| が本家を訪ねると、彼女を出迎えたのはなんと当主とその息子だった。 あまりにもにこやかに対応してくる彼らに思い切り不信感を抱く。 一応、それは態度には出さずにもにこやかに会話をしつつ案内される祖父の部屋へと向かった。 「お久しぶりです、お祖父様」 が敬礼をする。 「ああ、よく来たな。掛けなさい」 そう言って椅子を勧めた。 は静かにそこに腰を下ろした。 なぜか同室にいる伯父たちが少しだけ気になるが、放っておくことにした。 「色々聞いたし、見ていた。ご苦労だったな、」 祖父に労いの言葉を掛けられて頭を下げる。 「カインのことは...わしがもっとしっかり見てやっておけばと思ったよ」 祖父の言葉に少なからず驚いた。 一応、ザフトでも今回の父のことは意外にも知られていないのに。 「情報網は、まだ生きておるからな」 と言って苦笑いを浮かべる祖父になるほど、と頷いた。 「ホーキンス隊長が、動いてくださっています」 「ああ、それも掴んでおる。あやつは、技術や統率力はまあ、並の隊長程度だが、コネクションの網の大きさは半端じゃない。若い頃に苦労しておるから、得られたものだろう。カインにはないものだ。最も、困難で地道な努力が必要なものだ」 「はい」 「ホーキンスに伝えておきなさい。わしの名前が要るなら貸してやる、と」 は頷いた。 「は、この先どうするんだ?」 伯父が言葉を挟む。 祖父は眉間に皺を寄せた。 「ザフトは、今は混乱していますから。それが沈静化したら辞めるつもりです」 の言葉に伯父が「許さんぞ!」と突然激昂した。 さすがのも驚いて目を丸くする。 「パトリック亡き今、今こそがザフトを支配するときだ」 は目をぱちくりした。 「お前の名前は今やカイン如きが到底及ぶものではなくなっている。お前はジョンと結婚しての本家に入るのだ。いいな!あんなザラ派の、とっつかまった女の息子との婚姻は認めんからな!!」 顔を真っ赤にして叫ぶ伯父の言葉には静かに立ち上がった。 「私は、ザフトを掌握したいなどと思ったことは一度もありません。そして、私が夫と呼ぶ人は、イザーク・ジュール。彼、唯一人です」 抑揚のない声でが言う。 「許さんと言っているだろう!あんな小癪な小僧が!!まさか、お前は唆されたのか。あのガキ、母親が捕まり、それで、英雄と謳われるようになった貴様の名前が必要になって」 は目を瞑って静かに息を吐いた。 そして、伯父の顔をまっすぐに見て口を開く。 「それ以上、イザーク・ジュールの名を貶めようとなさるおつもりなら、私も黙っていることは出来ません。私は、イザーク以外の方を夫と呼ぶつもりはありません。これは、お祖父様が反対されても変わりません。世界が敵に回るというなら、それとも戦います」 伯父の顔はますます怒りによって赤くなる。 「きっさまー!この家から無事に出て行けると思うなよ。貴様は、所詮分家の小娘だ。カインは、妾の子。父上の慈悲でを名乗らせてやっているんだ。その恩を忘れて...!!」 「黙れ!!」 大きな声が部屋に響く。すら、驚いて肩を振るわせた。 だが、その怒りの言葉を受けたのは勿論伯父で、怒りで赤くなっていた顔は、今は恐怖によって蒼くなっている。 「わしは、にその話をするなと貴様に言っていたはずだ。それなのに、こんな簡単に口を滑らせよって。それに、カインが“”を名乗るのは当然だ。わしの息子だ。むしろ、あれの意思は無視して無理やりにでもこの家を継がせておったほうが良かったと今また後悔しておるわ。今すぐこの部屋から出て行け!当分、わしに貴様の愚かな顔を見せるな。いいな..何をしておる。早く出て行けといっておる!!」 伯父は転ぶように部屋から逃げていった。 「...すまんな、不快な思いをさせて。もっとマシにしておくつもりだったが、もう長年の性格はなかなか矯正できん。カインのことは...」 「知っていました。お祖父様。この家でお祖父様の緘口令を守る親戚は正直、いないんですよ?母の、亡くなった理由も知ってます」 の言葉に祖父は息を呑む。 「、まさか...復讐のためにザフトに...?!」 は笑顔で首を振った。 「お祖父様、お父様。2人が憎しみによって引き金を引くなとそれこそ耳にたこが出来るくらい口をすっぱくして仰ったじゃないですか。だから、お2人が仰っていたとおり、守りたいと思ったからザフトに入りました」 の言葉に安堵の息を吐く。 「そうか、すまんかった。それはそうと、イザークはどうした?」 「カナーバ議長と会談です。今後のことについてだと思います」 の言葉に祖父は頷く。 「そうか、残念だったな」 「イザークも、お祖父様に会いたがっていました」とが答える。 祖父は声を上げて笑う。 「違う、違う。それを言っているんじゃない。さっきのの言葉、イザークが聞いたらどんな反応をしていたかと思ってな」 と手を振りながら言う。 さっきの言葉、といわれては自分の発言を思い出し、羞恥のため赤くなる。 「お、お祖父様。イザークにはくれぐれも内緒に...」 「世界を敵に回しても、イザークを愛すと言い切ったのだからな。いやはや。あやつも幸せ者じゃな」 「ふっふっふ」と笑いながら続ける。 はオロオロした。 イザークに聞かれたらそれこそ恥ずかしくて憤死してしまう気がする。 そんな孫娘の姿に目を細める。 英雄と謳われるようになっても、変わらない。素直な、優しい子だ。 「今度は、イザークを連れて来い。...そういえば、先ほどの話しぶりからは、もう結婚を決めたのか?」 祖父に言われては視線をさまよわせてこくりと頷いた。 「そうか。では、式の段取りを決めねばな」 祖父の言葉に「は?」とは思わず変な声が漏れる。としては、籍を入れればそれで良いだろうと思っていたのだ。 「ノルンの、夢だった。お前には式を挙げさせるんだと、生まれた瞬間から楽しみにしていたからな。さて、まずはドレスを作らんとな。ああ、でも一応エザリアの意見も聞いたほうが良いだろう。いつになったらエザリア・ジュールの監禁は解ける?」 なんだかものすごく強引に話が進んでいる気がしては思わず窓の外の景色を眺めた。それは、アプリリウスのある方角だ。 イザーク、助けて...!! 心の中でイザークに助けを求めたのは言うまでもない。 |
桜風
08.8.18
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