| カガリやアスランにもブリッジで戦闘を見てもらいたいという議長の言葉に艦長は渋々だが従った。 そのため、アスランはブリッジでこの戦闘を見ることになってしまった。 しかし、今回の作戦で出撃するの中にノルンがいないことにアスランは少なからず驚いた。 こんなデブリの傍なら射撃が得意なが出たほうが堅実だ。 艦長はの射撃の腕を知らないのだろうか。 実際目の当たりにしなくても、彼女のその腕は疑う余地のないものだろうに。 「ボギーワン。あの船の本当の名前は何と言うのだろうね」 不意に議長が呟くように言う。「は?」とアスランが聞き返した。 が、それに応えることなく議長は言葉を重ねる。 「名はその存在を示すものだ。ならばもし、それが偽りの名だとしたら。それはその存在そのものも偽り、ということになるのかな。アレックス。いや、アスラン・ザラ君」 挑発するような視線を向けられ、アスランは驚いたように目を開く。 ブリッジの空気もその議長の口にした名前に俄かにざわめいた。 カガリがアスランをかばうように言葉を発したが、議長は別にアスランを咎めるつもりでそういったのではないという。 彼に対するカナーバ前議長の措置は承知している。が、どうせなら本当のアスランと話がしたいと思っていると告げる。 アスランは、奥歯を噛み締めた。 ブリッジのクルーが未だ進路を変えないボギーワンに疑問を抱く。 それを聞いてアスランは思わず「デコイだ!」と叫んでしまった。その直後、自己嫌悪に陥る。 ロストしたボギーワンが現れたのは、ミネルバの後方からだった。 MSとボギーワンからのミサイルとレーザー砲の攻撃を受ける。 残りの機体を発進させる陽に命じられたメイリンからコックピットに通信が入る。 メイリンの状況説明を聞いて 「ああ、デコイだったのね」と事もなさそうにが言う。 まだその説明までしていなかったのに、と少し驚いたメイリンだが、艦の動きのせいで発進できそうにないという。 「一瞬開けてくれたらノルンくらいなら出られると思うけど、下方のハッチは開けられないの?」 の言葉を艦長に伝える。 「出来るの!?」 艦長が直接通信した。 その後方に居る人物を見ては目を丸くする。 が、 「出来る、出来ないではなく。やる、やらないです。よって、やりますよ」 とは返す。 思わず艦長がアスランを振り返った。彼はのことをよく知る人物だから。 「は、射撃も得意だ。こういいう地形での戦闘はノルンが出たほうがいいと思います。重力がないところでは、ノルンはかなり速いですし」 アスランの言葉を受けて艦長が頷く。 「分かったわ。とにかく、あの艦の足止めをお願い。後ろを取られたままだと分が悪すぎるわ」 「了解」 メイリンに下方のハッチを開くように命じて、艦長は再び戦闘の指揮を執る。 「さん」 メイリンに声を掛けられた。 足元の床が開く。 ちょうど真下に張り付いていた機体と目が合い、ノルンはそのまま降下して武器を持つ手と頭部を撃ち落して後方へと駆けた。 ボギーワンからミネルバに多数のミサイルが向けられた。 直撃コースではなさそうだと思い、はそのままボギーワンに向かいかけたが、ミネルバの位置を見て思わず止まり、振り返って今しがたミネルバに向かったミサイルを撃ち落す。 「ミネルバ、そこから離れて!」 の通信にメイリンが応じる。 「岩のシャワーに埋もれます!」 ついでに何故かという理由も付け加えて第2波を撃ち落した。 ミネルバの下方に着弾するミサイルよりも上方や横に着弾する軌道のミサイルを狙う。 不意にノルンにアラートが響く。 振り返ればガンバレルからのビーム砲がある。 間一髪で避けたところに、ボギーワンからのミネルバに向けた第3波が向かい、ミネルバの動きを封じる。 「ああ、もう!忙しいわね!!」 「!」 レイが出てくることが出来たらしい。まあ、止まっているのだから歩いてでも出てこられる。 「あのMAお願いできる?」 「わかった」 はミネルバに迫るMSに向かっていった。 ミネルバに張り付こうとするMSの頭部や回路が集中している箇所を破壊して沈黙させる。 「!」 艦長からの通信だ。 「右舷のスラスターはどれだけ生きているんです?」 が問うと、 「今アスランから同じ事を聞かれたわ。6機生きてる。同時に右舷にある砲を一斉射撃してこの小惑星から離脱することになりました。、援護を。また向こうからのミサイルが向かってくると思うから。落とせるわね?」 と返す。 「...了解しました。MAはレイが足止めしてくれるのでこちらに向かってくるのは増援がなければ母艦からのミサイルだけと思われます。その作戦でお願いします。この場からミネルバの離脱を確認したら私はそのままボギーワンに向かいます。母艦に損害が出たら向こうも引いてくれると思うので。ミネルバはそれで大丈夫ですか」 護衛が居なくなる。 今の状態で随分と満身創痍な状態のミネルバだ。艦の砲門はいくつも潰れているはずである。 「離脱と同時にタンホイザーでボギーワンを狙うわ。はシンたちの方に行って。だいぶ苦戦しているみたいなの」 艦長の返事を聞いてはミネルバに背を向ける。ボギーワンがこちらに進路を取ったようだ。 「了解しました。...いつでもどうぞ」 の言葉で艦長はクルーに指示を出す。 「。破壊した岩石が飛んでいくから、気をつけて」 「了解。ノルンなら大丈夫です」 すぐに大きな爆発が起こる。 言われたとおり、大小様々な岩石が迫ってくるが、それを避けつつシンたちのいる戦域に向かう。 が、すぐにボギーワンから帰艦信号が出た。 強奪された機体が戦域を離脱して母艦へと帰っていく。 「シン、ルナマリア。こっちも帰るよ」 通信を送ると「今更出てくるなよ」とシンが文句を垂れる。 「そっちこそ、早く帰ってきなさいよ」 が返すとまたしても何だか悪態をついている。 は周囲を見渡した。 こういう地形での戦闘なら、とても得意だったのに。 苦戦していたという2人の機体を見ながらそっと溜息を吐いた。 |
桜風
08.12.29
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