Like a fairy tale 102





カナーバにつれられていった場所は墓地だった。

彼女の案内でその中を歩く。

途中、護衛を待たせた。

渋る彼らに

「ここからなら我々の様子も見れるだろう。この子たちが変なことをしたらそのままそこから撃ち殺すことも出来るだろう。それとも、狙撃に自信がないのに私の護衛をしているというのか?」

と告げてそのままイザークとアスランを連れてひとつの墓標の前で足を止める。

花を捧げて胸に手を当てた。

イザークとアスランは敬礼を向けた。


「ここは...?」

アスランが問う。

「昔話を聞いてくれるか?」

彼女の言葉に困惑しつつも2人は頷いた。

「私には、兄がいた。7つほど年上でな。私の両親は私が5つのときに亡くなった。事故だった。本当に」

カナーバが昔話を続ける。

カナーバの兄はちょうど成人した年だったが、彼女を養える術を持っていなかった。

だから、士官学校に入った。

士官学校は学生でも給金が出る。それを、彼女に仕送りしていたという。

「昔の士官学校、今はアカデミーになっているが。昔は卒業までに2年かかっていたのは知っているか?」

彼女の言葉にイザークは首を振ったが、アスランは頷いた。

「父から、そう聞いたことがあります」

カナーバの兄は、そこで恋をしたという。

ひとつ上の、メカニックだ。

彼女もまた、兄に恋をした、と。

2人は彼女が卒業するまでの半年間を本当に幸福に過ごしたという。

カナーバは兄に彼女を紹介されて、そしてそのときの兄の表情を見てそのときすでに兄が彼女と結ばれるんだと思っていた。

そして、先に卒業をした兄の恋人はザフトで兵器の開発に従事していた。

そんな中、事故が起こった。

整備中のエンジンが暴発してしまったという。

彼女はその事故の中心部にいたため、亡くなった。

「兄は、抜け殻のようになった。私もどう声をかけていいかわからなくて、結局何も出来なかった」

そんな中、親友の2人だけは彼の傍にずっといてくれたという。

「人づきあいに関しては、本当に及第点はあげられないと兄は笑って言っていた。けれど、士官学校での成績は抜群で。2人はそんなに仲良くなさそうに見えたのだけれど、どうしてか兄の友人という共通点を持っていた。さっきも言ったように人付き合いが苦手な彼らは兄に何も言わなかったらしい。ただ、一緒にいてくれたと」

兄にとって、それがどれだけ嬉しかったことか、と。

家族である自分が出来なかったことを他人の、兄の親友たちはしてくれた。

そして、兄は何とか立ち直った。

「兄上殿の、親友とはどのような...?」

イザークが問う。

「ひとりは10歳以上も年上で。最初は教師をしていたらしい。ただ、当時のプラントと地球との情勢を考えて、プラントを守らなくてはと進路を変更されたらしい。もうひとりは、兄より3歳年上だったか。愛想のない、堅物に見える男だった。けれど、彼らは共通してただ不器用だったようだ。ひとりは初恋の相手に、初めてのプレゼントに拳銃を贈ったらしい。兄はそれを聞いたとき天を仰いでしまったと話していた」

...どこかで聞いたことのあるエピソードだ。

イザークは首をかしげた。

「プレゼントを選ぶなら自分を誘えと話すと、今度はしょっちゅう借り出されるようになったと嘆いていた。本当に、不器用な人だ。ただ、まっすぐだ。もうひとりは、まだ恋愛が出来る程度には頭が柔らかかったらしいが、それでも一途過ぎて心配だと。兄は親友たちの恋愛に随分悩まされていたようだ」

そう言ってカナーバは笑う。

「兄は、私の結婚相手を探して、そしてカナーバ家を見つけてくれた。そして、私は結婚をしてアイリーン・カナーバとなった」


兄は、たくさん苦労をしたのだという。

けれど、それについて恨み言はひとつも聞いたことがない、と。

『子供を守ってやるのは、大人の仕事のひとつだ』と言っていつも笑っていたという。

「兄にとって何歳までが“子供”なのかは知らないが、その気質は今でも健在だ。お陰で本当にたくさん背負い込んでいる。私は幼い頃から兄に助けられて生きてきた。だから、返せる恩は返したいと思っているんだ」

そう言ってイザークとアスランを見て微笑む。

意外にも柔らかくて優しい微笑だったため、イザークとアスランは思わず赤面して視線を外す。

それに気づいてカナーバは笑う。

嬢にいいつけてやろう」

彼女の言葉にイザークはぎょっとして彼女を見ると笑顔を浮かべていた。

「君たちの未来は自分たちが描いているよりもかなり厳しいぞ。いろんな障害に直面するだろう。今現在そうだろうし、これからも分からない。兄が言うには、友人を大切にしろ、だそうだ。同じ目線で、同じ悩みを抱えて、相談できるのが友人らしい」

彼女の言葉に2人は頷いた。

「では、帰るか」

と言った彼女をイザークが引き止めた。

「なぜ、私たちに兄上殿のお話を...?」

「不思議に思っていないか?ホーキンス隊長がこんなに君たちのために走り回っている姿を」

ニヤリと彼女が笑った。

「まさか...」

「ヴァン・ホーキンスは私の兄だ。そして、兄を支えてくれていた親友は、パトリック・ザラと、カイン・だ。君たちの家族だよ」

2人は顔を見合わせる。

「私とホーキンス隊長が兄妹であることは、口外しないでくれ。お互い動きにくい。ああ、でも勘違いしないでくれ。兄は、最後までパトリック・ザラの味方だったよ。彼の言動は一切私に洩らしてはくれなかった。あとで考えたらいくつか忠告はくれていたが、私はそれを受け取れていなかった。そして、兄もまた、パトリック・ザラには信頼されていなかったようだ。私の、兄だから。何度か諫めたらしい。それでも、聞きとめてはくれなかった」

そう言って深く息を吐く。

「兄は、こうも言っていた。『パトリックとカインが羨ましい。憎むことの出来る相手がいるのだから』と。兄が亡くした両親と恋人は、誰も悪くない事故で亡くなった。パトリック・ザラとカイン・は両者とも、妻がナチュラルに殺された。憎む相手がいれば、目標を見失わずに済むからな」

そう言って寂しそうに微笑んだ。


帰りの車の中で彼女が言う。

「イザーク・ジュール。明日、エザリアに会えるように手はずを整えておく。時間は、また後ほど連絡をしよう。嬢と共に会いに行くといい」

カナーバの話を聞いてイザークは深く頭を下げる。

「大人は子供の世話を焼くものだからな」

彼女は満足そうに微笑んだ。









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桜風
08.8.11


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