Like a fairy tale 13





ギシ、とカインは椅子の背に体重を掛けて深く座る。

「私はあの子に戦闘術しか教えられなかった。だから、色々苦労しているところはあると思う。しかしね、何処に出しても恥ずかしくないとも思っている。確かに、母親が居ない事で足りない部分もあると思う。
だが、礼節はしっかり叩き込んでいる。礼儀を弁えることができる人間に、何か恥ずかしいことはあるかい?」

イザークは静かに首を振る。

カインはそれを見て満足そうに微笑んだ。

「親馬鹿だろう?」

カインの言葉にイザークは目を丸くし、やがて微笑む。

「愛されている証拠です」

イザークの言葉に、カインは満足そうに微笑んだ。



それからアカデミーの話をしていると書斎のドアがノックされる。

「どうした、

父の返事があり、ドアを開ける。

「ゲストルームのベッド、整えたから。あと、お父様におやすみなさいを言いに」

そう言うがとても意外でイザークはきょとんとした。

が、

「俺には言ってくれないのか?」

とからかってみる。

は一瞬面食らったような表情を見せたが

「オヤスミナサイ!」

と全く感情を込めてない言葉を返してくる。

」と父が窘めるがはプイ、とそっぽを向く。

イザークは苦笑を漏らした。

「では。申し訳ありませんが、私も休ませていただきます」

そう言って立ち上がる。

「ああ、すまないね。つまらない話に付き合ってもらって」

とカインは言葉を返した。

イザークは一礼をして書斎を後にする。


「お父様と何を話していたの?」

イザークをゲストルームに案内しながらが聞く。

案内と言っても書斎の隣の隣がゲストルームとして使っている部屋だ。

「まあ、色々とな」

自分とは出会う前から婚約が決まっていたらしい。この家の中だけでの話らしいが。

そう思うとなんだか感慨深い。

少し思い出してイザークが笑うとは口を尖らせて拗ねる。

その表情を見てまたしてもイザークは苦笑をする。

「まあ、がどれだけカイン殿に愛されているかが分かったよ」

イザークの言葉には首を傾げた。

「まあ、そう言う感じの話をしたってことだ。改めて思ったけど、カイン殿は素晴らしい方だな。人としても父親としても」

イザークがそう纏めるとは瞳を輝かせて頷く。

「私ね、小さい頃お父様に高らかに宣言したことがあるんだって」

興味を示したイザークが続きを促すと

「私、小さい頃はお父様と結婚すると言って聞かなかったんだって。それで、お父様にはお母様以外とは結婚できないって断られたの。だから、私はお父様みたいな人としか結婚しないって宣言したらしいの」

「ほう?」とイザークが反応する。

は優しい表情を浮かべて昔を思い出しているようだ。

「でね、この先結婚するときも自分で決めるってお父様に宣言したみたい。お父様みたいに優しくて、強い人が良いって。もの凄く小さかったのに」

「それは、申し訳ないな」

イザークのその言葉には驚いて顔を上げた。

別に怒った風でもない口調だが、何だか気になった。

「勝手に親に婚約者だと決められて、さぞかし落胆しだだろう」

からかうような口調でそう言われた。

は何かを言おうとして口を開いたが、それよりも先にイザークが次の言葉を重ねる。

「まあ、一応。カイン殿のようになれるように心掛けてはみるから、少し我慢してくれ。しかし、ライバルがカイン殿か...これは強敵だな」

楽しそうにそう言ってドアノブに手を掛ける。

「じゃあ、な。おやすみ」

の頬に唇を寄せた。

は目を見開いて固まったままそれを受け止める。

顔が離れたイザークはの表情を見て本日何回目かの苦笑をもらしてもう一度「おやすみ」と声を掛てドアを閉めた。


ばたりと閉まったドアの前では立ち尽くし、やがてぷぅ、と頬を膨らませた。

そういう意味ではない。そうではないのだ。

はドアの睨みながら小さく呟く。

「ばか...」








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桜風
08.1.1


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