Like a fairy tale 22





メテオブレイカーを設置するディアッカを手伝っていたが舌打ちをした。

「そろそろ限界高度よ」

通信を受けてイザークたちも計器を確認する。

「またMS単独降下でもしますか?」

が言うと

「あれ、もうパス」とディアッカが情けない声を返す。

2年前の戦争時に、ディアッカはイザークと共に地球の重力に捕まってしまい、MSで降下せざるを得ない状況に陥った。

そして、はイザークたちが心配だから、と自らMSで共に降下する道を選んだ。

今回また、その選択に直面しているということになる。

後方で帰艦信号が上がる。

ボギーワンのものだ。カオス、アビス、ガイアはその信号を受けて帰艦する。

こちらはどうするのだろう、とは思った。

半分になったとはいえ、これほどの質量のものが地球に落ちればやはり被害は甚大だ。壊滅とまでは行かないまでも、やはり三分の一くらいは海に飲まれて流されかねないだろう。


「ジュール隊長、指示を出さないと」

に促された。

何かを言おうとしてイザークは通信回線を開く。ボルテールへの指示を出し、そこから各機へ指示が伝えられた。

ミネルバから帰艦信号が出る。

「チッ!限界高度か!!」

まだ設置しきれていないメテオブレイカーを手にしてディアッカが毒づいた。

その間、イザークの元に届いた通信にはミネルバが艦主砲を撃ちながら共に降下する旨を伝えられる。

!」

「何?...ああ、なるほど」

の元にもその内容が通達された。

「ディアッカ、それ貸して」

そう言ってディアッカの機体が持つメテオブレイカーを受け取った。

貸して、と言われたから思わず渡したが、ディアッカは今更に慌てる。

「ちょっと待て。それ、何に使う気だ!!」

はモニタに映るイザークの表情を見ないようにしてミネルバに通信を送った。

それは、破砕作業を続けるというものだった。

ミネルバからは帰艦するように命じられたが、ノルンは一度地球に単独降下したこともあるし、勿論自分はそのときパイロットで経験をしている。だから、メテオブレイカーを設置させてほしい。勿論、ミネルバは艦主砲は撃ちながら降下してほしい。それは避けるから、と。

、まさか...!」

「色んな経験はしておくものね」

そう言って微笑むにイザークは呆然とした。

「艦主砲が向けられるんだぞ!」

「ノルンだもの。大丈夫。ミネルバにも、今そう伝えたし」

「ふざけるな!」

「ふざけてないよ、イザーク。...私に出来ることを、私がするの。可笑しなことは何もないわ」

そう言ってが静かに微笑む。

段々通信時の映像が不鮮明になっている。

イザークは奥歯をかみ締めた。あの時と同じではないか。ヤキン防衛戦のときと、同じだ。

彼女はそれだけの力があるからと言って最前線に出た。あの時は、混戦だったからイザークも最前線に向かったが、今回はそうも行かない。

あの時とは置かれている状況が全く違う。

「必ず帰って来いよ」

静かに、力強く言う。もうモニタにはの映像は映らない。

「う..イザ......で。..ご...ん」

音声も届かない。

「愛してる。だから、必ず...」

イザークは届かない声をノルンに向けた。

そして、ミネルバに敬礼を向けながらユニウスセブンから離脱していった。



ボルテールに帰投すると議長が待っていた。

ユニウスセブンからの離脱中にボルテールからその連絡を受けていたため、イザークは驚くこともなく対応している。

「すまないね、手間を掛けさせる」

「いえ」とイザークは短く応えた。

「ミネルバのことも...」

と言われてイザークは一度目を伏せたがすぐに顔を上げた。

「いいえ。グラディス艦長の選択は正しいと思います。私も同じ立場でしたら同じ事をしていたでしょうす。あれをそのまま地球に落とすわけにはいきません」

「それもあるが、」と議長が何かを続けようとしたがイザークがそれを制するように

「それに、あの艦にはシルバーレイが居ます。彼女が居れば、大抵の局面も何とかなります」

と続けた。

「ああ、本当に彼女が復隊してくれるという話を聞いたときには驚いたよ。結婚もしていたし、子供も授かっていると聞いたからね。ご息女から両親を奪う形になったのは本当に心苦しいと、思っているのだけれどね」

そう言って議長が頭を下げた。

「いいえ。彼女が選んだ道です。私が何を言っても聞きませんので、仕方ありません。そして、これは私の選んだ道です」

そう会話をしてイザークは隊長室へと向かった。


自室に戻ると上着をベッドに投げた。

ギシリと音を立てて椅子が軋む。

デスクに肘をつけて腕を組み、それに額をつけて深く息を吐く。

部屋のブザーが鳴り「オレだけど」という声がした。ドアを開けるとディアッカが入ってくる。

「大丈夫か?」

気だるそうにイザークは視線を向けた。

「ああ、大丈夫だ」

あまり大丈夫そうではないイザークの表情にディアッカは何と声を掛けて良いかわからない。

「大丈夫だ」

ディアッカのその表情に苦笑を浮かべてイザークがもう一度繰り返す。

「帰ってきたらたっぷり説教をしてやるつもりだ。今のうちから色々と考えておかないとな」

イザークのその言葉と無理に浮かべた笑顔にディアッカは言葉を失ったが、

「少しくらい、手加減してやれよ」

と何とか、いつもどおりの言葉を返せた。

「自業自得だ」

イザークはそう応え、デスクに飾っている家族の写真に目を向けた。それは、今では信じられないくらい穏やかな時を感じさせる。

天気が良いから遠出をしよう、とが突然に言い出した。せっかくの休みだったのだが、だからこそ出かけようとイザークも頷いた。そして、そこで写真を撮ったのだ。

イザークは手を伸ばし、幸せそうに微笑むと、平和そうに眠っている娘のノルンをそっと撫ぜた。









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桜風
09.1.19


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