Like a fairy tale 18





レストルームに向かうとメイリンの必死そうな声がもれて聞こえる。

何をそんなに熱く、と思いながらレストルームに入った。

!大変なの!!」

を目にしたメイリンが駆け寄ってくる。

「そうみたいね」と静かに答えた

「何でそんなに冷静なんだ?これって意外と重要じゃないの?」

ヴィーノが聞いた。

「詳しい状況を知らないから、この反応よ」

が簡潔に応える。

「じゃあ、聞いて」とルナマリアが先ほど興奮状態で妹が説明していた内容をに話す。

さすがのも一瞬思考が停止した。

「じゃあ、砕くしかないわね。小さくして大気圏突入時に壊れるくらい小さく。あの質量を元の軌道に戻すなんて事、どうやっても無理でしょう」

は静かに答えた。

が、自分が思った以上に動揺していることに気づいて苦笑する。

コールドのドリンクを買おうと思ったのに、今、自分が取り出したのは思い切りホットでしかも“おしるこ”というやつだ。

絶対に需要がないだろうと思っていたものを自分が購入してしまった。

「本部から何か命令は来ていないの?今この艦は比較的ユニウスセブンに近いでしょう?」

の問いにメイリンは力なく首を横に振るだけだ。

「砕くって言ったって。そんな簡単に出来ることじゃないでしょう?」

呆れたように、どこか他人事のようにルナマリアが言い放った。

「それに、あそこにはまだ死んだ人たちの遺体もたくさん...」

とメイリンが言う。

確かに、あそこには遺体がそのままになっている。

「だが、衝突すれば地球は壊滅する。そうなれば何も残らないぞ。そこに生きる者たちも」

レイが静かに言葉を紡ぐ。

「地球、滅亡..か」

誰かが呟いた。

「そんな!」と声をあげたのはメイリンだ。

「でも、ま。しょうがないっちゃしょうがない、か。不可抗力だろう。けど、変なごたごたも綺麗になくなって、案外楽かも。オレたちプラントには」

ヨウランが言う。

はその発言を耳にして自然と視線の温度がなくなる。

「カガリ!」という声が聞こえて振り返る。

ああ、もう。本当にタイミングが悪いんだからとは溜息を吐いた。

「よくそんなことがいえるな!お前たちは!!」

怒鳴り込んできたカガリの声に、ヨウランが驚いて肩をすくめる。

感情に任せてカガリが怒鳴る。

「やはりそういう考えなのか。お前たちザフトは!」

その言葉にアスランは焦り、カガリをたしなめるように名前を呼ぶ。

「あれだけの戦争をして。あれだけの思いをして。やっとデュランダル議長の執政の下で変わったんじゃなかったのか!」

「よせよ、カガリ」とアスランが彼女の腕を掴んで止める。

まだ収まらないのか彼女はアスランを睨んだ。

「別に、本気で言っていたわけじゃないさ。ヨウランも」

声を上げたのはシンだった。

「シン」とが咎める。

「それくらいのこともわかんなかったのかよ、あんたは」

が止めるのを聞かずにシンは続ける。

「シン、やめなさい。口の利き方には気をつけなさい」

がシンの前に立つ。

カガリは掴みかからん勢いだ。アスランが腕を掴んでいなかったら確実に殴り合いの喧嘩が始まる。

「ああ、そうでした。偉いんでしたねこの人は。オーブの代表でしたもんね」

挑発するようなシンの言葉に、見事に挑発されたカガリがアスランの腕を振り解かんとする。

が、「いい加減にしろ、カガリ」と少し強い口調でアスランが止めた。

「君は、オーブがだいぶ嫌いのようだが。何故なんだ。昔はオーブにいたと聞いたが。くだらない理由で関係のない代表にまで突っかかるというのなら、ただではおかないぞ」

今度はアスランが挑発するように言った。

これは、止めるべきかどうか悩むところだ。

はアスランに視線を向けた。どうしてくれよう、と。

アスランもの視線には気づいていたが、それに応える気はない。

「くだらない?くだらないなんて言わせるか!関係ないってのも大間違いだね。オレの家族は、アスハに殺されたんだ!」

その言葉に、シンの瞳にアスランが怯む。


は慌ててシンの傍についた。

シンが何か事を起こせば止められるように。

「国を信じて。あんたたちの理想とかってのを信じて。そして最後の最後にオノゴロで殺された!だから、オレはあんたたちを信じない。オーブなんて国も信じない!そんなあんたたちの言う綺麗ごとを信じない!!この国の正義を貫くって...あんたたちだってあの時、自分たちのその言葉で誰が死ぬことになるのかちゃんと考えたのかよ!!」

シンの言葉にカガリは表情と言葉を失う。

「何も分かっていないようなやつが、分かったようなことを言わないでほしいね」

そう言ってシンはカガリに肩をぶつけてレストルームを後にした。

ヴィーノが慌ててシンを追いかけていく。

「でも、ザフトはあなたの家族をを見殺しにしたのよ」

小さく、は呟いた。

近海で傍観していたのは自分たちだ。彼はそれを知ってか知らずか、今はザフトに籍をおいている。

真正面から憎しみの感情を受けてしまったカガリを労わるようにアスランが彼女に退出を促した。

カガリだってその理想の下に唯一の家族だった父親を亡くしているし、その後の戦闘で仲間を何人も失っている。



「ヨウラン、あなたも不謹慎な発言をするのはもっと平和なときにしなさい。笑えないことはなるべく言わないことね」

が冷たい視線を向けた。

大抵のことに興味なさそうにしているが怒っている。ごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。

「もし、プラントにどうしようもない質量の隕石か何かが突っ込んで来るかもしれない状況で。それを地球側が『ま、しょうがない。ごたごたも綺麗になくなってラッキー』とか言ってもあなたはそれで平気?」

はそう言ってヨウランに先ほど購入してしまったおしるこを渡した。

そして、そのままレストルームを後にする。

おしるこを手渡されたヨウランは呆然との背中を見送った。









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桜風
09.1.5


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