| 祖父の家から帰るとイザークがいた。 明日、まだ時間は決まっていないがエザリアの元へと行けることになったことを伝えられる。 は嬉しそうに微笑んで頷いた。 偶然通りかかったホーキンスを見かけては駆け寄る。 祖父から聞いた言葉を伝えるために。 イザークはホーキンスを眺めた。 話をしても、なんとなく軽い感じがしていた。しかし、きっとそれは相手に気を遣ってのことだったのだろう。 そう思ったが、イザークはすぐさまその考えを取り消した。 「ホーキンス隊長、何やってるんですか!」 ホーキンスはを抱きしめていた。 はどうしたものかと固まっている。 イザークは無理やり2人を引き剥がした。を自分の背に隠す。 「いいじゃないか、ケチ」 「ケチで結構です!ったく、何をいきなりなさるんですか!」 「...カナーバ議員との話はどうなった?というか、もしかして傷を消したのか」 「傷は消しました。まだ包帯は取れませんが...あと、カナーバ議員との話ですが。後日、評議会の席で私の話を聞く時間を作ってくださるそうです」 イザークの言葉にホーキンスは「そうか」と頷いた。 そしてふと思い出したかのようにポン、と手を叩く。 「アークエンジェルとクサナギは、本日地球に戻るらしい。まあ、クサナギにはオーブの代表が乗っているからな。国を治めるのにとっとと戻りたいんだろう。エターナルはもう少し停泊の予定だ。が、ラクスは今回の便で降りるらしいぞ。アスランも。ディアッカはもうこっちにも戻す。オレの隊に一応入れた」 じゃあな、と言ってホーキンスは去っていった。 アークエンジェルとクサナギの出港時刻に港に向かった。 なぜかディアッカが未練たらたらでアークエンジェルを見送っていた。聞くところによると、あの船にはいい感じに距離が縮まった女の子がいたそうだ。 あのディアッカが?とイザークとは驚いて顔を見合わせる。 「会ってみたかった...」とが呟く。 「色々あったんだけどな」と苦笑いを浮かべてディアッカが返していた。 ドアが開いて、入ってきた人物を見て彼女は眉根を寄せる。 「何をしに来た?」 冷たく言う友人にカナーバは笑った。 「そう邪険にしないでもらいたい」 彼女は鼻を鳴らした。 それでも、数日前に比べたら随分と表情が柔らかくなっている。 彼女はコーヒーを淹れてカナーバに出した。 カナーバはそれをすんなり飲む。 そんなカナーバの姿に彼女は驚いた。 「毒が盛ってあるかもしれないとか思わなかったのか?」 カナーバは口角を上げた。 「そんなことをして何の得になるの、エザリア」 エザリアは肩をすくめて自分もコーヒーを口にした。 「で、最初の言葉に戻るけど、何をしに来たの?」 「明日、ご子息とその婚約者がここに来られる様に手はずを整えることにしている。突然来訪されて慌てふためきたくないだろう?」 彼女の言葉にエザリアは目を瞠る。 「待って。イザークはともかく、さんも?婚約はもう...」 解消したはず。 彼女の言葉にカナーバの表情が柔らかくなる。 「本人たちがそう希望しているんだ。反対してもたぶん、無駄だろう。ホーキンス隊長の話だとな」 「でも、私はこんな...」 監禁されている状況をさして言う。監禁されているとはいえ、その原因を作ったのは自分以外の何者でもない。 自分は罪人だ。 「だから、あなたのことは関係なくて、本人たちの希望。意思なのよ」 カナーバは笑う。 エザリアのこんな表情は中々見られるものじゃない。 「それに、貴女は失望するかもしれないけど。嬢の活躍は知ってのとおりだ。彼女の名前がないと貴女をこのまま釈放できない」 エザリアは悔しそうに顔を歪めた。 カナーバは笑う。 「何が可笑しいの。私が、惨めだから?」 キッと睨んだ。 「違う。本当にご子息はあなたに似ていると思ってな。性格はヴィンセント殿似かとも思っていたが、あなたにも十分似ている」 ゆったりとカナーバが答えた。 その答えにエザリアは目をぱちくりした。 「イザークを知っているの?」 「話をした。あなたのことを心配している。彼は、プラントと地球の和平のために議員になりたいと言って来ている」 カナーバの言葉にエザリアは眉を上げた。 「それは、難しいのでは...」 呟くように呆然と言った。 「ええ、難しいわね。けど、彼はそれを承知の上で、その道を選ぶことを決めたのよ。だから、今度開く評議会で彼の話を聞く場を設けることにした。それで、議員の方たちが納得したら彼はマティウス市の代表で、と思っている。正直、議員数が激減しているから」 エザリアは俯いて両手で顔を覆った。 「良いご子息を得られたわね。悪いけど、もう行くわ。こう見えて、忙しいの」 そう言ってカナーバは立ち上がる。 ドアに向かっていく途中背後から微かに声が聞こえた。「ごめんなさい」と。 カナーバは振り返る。 「言葉が違うんじゃないか、エザリア」 カナーバの言葉にエザリアは顔を上げある。 「...あり、がとう」 涙で濡れた顔を歪めてそう言った。 昔からカナーバとエザリアは性格が合わない2人だった。 けれど、お互い嫌いではない。 相反するからこそ、認めている何かがあった。 「どういたしまして」 カナーバは微笑んで部屋を後にした。 |
桜風
08.8.18
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