あ...そうね。誰もしてくれないから自分がするしかないし。ご飯がないと生きていけないでしょ?」 尤もだが... そう思っていると突然が 「そういえば、イザークは朝食に拘りないよね」 と聞いてきた。 「ああ。これと言って特には」 イザークの返事に「オッケー」とは返事をしてにこりと微笑んだ。 |
桜風
08.1.1
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