| イザークとがアークエンジェル内を歩いていると呼び止められた。 「アスラン」 「イザーク、どうしたんだその包帯...」 アスランが目を丸くして聞いた。 経緯を話すとアスランは少し嬉しそうに微笑んだ。イザークはそれが気に入らないため、ふんと鼻を鳴らした。 「そうそう。さっきホーキンス隊長に会ったんだ。イザーク、明朝0800に評議会のカナーバ議員の執務室にイザークと2人で出頭するように言われた」 アスランの言葉にイザークは頷いた。 「明朝、0800にカナーバ議員の執務室だな。了解した」 「じゃあ、私はひとりでお祖父様のところに行こうっと」 の言葉にイザークは眉を上げる。 「ちょっと待て。聞いてないぞ」 「後で言うつもりだったんだけど、お祖父様にはもう連絡してるから」 にこりと微笑んでは言う。 一触即発のような雰囲気になりつつあるこの2人を前に、ディアッカを呼んでくるべきかとアスランは途方に暮れた。 翌朝、イザークとアスランは評議会内にあるカナーバの執務室へと向かった。 ドアをノックする。 「入りなさい」という声を受けてドアを開けて部屋に入り2人は敬礼をした。 「掛けなさい」と進められて室内のソファに腰を下ろす。 「怪我でもしたのか?そんな報告は受けていなかったが...」 イザーク包帯姿を見たカナーバ議員が驚いた声を上げる。 イザークは首を振って「怪我ではありませんから」と短く答えた。 彼女は頷き、「さて、」と話を切り出す。 「ホーキンス隊長から貴方たちの話は聞いている。まず、イザーク・ジュール」 名前を呼ばれて「はい」と返事をする。 「議員に、なりたいそうだな」 彼女の言葉に頷いた。 「お母様の、エザリアの意思を継ぐということか?」 イザークは首を振った。 そして、自分の思っていたことを口にする。この戦争で、見たもの、聞いたもの。そして、感じたもの。 今のプラントに必要なのは軍事ではなく、政治的な和平だということ。 だから、自分は力を尽くしたい。 勿論、プラントの情勢が安定すれば議員を辞職することも話す。 「それは、無責任ではいのか?」 カナーバに指摘されてイザークは一度口を噤んだ。 だが、 「国の情勢が安定した後は、別のところからプラントに貢献したいと思っております。それが『何』かはまだ分かりません。しかし、私はエザリア・ジュールの息子です。あまり長い間政治に関わるといらない誤解と混乱を招く虞があります」 とイザークが答えた。 それから、イザークとカナーバはまた政治についての話を続ける。 暫くその話が続いた後、カナーバは溜息をつく。 「分かりました。では、イザーク・ジュールが議員になることについて、議会の議題にはあげましょう。そして、そのとき、もう一度ほかの議員の方たちにあなたの考えていること、思っていることをお話しなさい」 カナーバに言われてイザークは真摯に頷いた。 「さて、アスラン・ザラ。待たせたな」 そう言ってカナーバはアスランに視線を向ける。 「君は、どうするんだ?」 「私は、オーブに降りようと思います」 アスランの言葉にイザークが眉を上げる。まさか、と。 「一昨日、ホーキンス隊長と話をしました。隊長は私がプラントにいることは勧められないと仰いました。私も、そう思います。父のしたことに対して私がプラントで何も償うことをしないのは逃げていると思われても仕方ありません。無責任と責められても返す言葉がありません。ですが、私はプラントではなく、オーブで、現在の地球とプラントとの和平のために力を尽くしたいと思っています」 カナーバは頷く。 「分かりました。ホーキンス隊長にもそのようにお伝えしよう」 そう言って立ち上がる。 「少し、時間は取れるか?付き合ってほしい」 彼女の言葉にイザークとアスランは顔を見合わせて頷いた。 カナーバがイザークとアスランと共に出かけることに対して側近はまたしても渋面を見せる。 しかし、護衛についても良いと言われて承諾した。 車に乗り込み、目的地へと向かう。 「先に、言っておかなければならない。イザーク・ジュール。エザリア・ジュールについては前向きに検討中だ。だが、その際。・の名前を出させてもらうことになるだろう。彼女がプラントを守ったことはプラント中の人間が知っているからな」 イザークは目を瞠ったまま言葉が出ない。 「本人からの承諾は受けている、とホーキンス隊長が仰った」 「待ってください!」 イザークが思わず声を上げる。側近がイザークに銃を向ける。 カナーバはそれを制した。 「なぜ、彼女の名前が...」 「今言ったとおりだ。彼女は、今やプラントの英雄だ。プラントへの核攻撃を防ぎ、そして、ジェネシスも壊した。プラントの平和を守ったのだ。彼女の名前にはそれだけの価値がある。君は、エザリアの息子だ。納得する議員は少ないだろう。ただ、・との婚約は解消されていないと聞いた。つまり、君の傍にはプラントを守った英雄がついているということだ」 まさか、がそんな存在になっているとは思っていなかった。 いや、思ってはいた。ただ、すべて想像の中でのことだ。こんなに具体的に彼女の名前が使われるなんて想像していなかった。 「これが、政治だよ。使えるものは使う。彼女は、それを理解している。そして、受け入れているのだ。君と違ってな」 イザークはカナーバから視線を外した。 自分の考えがどれだけ甘かったか、突きつけられた。 |
桜風
08.8.11
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