| は軍本部に戻ってあらかた仕事を片付けて病院に戻り、イザークをつれて夕方になってアークエンジェルに向かう。 朝来たときとは違って、医務室は静かになっていた。 艦長に挨拶をしてキラ・ヤマトへの面会を許可してもらう。 ブザーを鳴らして部屋に入るとラクスがいた。イザークの包帯姿を見て少なからず驚いた表情を見せた。 とイザークは敬礼を向ける。 ラクスは微笑んで頷き、「お怪我を、されたのですか?」とイザークに問う。 「いいえ」とイザークは頭を振り、「傷を消しました」と言った。 イザークの傷のことは、意外にもザフトの中でも有名な話で、だからラクスも知っていた。 ラクスはイザークの言葉を聞いて微笑み、「では、わたくしは少し席を外しますわね」と言って医務室から出て行った。 「初めまして、という挨拶にさせてもらうわね。・です。ジョシュアではお世話になりました」 敬礼を仕掛けたが、礼をすることに切り替えた。 「いいえ。僕のほうもマリューさんから聞きました。アークエンジェルを守ってくれたそうですね。...フレイも」 キラの言葉には頭を振る。 「お相子です」 そう言ってイザークを振り返った。 イザークはイザークでやっぱりその性格から微笑みあって会話をするような雰囲気はかもし出していない。 が、 「俺は、借りを返せていない。だが、いつか必ず返す」 と言った。 「いいえ、フレイのシャトルをアークエンジェルに運んでくれました。あのままだと戦闘に巻き込まれていたかもしれません。だから、ありがとう。十分です」 素直に礼を言われてイザークは一瞬面食らって、そしてフン、と顔をそらした。 「オーブに、降りるんですか?」 が聞く。彼は、コーディネーターだと聞いた。 「はい。今度こそ、静かに暮らしたいと思っています」 「そうですか」とは返して視線でイザークに退室を促した。 イザークは「もういいのか?」と驚いた表情を浮かべたがが頷いたので部屋を後にした。 「あれだけのために来たのか?」 廊下に出た途端、イザークが驚いて聞いてきた。 「うん、ちゃんと顔を見てお礼を言いたかっただけだから」 イザークは何だか腑に落ちないといった表情を浮かべたが「そうか」と返して廊下を歩いた。 「すみません、わざわざお越しいただくことになって」 バルトフェルドが頭を下げる。 「いつかも聞いた言葉だな」 そう返したのはホーキンスだった。 「本当に」とバルトフェルドも頷く。 「除隊申請書だ。一応、エターナルの乗員で離反したものもまだザフトに籍がある。復隊に関しては、除隊していないのだから手続きは必要ないが、辞めるやつは手続きを踏んでくれ。色々と建て直しのために把握しておかないといけないからな」 といいながらバルトフェルドに除隊申請書を渡した。枚数から言って乗員全員分ある。 「ありがとうございます。実は、そのご相談をしなければと思ってお呼び立てをしたのですよ」 「だろうと思った」と言ってホーキンスは溜息を吐く。 「それと、もうひとつ。私も相談を受けてどうしたものかと思っている人物がいるのですが」 と言って部屋にいる人物を振り返った。 「来たまえ」とバルトフェルドに声を掛けられておずおずと寄ってくる。 「彼女が、プラントに残りたい、と。ただ、彼女は...」 「ナチュラルか」と呟いてホーキンスは溜息を吐いた。 「名前は?」と彼女を見て声をかける。 「ああ、彼女は」と代わりに名乗ろうとしたバルトフェルドを手で制してもう一度「名前を聞いている」と少し語気を強めていった。 「フレイ。フレイ・アルスターです」 少しおびえながら彼女が言う。 「フレイ、ねぇ...ああ、オレはヴァン・ホーキンスだ。ところで、何で地球に、オーブに下りないんだ?オーブは良くしてくれるぞ、きっと。元々そういうお国柄だしな。プラントと違って支援してくれる国もある。プラントは自力でこれから何とかせんといかん」 フレイは俯く。 「なぜ、プラントに留まりたいんだ、君は」 「昨日、にオーブに帰りたくないって話をしました。そしたら、自分の未来を描いてみて考えたら、と言われました。だから、未来を描いて、考えました」 俯いていたフレイが顔を上げてホーキンスの目を見る。 「私、確かにオーブには家があります。友達もいるから、寂しくありません。けど、甘えちゃうと思うんです。今まで父が生きていたときにはずっと周りに甘えていました。みんな、それを許してくれていたから。でも、もう父はいません。友達に甘えることもできません。みんなも、大変なのだから」 「まあ、所謂自立のために、故郷から離れるということか」 ホーキンスがそう呟いた。フレイは頷く。 「じゃあ、例えばプラントに留まることができるようにオレが何とかしたとして。その後、君は誰にも甘えることなくひとりで生きようと思っているんだな?」 「その、つもりです」 しっかり頷くフレイに向かってホーキンスが破顔した。 「ダメだな」 「何でですか!」 ホーキンスの言葉にフレイは食いつく。 「ガキは一気に大人になろうなんて思ったら変な、それこそ腐った大人になる。プラント、我々コーディネーターは13歳で成人とされる。その実、親は子離れできていないし、子もまた然り。体だけが成熟して、精神は君たちナチュラルとそう変わらない。もしかしたら、ナチュラルのほうが精神的に成熟できている割合が高いかもしれない」 ホーキンスの言葉にフレイは首を傾げる。バルトフェルドは彼が何を言わんとしているのかなんとなく分かった。 「君は、何ができる?」 「何..ですか?えーと」 「メカニック」 「できません」 「研究者」 ホーキンスの言葉にフレイは首を振った。 「教師」 「コーディネーターのほうが知識は上です」 「それもそうか。んー...何が、できそうだ?」 「ドミニオンでは、CICをしていました」 彼女の言葉に少し驚いて 「ザフトに入りたいのか?」 とホーキンスが聞く。 「そういうわけじゃ...」と言葉を濁してフレイは首を振った。 「食事は、作れるか?掃除、洗濯」 ホーキンスの言葉にフレイは首を傾げる。 「掃除と洗濯は、たぶん。なんとなく出来そうな気もしますけど。食事は、作ったことないから」 と答えるフレイにホーキンスは驚いた。 「本当に、お嬢様だな」と呟く。 「ま、殺人的にまずいものを作るわけじゃないんだろう?じゃあ、決まりだ。オレの家でハウスキーパーしないか?」 ホーキンスの提案に目を丸くする。 「まずは、プラントでの生活に慣れろ。それから、自分の出来るものを探して自立すればいい」 「でも、えっと...」 「年はいくつだ?」 困惑するままフレイは「15です」と答えた。 「と2つ違いか...」と言いながら頷く。 「戸籍がないと不自由だし、うちの養女になるか?」 ホーキンスのその提案にフレイは目を丸くした。 「え、でも...」 「まあ、その返事は今すぐでなくてもいい。君がプラントに残ることに関しては了解した。必要な書類や手続きについては確認しておこう」 そう言ってホーキンスは部屋を後にした。 フレイは呆然とホーキンスの背中を見送る。 バルトフェルドを見上げた。 「私の印象ではいい人だ、ということだけは言っておくよ。あとは、君が決めることだ」 バルトフェルドもそう言って部屋を後にした。 残されたフレイはそのまま2人が出て行ったドアを見つめていた。 |
桜風
08.8.11
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