Like a fairy tale 17





アスランは一応、議長に多少は艦内を自由に歩けるように許可を受けている。

少し眠れなくて部屋を後にした。

食堂の前を通りかかって思わず足を止めた。

廊下から中を見れば、全く手をつけていないトレイが置いてあった。

彼はそれを見た瞬間に彼女のことが頭に浮かび、トレイを持ってドックへと向かった。


コンコンとコックピットを外側からノックする。

ハッチを開けたが顔を出した。

「あら、いいの?民間人のあなたが、艦内を自由に歩き回って。しかも此処は兵器のある場所でしょ」

からかうようにが言う。

「まあ、一応。議長から許可はもらっているから。それより、これってのじゃないか」

そう言って差し出したトレイを見ては笑う。

「まさしく、きっと私の。あーあ、これ見たらおなか減っちゃったじゃない」

「じゃあ、待っててやるから今食べろよ。...相変わらずだな。というか、クルーは誰も気づいていないのか。パイロットとか」

「まあ、こんなずっとMSの調整に時間を割いているなんて思わないでしょう、普通は」

「そうだな」と頷きながらアスランは思い出していた。

以前、ノルンを拾って帰ったそのときのは寝食を削ってノルンにかかりきりになっていた。

イザークはそれが面白くないのと、のことが心配なのとでいつも以上にイライラしていた。

アスランは思わず小さく笑う。

「何、どうしたの?思い出し笑いをする人ってエッチな証拠らしいわよ」

の言葉に目を丸くして「何の根拠があって...」と苦笑する。

「変わらないな」

安心したようにアスランが呟いた。

「あら、綺麗になったなとか言えないの?」

のからかいに「はいはい。綺麗になったな」とアスランは適当に返す。

「アスランは、大人になったねぇ。あ、アレックス・ディノって呼んだほうが良いんだっけ?」

は笑いながらドリンクに手を伸ばした。

「いいよ、今は。さっき聞きそびれたけどイザークは、元気か。ああ、式には出られなくてすまない。今更だけど、おめでとう」

イザークとの挙式の招待状は、一応アスランにも送っていた。彼も同期だし、何よりイザークとの隊長を務めた人物でもあるのだから。

だが、アスランは出席できなかった。

「ま、しょうがないよ。気にしないで。あそこでのこのこ出てきたらイザークが意味もなく怒鳴ったんじゃないの?」

が楽しそうに笑う。

何となくその様子が想像できたアスランは肩を竦めた。

「しかし、イザークがよく許したな。の復隊なんて」

アスランの言葉には困ったように笑う。

「実はさ。今度家に帰ったら判をついた離婚届けが置いてあってもおかしくない状況といいますか...」

の言葉にアスランは目を丸くして「はあ?!」と返す。

「喧嘩別れの末の家出なんだよね、私」

「どうして...!?」

「イザークが、復隊したらダメだって言うから。言い合いしていても埒が明かないって思って。説得諦めて、家出したの」

「いや、だから。何では復隊をしたんだ?そんな、イザークと喧嘩をしてまで」

は困ったように笑って言葉を捜す。

「私にしか、出来ないことがあるからね」

「イザークには言ったのか?」

「言えないよ。何いっても『ダメだ!』って返ってくるに決まってたもん」

「...ちゃんと、言葉を交わせる距離に居るのだから。話をしたらいいだろう。お互いが納得するまで」

呆れたようにアスランが諭す。

「ま、今度ゆっくり話が出来る機会があったらそうするわ」

全くそうするつもりはない。が、とりあえず、そう応えておこうとは適当に返した。


「そういえば」とアスランが呟く。

すべて食べ終わったがボトルに手を伸ばしながらアスランの顔を見て続きを促した。

「さっきは、ありがとう。ずっとお礼を言いそびれていたよ」

『さっき』が何を指しているのか暫く考えては首を捻った。思い出せない。

「アーモリーワンで」とアスランが言い、は頷いた。

「けど、全然何もしていないでしょ、私。というか、ここを勧めちゃったからあなた達もこんな戦闘の真っ只中っていう状況でしょう?」

「それは、仕方ないよ」

アスランは困ったように笑った。

「話が変わって申し訳ないけど。アスハ代表。彼女はもう少し考えて口を開くようにしないと。いつか彼女の言葉で足元を掬われかねないわよ、あの国」

アスランは困ったように息を吐いた。

「分かっていると思うんだ、彼女だって」

「分かっていても、出来なければ意味はないでしょう。彼女はただの18歳の女の子とは違うんだから」

アスランは「ああ」と頷いた。

「シン、って言ったよな?」

「うん。シン・アスカ。まっすぐ過ぎる子ね。下手をすればポッキリ折れちゃう。そうなる前にしなやかさを身に着けたらいいと思うんだけど。それって誰かに教えてもらってすんなり身に着くものでもないしね。...彼、アスランと似てるわ」

突然そういわれて目を丸くした。

「オレと...?」

「似てない?」

「と、思うんだけど。分からないな」

そう言ってアスランはの完食したトレイを手にとって立ち上がった。

「じゃあ、オレは戻る。これは食堂に返しておくから」

「ありがとう」

はそう声をかけて再びノルンのコックピットへと戻っていった。









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桜風
09.12.29


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