Like a fairy tale 6





イザークは真新しい制服に袖を通す。

今回、辞令を見たときには驚いた。イザークが着ている制服の色は『白』だ。

本部へ向かうと見慣れた人物を目にした。

但し、彼の制服の色も変わっている。『緑』。

「よー、似合うじゃん」

からかう様にディアッカが声をかける。

「ああ」とイザークは適当に応えた。

「母艦の受領。早くしてくれよ」

「今そのために来たんだろうが!」

イザークが怒鳴り、緑色の制服に身を包んだディアッカが首をすくめる。

イザークはディアッカの服の色が気になってはいたが、それには触れないで置いた。第一、服の色が変わったからと言って彼が変わるわけではない。

「“”が復隊したってもっぱらの噂だぜ?」

ディアッカの言葉にイザークは深い溜息を吐く。

「よく許したな。イザークは大反対するって思ってたけど」

「大反対したら家出したんだ、あいつは!」

ディアッカは思わず足を止めて「へえっ?!」と頓狂な声を洩らす。

「何だ」と不機嫌に先を行くイザークが振り返った。

「や...マジ!?」

「ああ、本当だ。全く!」

ぶつくさ文句を言いながらイザークの歩調が速くなる。

そんな彼の背中を眺めながらディアッカは溜息を吐いた。



実は、ディアッカは偶然だがに会っている。



彼女が復隊したという噂を聞いて間もない頃だった。

たまたま本部の廊下ですれ違ったときには思わずそのままスルーをしてしまうところだった。

少なくとも、はディアッカに気づいていなかったようだ。

「おいおい、無視すんなって」

そう言ってディアッカが彼女の腕を掴んでやっとはディアッカとすれ違ったことに気がついた。

「あら、色が違う」

「ああ、これ?」と言って腕を広げて、ついでにくるりと右足を軸に一回転した。

「うん。珍しい色。でも、案外似合うね。落ち着いた色だから、それなりに落ち着いたディアッカが着てもおかしくないね」

の言葉に苦笑した。

「オレがすげー年寄りみたいじゃんかよ」

「それは失礼」とは恭しく頭を下げる。

「噂には聞いてたけど、本当だったんだな」

何を指しているのか理解したは苦笑いを浮かべて頷いた。

「しかも、“”って...“ジュール”は嫌だったのか?」

「や。何と言いますか。ネームバリュー重視?」

の言葉にディアッカの眉がピクリと反応した。

何があってもそういうことは言わないのがだ。だから、今の発言には非常に違和感を覚えた。

「何か、あったのか?」

ディアッカの言葉には目を丸くした後、ディアッカを指差した。

それはまるで「鋭い!」とか「そのとおり!」とかそういった感じだった。

しかし、その正解を口に出さない。

「イザークは知ってるのか?」

「ううん、知らない」

「何で!?永遠の愛を誓った仲だろう」

「...ちょっと、恥ずかしい表現止めてよね。愛だけじゃ何も出来ないことが世の中多々あるのよ。愛が溢れててもおなかが減るのがその証拠」

「何。稼ぎ少ないの、イザーク」

「それ、イザークに言ってごらん。通常の2倍くらいの音量で怒鳴られるよ」

「だよな」とディアッカが納得する。

イザークも復隊すると聞いている。それは、あのデュランダル議長の言葉を聞いて決心したもので、それ以前のイザークの仕事には全く彼自身不満があったわけでもない。

休みは取れるし、屋敷を維持できるだけの給金だってもらっている。

正直、いい就職口を見つけたと感心したくらいだ。

「じゃあ、何で?、戦争嫌いだよな」

「ええ、嫌いよ。何で態々愛娘を置いてこんな、ねえ?でも、仕方ないの。私はそれを選んだのだから」

困ったように笑うに、きっとそれを選ばなければならない何かがあるのだろうとディアッカも想像できる。

「今思ってること、イザークに言っちゃダメだからね」

ディアッカは目を丸くして「なんで?」と声を出す。

は何も言わずに人差し指を唇に当ててウィンクをした。

「へいへい。ったく...」とディアッカは諦めモードに入った。

今まで何度となくイザークとの間に入ったディアッカとしてはあまり詮索しないのが身のためだと推測できる。

「ま、こじれる前にちゃんと説得しとけよ」

ディアッカの言葉には「あはは」と乾いた笑いを洩らす。

「もう手遅れ」

の簡潔な返答に「おいおい」と呟く。

「離縁状叩きつけられるかもしれないんだよね、実は」

の言葉にディアッカは天を仰いだ。

「適当なところで仲直りしておけって」

「心に留めておきます」

そう言っては笑い、「じゃあね」と去っていった。



まさか、あのときの会話をイザークに話す気にはなれず。

ってか、話したらオレが何故か怒鳴られるに決まってる...

という思いからディアッカはのことには触れないようにした。

「そういや、ノルンは?」

「母上が帰ってきてくださっている」

「なるほど」とディアッカは納得した。

「全く、何てやつだ!」

のことを思い出したのか、イザークがまたしても毒づいている。

しかし、ディアッカはそのイザークの態度に苦笑を洩らす。

変わっていない。

を心配するときにはいつもこんな感じだ。

「早く仲直りしろよ」

思わず呟いたディアッカの言葉に「何か言ったか」とイザークが聞き返す。

「いや、何も。ほら、早く母艦!」

「分かってる!!」

イザークは歩調を速め、それにあわせてディアッカも歩調を速めた。









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桜風
08.12.8


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