Like a fairy tale 11





C.E.73.10.2

ミネルバの進水式を翌日に控え、アーモリーワンのザフトの施設内は慌しさを増していた。

噂の新型機も本日搬入されると連絡を受け、メカニックたちがドック内で最終確認を行っている。

はいつものようにノルンのコックピットのシートに座ったままその様子を眺めていた。

通信が入り、開くとルナマリアからだった。

先日の模擬戦以降、彼女はに懐いてしまったようで、事あるごとに声をかけてくる。

「どうしたの?」

「明日、進水式だから今日までしか時間がないんですけど」

そういえば、先日進水式までに付き合ってほしいといわれたことがあったのを思い出す。

は肩を竦ませて「もうちょっと待って。手が空いたらこっちから連絡入れるから」と返した。

「もういいです。他の誰かに付き合ってもらいますから」

拗ねたようにそう言って通信を切られてしまった。




暫くして警報が基地内に鳴り響く。

はコックピットから乗り出して下方のメカニックに声をかけた。

「どうしたの!?」

「分かりません!」

...そりゃそうだ。今鳴り始めた警報だ。

は納得してコックピットを後にしてパイロットスーツに着替えることにした。

更衣室でちょうど着替え終わったときにブリッジから連絡が入った。

どうやら待ちに待った新型機が何者かに強奪されたとの事。それを何としても取り返すという話らしい。

、ノルンは出られるのね』

「はい。可能です」

『じゃあ、お願い。インパルスもパイロットが戻り次第出すから』

艦長の言葉には頷き、

「最優先で取り戻す機体はありますか?」

と一応聞いた。

しかし、返答は思ったとおりで

『全機、最優先よ』

という簡潔な回答に敬礼をしてドックを目指した。


メカニックたちにはすでに連絡が行っていたようで、装備も整えられている。

『ノルン、発進どうぞ!』

オペレーターの声が懐かしい。

。ノルン、出ます!」

はそのまま上空へと上がり、地上を見下ろして戦況を確認した。

戦況なんてものはない。

ただ、ザフトはやられっぱなしだ。殆どのハンガーが壊されている。これでは、動くMSは殆どないだろう。

そういえば、ルナマリアとレイの機体は外のハンガーで整備を受けていたのだと思い出す。

「壊れてなきゃいいけどね」

は呟き、そしてひとつ『戦闘』になっているものを見つけた。

黒い機体、確か資料で見たことがある。『ガイア』と、量産型のザクウォーリアが戦闘らしきものを行っている。

そして、別の機体『カオス』がそのザクの背後に現れる。

はガイアに向かってビームライフルを撃った。

ザクウォーリアはカオスの攻撃により左腕を損傷したが、間一髪で間に合ったミネルバに配備されていたザフトの新型機『インパルス』によってその危機を救われた。


!」

インパルスから通信が入る。

「援護とそのザクの回収、どちらがいいのかしら?」

「両方!」

簡潔なシンの一言に「はいはい」と返して地上に降りた。「ノルンは空中戦のほうが向いてるのに」とブツブツ文句を言いながら。

ガイアと戦闘を展開しているインパルスの文字通り援護射撃を行う。

さすがにブランクがあるからこんなに動いている機体は狙いづらいなと思いつつも今まで培ってきたノルンの経験もあって、四足獣形態になったその足を狙う。

時折ガイアの援護射撃をしてくるカオスの動きを封じつつもガイアをインパルスと共にガイアを追い詰めていった。

しかし、敵機となったガイアを遠慮なく攻撃しているシンに副艦長から「命令は『捕獲』だ」という通信が入った。

としては少しくらい壊れていてもいいのかと思っていたが、そうでもないのかもしれない。

一方、副艦長から再び念を押されたシンは逆切れを起こしていた。

何故、こんなことになったのかと。こんな簡単に敵に強奪されて、と。

「そんなこと今更言っても、取られたんだから。ほら、捕獲。少しくらい壊れてても元のデータがあったらたぶん直るし、戦闘データが取れて一石二鳥よ。...たぶん。破壊しない程度に壊しなさい。演習じゃないのよ、全部実弾、切られれば壊れるし、コックピットを撃たれたら死ぬのよ」

の言葉にシンは少しむくれて戦闘に集中した。

「艦長、」とがブリッジに連絡を入れる。

「何?」

「強奪部隊なら、外に母艦なり何なりあると思うのですが...」

「ええ、それは今確認中。とにかく。少しくらい壊れててもいいから、取り返して」

艦長のその言葉に「えぇ!?」という副艦長の声が漏れて聞こえたが、は「了解しました」と返して通信を切った。

しかし、後方のザクが気になる。

とシンが来てから全く動いていない。

いや、動いているが、戦闘に参加してこない。

ザク自体は動いているのだから、パイロットが意識を失ったとか、居なくなったとかはないと思うのだが...

『こちら、ミネルバ所属パイロット、です。パイロット、応答を願います』

あまり自己紹介したくないと思っていたのだが、パイロットが負傷している上に重症だとそれはまずいだろうと思い、さらには、別に異常がないというのなら、少し協力してほしいなという思いもあって通信を入れてみた。

しかし、その通信に出た人物には思わず開いた口がふさがらなかった。









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桜風
08.12.15


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