Like a fairy tale 3





その日の遅く、ディアッカとニコル、そしてラスティから通信が入った。

「オレは、ともかくなー」とディアッカが言う。

ディアッカは今でも『ザフト』だ。だから、現在進行形で軍人の自分が軍事法廷にかけられても何の疑問もない。

納得できるか出来ないかはさて置き。一応、立場上は。

だが、ニコルとラスティの困惑は絶望にも似たそれだった。

彼らは、今は新しい道を歩んでいる。そんな中、今更開かれる軍事法廷で今まで培ってきたものをあっさり壊されるかもしれない。

そして、全員が共通して驚いたのが、への出頭命令だった。

プラントを救った英雄とされている彼女が何故?

「イザークはともかく、のは間違いじゃないの?」

ラスティが言う。

イザークもそれには頷いた。

の名前があったから、イザークは評議員としてプラントのために尽力することが出来たし、母のエザリアだって早々に釈放された。

「それに、は殺してないだろう。一度も」

「ううん。核を持った機体は落としていったからね」

意外にも落ち着いているに男性陣は首を傾げる。

軍事法廷の出頭命令を受けたときからは、これがパフォーマンスだというのことは何となく気づいていた。

だが、本当にパフォーマンスになるために確約を取りに行かねばならない。

「守らないとね」

「何か言ったか?」

皆と通信している途中でが呟き、イザークが聞き返す。

肩をすくませて「何も」というの表情を見て、イザークは何かあるな、とも思ったがどうせまた軽口だろうと流した。



出頭命令の時間、懐かしい顔ぶれが揃う。

皆の無罪放免が決まっているのを知ってるは何だか同窓会みたいだなと平和なことを思っていた。

そして始まった軍事裁判。

デュランダルのパフォーマンスが始まる。

は思わず鼻で笑う。デュランダルの言葉は昨日のホーキンスの言葉だ。

神妙に聞くイザークには少しだけめまいを覚えた。

本当に、素直というか、単純というか...

きっとザフトに戻ると言い出すのだろう。

今は、ザフトの機関に勤めているが、正しくはザフトではない。

だから、正式に復隊を考えるに決まっている。そして、には大人しく家でノルンを守れというのだろう。

そんな姿が容易に想像でき、は嘆息を吐く。

そして、自分が復隊するといったら怒鳴るに決まっている。危ないから、と。自分が守るから安心しろ、と。

別に、イザークが頼りないなんて思ったことは一度もない。...と思う。

ただ、今回は昨日のことがあるため、が復隊しなければまた別の手を使って彼は復隊を迫るだろう。それこそ、娘の命を危険にさらすに決まっている。そんなことを一々躊躇ってくれそうにない相手だ。



「何を言っている!」

ほら、来た。

は首を竦めた。

ジュール邸に戻るなり、はイザークに復隊の意思を伝えた。

イザーク自身も、復隊を考えていたらしいが、それとこれとは話が別だ。はノルンの母親で。

だから、ノルンを守ってやれるのはだ。

イザークはそう思っている。

別に、育児を妻に押し付けるつもりなど毛頭ない。むしろ、自分も率先して育児に手と口を出したいと思っている。

だが、あの議長の言葉を聞いて、このままではいられないと思ったのだ。

が家に居るから、俺は安心できるんだ」

何とか説得を試みる。

「そんなの、私が復隊してイザークが家を守ってくれてもいいでしょう!?」

軍事法廷のこともあり、両者の親もその日はジュール邸に泊ることになっているため、その場に同席していた。

イザークが怒るのも無理はない。幼い、それこそまだ1歳の娘を置いて両親が戦場を駆けるなど。どちらかでいいならそうした方がいい。

カインは娘の表情を注意深く読み取ろうとした。

今の生活はが望んで守った未来だ。

それを簡単に手放すなど、自分の娘が言うはずがない。ほしい、守りたい未来のために実の父親たる自分に銃口を向けた子だ。

エザリアは激昂した息子を窘める。

エザリアは釈放されてすぐに家を出た。

別に家を出なくても、とイザークとは止めたが、自分には監視の目がつく。そんなのにまとわり着かれて生活するなど落ち着かないだろう、と。

だから、隣のプラントの別荘で生活をするといって、古い馴染みのメイドなどを引き連れてさっさとこのジュール邸を後にした。

とイザークの間に子を授かったと聞いて以来、頻繁にジュール邸に来るようにはなったが、それでも、今では客人だ。

いつもこの2人を見ていたわけではないが、とても安心できる仲睦まじい夫婦だと思っていた。

まあ、息子の短気さや、その嫁の飄々とした性格も何だか見慣れてしまえば平和そのものだと思っていた。

しかし、その平和そのものだった2人に降りかかった軍事法廷をいう名の災厄が事なきを得たのに、ここで夫婦喧嘩とは...

エザリアはカインを見た。

その視線に気づき、カインは息をつく。

「まあ、2人とも落ち着きなさい。ノルンが聞いているぞ。しゃべれなくても、子供は言葉を理解しているのだからな」

その一言で2人の舌戦はピタリと止まった。

そろりと娘の居る寝室に2人は視線を向ける。

お互い今度は視線で喧嘩を始めた。

器用なことだ...

カインは肩を竦めてもう少し様子を見ることにした。










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桜風
08.12.1


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